マシニングセンタの基礎講座

モノタロウの本連載では、マシニングセンタの種類や仕組み、使い方について、実践的で役立つ知識をご紹介していきます。
第6章 マシニングセンタを使用する際の基礎知識

6-3 潤滑油の種類と性能

マシニングセンタは電源を入れると、ボールねじや各部(テーブル、サドル、コラム、主軸頭)の摺動面(すべり面)に自動で潤滑油が供給される仕組みになっています。このため、マシニングセンタを見渡すと何処かに潤滑油タンクがあります。潤滑油タンク内の潤滑油はマシニングセンタの電源投入中、常に摺動面やボールねじなど潤滑油が必要な箇所に適量供給されるため、残量が減っている場合には供給する必要があります。潤滑油タンク内の潤滑油が減り、各部に供給されなくなると、焼き付きなどのトラブルが発生することになりますが、潤滑油タンク内の潤滑油の量が減り過ぎている際にはアラームが点灯し、一時的にマシニングセンタが使用できなくなります。使用前後や1日1回は潤滑油の残量を確認するのがよいでしょう。加工中に潤滑油の残量が少なくなると加工が中断されることもあります。休日や夜間に自動運転を行う際には、長時間運転が行えるよう潤滑油の残量を確認しておくことが大切です。

工業用潤滑油の働き(イメージ)

工業用潤滑油の働き

 

潤滑油は主として動粘度によって分類され、粘度区分は国際規格ISOで規定されています。動粘度は粘度を密度で割った値で、流体そのものの動きにくさを表すものです。同じ粘度でも密度が異なると動きにくさは変わります。ISOではVG(Viscosity Gradeの略)という表記を使用し、VGに続く数値によって動粘度を分類しています。日本国内ではVGの代わりに#で表記されることもあります。VGに続く数値が小さいほど動粘度が低くなり(サラサラ)、一方、数値が高いほど粘度が高くなります(ドロドロ)。動粘度は温度によって変化するため40℃における値を示しています。

潤滑油の購入はマシニングセンタ(工作機械)を使用するために継続的に必要な費用の一つですので、安く抑えたいと思うのが普通です。そして、少しでも安価に抑えるためにドラム缶で大量購入することもできますが、一度蓋をあけて長期間保管すると、潤滑油が酸化して性能が劣化します。このため、多少割高でも18L缶など一定の期間で使い切る量を購入するのがよいでしょう。マシニングセンタ(NC工作機械)が高速運動するようになり、一層潤滑油の役割も大きくなっています。

潤滑油は注ぎ足しで補充しますが、この際、切りくずや塵、ゴミなどがタンクに入らないよう十分に注意することが大切です。

工業用潤滑油ISO粘度区分

ISO粘度
グレード番号
動粘度 cSt
(40℃)
ISO VG 2 2.2
ISO VG 3 3.2
ISO VG 5 4.6
ISO VG 7 6.8
ISO VG 10 10.0
ISO VG 12 15.0
ISO VG 22 22.0
ISO VG 32 32.0
ISO VG 46 46.0
ISO VG 68 68.0
ISO VG 100 100
ISO VG 150 150
ISO VG 220 220
ISO VG 320 320
ISO VG 460 460
ISO VG 680 680
ISO VG 1000 1000
ISO VG 1500 1500
ISO VG 2200 2200
ISO VG 3200 3200

 

執筆: 芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 澤 武一 教授

『マシニングセンタの基礎講座』の目次

第1章 マシニングセンタの基礎知識

第2章 マシニングセンタの装備

第3章 マシニングセンタを動かすソフトウエア

第4章 マシニングセンタの要素技術

第5章 マシニングセンタの特性と関連知識

第6章 マシニングセンタを使用する際の基礎知識

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