治具・取付具の正しい使い方

ものづくりのあらゆる場面ででてくる道具の一つである「治具(JIG)」についての基礎知識と、実際に使われている治具やそれに類する道具の基礎知識から、実際の加工場面における治具の使い方まで、図や写真を通してご紹介していきます。
第2章 タップ加工における治工具

2-1 タップ加工とは

この章では、工作物に雌ネジを切るタップ加工を実例として治具を考えていきます。

最初にタップ作業を行う時にどのような注意が必要かを考え、次に実際の加工で実現したいことが工具の治具としての要素としてちゃんと実現されているかを丁寧に見ていきたいと思います。

タップ作業は治具を考えるうえで分かりやすい課題であることから例題としてとりあげましたが、多くの作業が自動化された中でタップ作業は最も自動化が進んでいません。その理由もこの章を見るとわかってもらえると思います。

 

1.タップ加工とは

タップとは「雌ネジを切る工具」です。写真1を見てください。これは切削加工によって雌ネジを成型する切りタップで、3本で一組になっているものをハンドタップと言います。大量生産の工場では専用の工作機械で加工しますが、一品加工やロット数が少ない場合、機械加工しにくい時にはハンドタップを使います。

写真1

このハンドタップで雌ネジを切る工程を追ってみましょう。

雌ネジを切りたい位置には写真2のように、あらかじめボール盤などで下穴をあけておきます。下穴は加工物の面に垂直にあけます。下穴の大きさは、加工するネジの規格によって異なりますが、概ね呼び径-ピッチです。

写真2

呼び径:D(mm)

下穴直径:d(mm)

ピッチ:P(mm) ※ピッチとはネジの螺旋溝の山と山、あるいは谷と谷の距離

例えば、

M3(ISO規格)のネジならばD=3.0(mm)、ピッチはP=0.5(mm)なので、d=3.0-0.5=2.5(mm)

M8(ISO)ならば、D=8.0(mm)、P=1.25(mm)なので、d=8.0-1.25=6.75(mm)

M3なら下穴は2.5mm、M8は市販のドリルに6.75mmが無いのでφ6.8mmとなります。(ただし、この下穴は切りタップの場合です。塑性変形を使って雌ネジを成型するロールタップの下穴は違うのでご注意ください。)

次に、写真3のように、下穴にタップの先端を垂直に立て、四角のシャンク部分にタップハンドルを付けて時計方向に回転させると、タップの先端が工作物にあけた下穴に添ってネジ溝を形成しながら切り進みます。作業者は、目的の深さまでネジが形成されたらタップを反時計回りに回転させてタップを抜き取ればネジ加工修了。雌ネジが形成されます。

写真3

このタップ加工で最も重要なことはタップの先端を垂直に立てることです。もしタップが傾いていると雌ネジが傾いて形成され、色々な不都合が生じるだけでなく、途中でタップが折れてしまう大失敗となることもあります。

 

執筆: 株式会社日本中性子光学 河合 利秀

『治具・取付具の正しい使い方』の目次

第1章 治具の基礎知識

第2章 タップ加工における治工具

第3章 穴加工における治工具

第4章 旋盤加工における治工具

第5章 フライス盤加工における治工具

第6章 マシン(ミーリング)バイス

第7章 クランプシステムとは

第8章 フライス加工を助ける補助的な治工具

目次をもっと見る

『機構部品』に関連するカテゴリ

『金型用部品、位置決め部品』に関連するカテゴリ