快適空間へ導くLED照明実践講座
1-4 壁付け器具の用途と取り付け
壁付け器具は以前「照明のことが分かる講座」で紹介しましたが、今回は壁直付け(以下、ブラケットライト)の用途と取り付けにについて紹介します。
ブラケットライトの用途
(1)外玄関照明とセンサ
電灯照明以前の壁直付け器具は壁から突き出た木の板や金属の取手の先端に灯油ランプや蝋燭を立てるものでした。しかし壁近くに裸火があるのは火災の危険性があるため、カンテラ(金属の角形フレームにガラスカバーをして、その中に油を灯した手提げ器具)を壁に付ける形が登場しています。その名残から光源としてLED電球が主流の今日でもカンテラ風ブラケットライトの人気は根強く、特に洋風住宅の玄関灯としての用途があります。
器具は玄関扉とのバランスを考える必要があり、さらに扉の開閉に邪魔にならない側に取り付けます。同様に和風住宅の玄関灯は乳白のアクリやガラスを使用した長方体や立方体、球形のシンプルなデザイン器具が多く選ばれています。(写真1)外玄関に使われる器具は防雨型になっていますが、雨の影響が少ない軒下での使用が主流です。
この種の器具はポーチライトとも呼ばれ、人が近づいたら点灯する人感センサ付き、あるいは夜が近づいて暗くなってから点灯する照度センサ付きなどの器種もあります。人感センサはセンサ部の調節で検知エリアを変えることが可能です。(図1) また照度センサは木陰や街路灯の光などで反応することもあるので注意が必要です。いずれにしても2つの併用であれば無駄なく電力が使えます。
写真1 和風の玄関照明例
図1 人感センサ設置との検知エリア例
( )内はエリアをカットするマスク使用時
(2)出入り口の照明
玄関照明同様、ブラケットライトは部屋の出入り口を示す光としてよく使われます。(写真2)
写真2 部屋の出入口照明例
(3)鏡の照明
鏡には鏡に映る人の顔をより美しく、そして健康的に見せるためにブラケットライトが欠かせません。そのため顔に不要な影が生じないよう、一般的には柔らかい光を放つブラケットライトが鏡の横、または上部に取り付けられます。(写真3)
大きめの器具1灯より小型器具を2~4灯取り付けるほうが顔の表情をより豊かに見せ、眩しさも緩和されて効果的です。
写真3 鏡の照明例
(4)枕元灯
灯部が自由に調整できるスポットライト型の壁付け灯があります。小型のものはホテルの客室や住宅のベッドルームで、枕元灯として就寝前の読書などに最適です。LED器具は本体があまり熱くなりにくいので操作しやすく、ベッドに付いた姿勢で手が届くところで、また自分の影が本の誌面に生じない位置に設置できると良いです。(写真4)
写真4 ベッドの読書灯の例
(5)ピクチャーライト
壁に絵を飾ることがしばしばあります。この場合、絵を美しく照明するためピクチャーライトと言われる壁直付け灯が選ばれ、額を含めた絵画との一体感が求められます。(写真5)
写真5 ピクチャーライト例
(取り付け高さが絵画面の照度に影響)
器具の取り付け
ブラケットライトの取り付けは直接配線のため電気工事士の資格が必要で、器種や設置条件によって壁面の補強やコードの納める埋め込みボックスのスペース確保が必要になります。器具は取り付け金具を壁に固定してから、そこに本体を取り付けるのが一般的です。
ブラケットライトの中には少数ではあるがコンセントから給電するタイプもあります。その場合は電気工事士の資格は必要ありませんが、器具を壁に固定するためにネジで壁に穴をあけなければならないため、例えば賃貸の部屋では、出るときに原状復帰できないネジ穴があると契約違反となったりすることもあります。
ブラケットライトは器具のデザインだけではなく、取り付け高さで照明効果が大きく変わり、また建具や他のインテリアエレメントとのバランスが悪くなったりします。(図2)そこで購入する際はカタログ等で器具の大きさや出幅などを事前に確認する必要があります。
また、どうしても器具がぶつかりそうな高さに設置したい場合は付近に人が通れないよう、その下に家具を置くなどの工夫が求められます。
図2 壁付け器具の配光と取り付け高さの目安
『快適空間へ導くLED照明実践講座』の目次
第1章 ベースライトの選び方
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1-1シーリングライト(大型)の選び方と取り付け大型のシーリングライト器具は一灯で基準の明るさが得られ、給電口があれば電気工事の資格なしで器具の取り付け可能なことから、日本では住宅照明用として普及しています。
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1-2シーリングライト(小型)の選び方シーリングライトとは天井直付け器具のことを言います。
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1-3ダウンライト器具の選び方と配灯LEDダウンライトはLED電球用とLEDモジュール一体型があります。
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1-4壁付け器具の形状と取り付け壁付け器具は以前「照明のことが分かる講座」で紹介しましたが、今回は壁直付け(以下、ブラケットライト)の用途と取り付けにについて紹介します。
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1-5直管LEDベースライトの種類と使い方全般照明とは室内の主要部を一様な明るさにする照明で、それは集光する器具より光の拡散するベースライトによって実現されます。
第2章 スポットライトの選び方
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2-1卓上ライトの形状と照明効果卓上ライトを安定して取り付けるためにはおもに4つの方法があります。
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2-2フロアスタンドライト(意匠照明用スタンド器具)の選び方シーリングライトのLED化が一段落すると、LEDのスタンド器具を購入する人が日本でも増えています。
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2-3シャンデリアの形状と取り付け吊り下げ型器具には一灯用と多灯用があります。一般的には前者をペンダントライト、後者をシャンデリアと言われています。
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2-4スポットライトの配光と照射位置LEDスポットライトは従来光源である白熱電球用スポットライトに比べ様々な利点があり、性能が向上しています。
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2-5ライティングレールの種類2本の電線を配管の中に入れて通電させる装置をライティングレール (ライティングバー、ライティングダクト、配線ダクトなどと呼ばれる。以下、配線ダクト)と言います。
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2-6ライン型LEDモジュールの種類と用途LEDモジュール(module)とはLEDパッケージを基板に取り付け、点灯可能にした最小構成の商品です。
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2-7コーブ照明の効果とランプ位置コーブ照明は天井面を照らす建築化照明です。天井の隅や壁の高い位置にくぼみ(アゴや庇などとも言う)、を設け、その内部に連続した光源を隠して天井面を照明します。
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2-8コーニス照明の効果とランプ位置何故、壁面全体を明るくするのでしょうか?壁面は通常の生活視点で最も目に入りやすいため、その面をどう照らすかによって空間全体の雰囲気や印象に大きな影響を与えるからです。
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2-9ガーデンライト(庭園灯)の選び方と配置庭園とは草花や樹木、石、池などを計画的に配し、整えられた空間を言います。
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2-10投光器と演出効果LED投光器はLEDの光を柱状に集めて、特定の方向や場を効率よく照らす屋外用照明器具のことです。
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2-11キッチンライト(流し元灯)の種類と照明効果LEDの特長の一つに器具の小型化があります。小型である故、今まで器具の設置が難しかった小スペースや狭スペースに取り付けを可能にしています。