快適空間へ導くLED照明実践講座
2-4 スポットライトの配光と照射位置
性能が向上しているLEDスポットライト
LEDスポットライトは従来光源である白熱電球用スポットライトに比べ様々な利点があり、性能が向上しています。もちろんメーカや商品によって性能のばらつきはありますが、そのおもな特長を以下に紹介します。
1.少ない電力で明るい
LEDスポットライトには投光照明用LED電球を使用する器具(以下、交換型)かLEDモジュールと器具が一体になったLED一体型(以下、一体型)があります。
交換型はおもに白熱灯の50W~150Wの代替になり、5~15Wくらいの投光用LED電球が多く使われ、ランプ自体に電源装置が付いているので、器具の口金が適合すれば点灯します。(写真1)
一体型はさらに電源装置別置型と内蔵型に分類されます。それぞれ一長一短があるため用途に応じて使い分けられます。一体型は交換型に比べパワーがあり、一般にメタルハライドランプ用スポットライトの30W~70Wの代替に使われ、同じようなスポットライト効果であればLED15~55Wくらいで可能にします。
写真1 左:ランプ交換型
右:電源ユニット内蔵の一体型(パナソニック)
2.配光や光色変換が容易
スポットライトの先端にレンズやフィルタ、ルーバなどオプションの付けられる器具があります。これらは器具の設置後に光の広がりや色温度などを変えたい場合に有効です。このようなオプション付き器具は白熱灯スポットライトにもありましたが、LEDは光自体に熱はほとんどないため(LEDの電源部は高熱になる)、光が多く当たるレンズ部を薄くすることができ、光の透過率を高めます。以下はおもなレンズの種類です。
フラッドレンズ
スポットライトの光のピークを和らげ、スポット光内を平均的な明るさに変えます。例えば絵画を照明しても絵の中心にピンポイントな明るさが生じる場合、このレンズによって絵画全般を均等な明るさにさせます。
スプレッドレンズ
スポットライトの丸い光を楕円形に変換します。例えば掛け軸や横長のサインなどの照明に効果を発揮します。
写真2 左:レンズなし
右:スプレッドレンズ使用
拡散レンズ
広角のスポット光をさらに広げる効果があります。
以上の他にウォールウォッシャになるレンズや1台の器具で2つのスポット光が得られるレンズなどがあります。
またレンズ以外に色温度変換フィルタや直接グレアをカットするハニカムルーバなども使われます。
3.同一ライティングレール(配線ダクト)で個別調光
従来、調光は一回路あたり一括調光でした。例えば一本の配線ダクトに設置された複数灯のスポットライトの明るさを50%にしたい場合、レールと調光コントローラの間に調光器を接続することで、有線で一括50%調光するものです。しかし今日では通信技術の進歩によって無線制御モジュール(小型通信端末)が配線ダクトに設置されているスポットライト1台1台に付いていれば無線送受信機(ゲートウェイ)から無線でタブレットなどを使って個別に調光することができます。無線調光は何もスポットライトに限った話ではありませんが、店舗空間を中心に多用されつつあります。
無線通信による照明制御は各照明メーカによって方式が異なります。これは通信技術の進歩が急速なため、後続メーカはできるだけ最新技術を取り入れるからです。
図1 無線調光方式と調光例(タブレット兼ゲートウェイ)
4.ムービングスポット
高天井の展示空間や宴会場、レストランなどの空間は、イベントごとに展示やテーブルの配置換えが行われることがあります。その都度スポットライトの配光や照射角度を変えることは大掛かりな作業になり、時間や費用を要します。そこでフロアにいてそこからタブレットなどで器具一灯一灯を照射方向や配光をコントロールするシステムが開発されています。まだ限られたメーカのものですが高天井で照明の演出効果を高めたい場合に欠かせません。
以上のようにLEDスポットライトは省エネだけではなく、光の制御や操作性などの点で多機能化されています。そのためユーザ側はオーバースペックにならないよう、器具の特性を理解し,上手く使いこなせる感性が強く求められるようになっています。
『快適空間へ導くLED照明実践講座』の目次
第1章 ベースライトの選び方
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1-1シーリングライト(大型)の選び方と取り付け大型のシーリングライト器具は一灯で基準の明るさが得られ、給電口があれば電気工事の資格なしで器具の取り付け可能なことから、日本では住宅照明用として普及しています。
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1-2シーリングライト(小型)の選び方シーリングライトとは天井直付け器具のことを言います。
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1-3ダウンライト器具の選び方と配灯LEDダウンライトはLED電球用とLEDモジュール一体型があります。
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1-4壁付け器具の形状と取り付け壁付け器具は以前「照明のことが分かる講座」で紹介しましたが、今回は壁直付け(以下、ブラケットライト)の用途と取り付けにについて紹介します。
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1-5直管LEDベースライトの種類と使い方全般照明とは室内の主要部を一様な明るさにする照明で、それは集光する器具より光の拡散するベースライトによって実現されます。
第2章 スポットライトの選び方
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2-1卓上ライトの形状と照明効果卓上ライトを安定して取り付けるためにはおもに4つの方法があります。
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2-2フロアスタンドライト(意匠照明用スタンド器具)の選び方シーリングライトのLED化が一段落すると、LEDのスタンド器具を購入する人が日本でも増えています。
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2-3シャンデリアの形状と取り付け吊り下げ型器具には一灯用と多灯用があります。一般的には前者をペンダントライト、後者をシャンデリアと言われています。
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2-4スポットライトの配光と照射位置LEDスポットライトは従来光源である白熱電球用スポットライトに比べ様々な利点があり、性能が向上しています。
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2-5ライティングレールの種類2本の電線を配管の中に入れて通電させる装置をライティングレール (ライティングバー、ライティングダクト、配線ダクトなどと呼ばれる。以下、配線ダクト)と言います。
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2-6ライン型LEDモジュールの種類と用途LEDモジュール(module)とはLEDパッケージを基板に取り付け、点灯可能にした最小構成の商品です。
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2-7コーブ照明の効果とランプ位置コーブ照明は天井面を照らす建築化照明です。天井の隅や壁の高い位置にくぼみ(アゴや庇などとも言う)、を設け、その内部に連続した光源を隠して天井面を照明します。
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2-8コーニス照明の効果とランプ位置何故、壁面全体を明るくするのでしょうか?壁面は通常の生活視点で最も目に入りやすいため、その面をどう照らすかによって空間全体の雰囲気や印象に大きな影響を与えるからです。
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2-9ガーデンライト(庭園灯)の選び方と配置庭園とは草花や樹木、石、池などを計画的に配し、整えられた空間を言います。
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2-10投光器と演出効果LED投光器はLEDの光を柱状に集めて、特定の方向や場を効率よく照らす屋外用照明器具のことです。
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2-11キッチンライト(流し元灯)の種類と照明効果LEDの特長の一つに器具の小型化があります。小型である故、今まで器具の設置が難しかった小スペースや狭スペースに取り付けを可能にしています。