測定工具の基礎講座

ものづくりの現場において欠かせない存在、「測定工具」。
測定工具にはさまざまな種類があり、それぞれに特徴があります。
本連載では、各測定工具の使い方や寸法の読み取り方に関して、実際の写真や図を通してご紹介していきます。
第6章 水準器

6-2 精密水準器の校正

精密水準器はちょっとした振動や温度変化によって気泡管を支える部分がわずかにずれることから、どうしても誤差が出ます。従って、使う直前に水平を正しく表示するように調整する必要があります。これを「校正」と言います。

精密水準器をよく見てください。写真1のように、必ず「校正」用の調整ネジが付いているはずです。この写真では右側にありますね。

写真1 精密水準器

写真1 精密水準器

水準器を校正するときは定盤を使います。しかし、実際に使いたい場所に水平の基準面として使える定盤があるとは限りません。従って、ここでは水平が出ているかどうか不明な面を用いて水準器の校正を行う手順を紹介します。少々面倒ですが、これを知っておくと水準器の活用範囲が広がります。

(1)校正作業の準備

精密級の水準器には必ず補正用のネジが付いているので、そのネジを回すことのできるレンチやスパナを準備します。

(2)校正用ネジの効果を確認する

校正用ネジをレンチでどれだけ回したら気泡がどれだけ動くかを確認します。1目盛り動かすためにネジをどれぐらいしたらよいかを確認します。

(3)水平線を確保する

どんな面でも、平面であれば必ず水平になる線があります。山の斜面に立って、山を背にして谷を見て立つと、両手を広げた方向が水平線となりますね。同じことです。図2のように、傾斜している面に水準器を置き、水準器の泡が中心に来るような置き位置(角度)を探しましょう。

図2 水平線の確保

図2 水平線の確保

(4)水準器を180°回してみる

水平線が見つかったら水準器を180°回転して泡の位置を見ます。泡が中央に来ていればこの水準器は正しく水平を指示しているので、これを2~3回繰り返して同じなら調整する必要はありません。これで校正完了です。

(5)180°回して泡の位置が違うとき・・・正しい水平線を探す

180°回して泡の位置が違う時はその水準器は狂っているので、最初に見つけた水平線も少しずれています。180°回して、水準器の泡が中央ではなく「同じ位置」で止まるときの線が正しい水平線です。まずこの正しい水平線を探しましょう。

(6)調整ネジを回して泡が中央に来るようにする

正しい水平線が見つかれば校正作業はあと一歩です。泡が中央に来るように調整ネジを回します。(2)で調整ネジの効果を確認していますよね。調整ネジをどちらにどれだけ回せばよいか分かるはずです。

このネジの調整、実は非常にクリティカルです。ほんの僅かに動かしただけで泡が大きく動いてしまいます。泡が中央に来たら水準器を180°回転して同じように泡が中央に来ているかを確認します。感度の高い水準器はとても微妙なので、辛抱強く調整してください。

執筆:株式会社日本中性子光学 河合 利秀

『測定工具の基礎講座』の目次

第1章 ノギス

第2章 マイクロメータ

第3章 ダイヤルゲージ

第4章 定盤

第5章 ブロックゲージ

第6章 水準器

第7章 基準器

第8章 トルクなどの力を測る

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