快適空間へ導くLED照明実践講座
2-10 投光器の選び方とライトアップ
丸型器具と角形器具
LED投光器はLEDの光を柱状に集めて、特定の方向や場を効率よく照らす屋外用照明器具のことです。このような強い光は反射鏡やレンズによって作られますが、光学設計で得られた配光は局部的に集光するものに限らす、広域を照射する投光器もあります。
投光器の形状はおもに丸型と角形になります。丸形は一般的に鉛直面と水平面配光で左右対称型(軸対称配光)が多く、例えば壁に向かって真っすぐ照らすと丸い光になります。勿論ビームの開き方(ビーム角)で集光の度合いが異なります。
写真1は丸形LED投光器です。この器具は初期照度補正機能がついています。これはあかりセンサによる調光で自動補正し、過剰になりがちな初期の明るさを抑え、寿命末期でも基準の明るさが保たれる機能です。
丸型器具の中にはLED一体型と投光用LED電球の使えるランプ交換型があり、用途としては屋外のスポーツ施設、サインボードなどの照明以外に景観照明用としてビルの外壁、公園の樹木や噴水照明などに使われます。また屋内では天井高さのある工場の作業用照明としての用途もあります。
一方、角形器具(写真2)は管軸に対して垂直方向と平行方向で配光形状が異なる非対称配光になることが多く、光は二面対称配光と言い、壁に向かって真っすぐ照らすと矩形もしくは長楕円の光になります。写真3は丸形と角形の光のイメージです。最近は角形をさらに長くしたバー(ライン)形のLED器具がサインボードや外壁照明などに使われています。(写真4)
写真1 丸形LED投光器例
(初期照度補正機能付、調光可能型)
写真2 角形投光器例
写真3 丸形と角形投光器の光のイメージ
写真4 ライン型LEDによる外壁照明
景観照明は照度より輝度が大切
景観照明は夜の闇という黒いキャンバスに光で絵を描くイメージです。例えば投光器のビーム角が筆の太さであれば絵の具や墨の濃さが「明るさ」を表します。絵画は一種類の太い筆で仕上げるより、幾つかの種類を使い分けして描く方がより繊細に描けます。景観照明も同様で複雑な形状の対象を照らす場合、異なる配光や明るさの器具を使い分けて演出することが多いです。
明るさには照度と輝度があります。照度は最も分かりやすく、定量化しやすい要件です。しかし景観照明で重要なのは照度より輝度です。何故ならば、もし照明したい対象が黒っぽい仕上げであればいくら明るくしても夜空に浮かび上がることはありません。逆に対象が明るい白であれば、あまり明るく照らさなくても周囲に明るいものがなければ闇夜で際立つからです。
投光照明の「害と益」
光は平面的な絵と違って3次元です。つまり絵では表現できない「まぶしさ」や「光害」の問題を注視していく必要があるのです。「まぶしさ」を強く感じる照明は醜く、全ての視覚を抹殺します。逆に「まぶしさ」のない優れた景観照明は見る人に心地よさを与えるに違いありません。
「光害」は害になる不要な光のことです。その典型がライトアップ(光を上に向ける)で夜空を照らす照明です。夜空が明るくなること生体系に悪影響を与えます。例えば夜に移動する渡り鳥は星の光を頼りに方向を決めますが、ライトアップの光で方向感覚を失い、建物に激突したりすることが多々あります。また夜空が明るいことで天体観測が難しくなります。
ライトダウン(光を下に向ける)も問題になることがあります。投光器の光が田畑や海を照らせば農作物や魚の生体にも影響を与えます。このように空や海などを明るくする不要な光はエネルギーの無駄にもつながり、害があっても益はありません。
投光照明で重要なのは現場での光の調整作業(チューニングとかエイミングなどと言う)です。光の微調整が光害を低減させることもできます。また光軸が1,2度ずれただけでも対象が暗く見えて、効果が半減することもあるのです。
写真5は光の調整作業が上手くいっていない例です。空に抜ける光は少ないですがサインボード上部も暗くなっています。(出幅があればボード高さの2/3あたりを狙うと良い)
写真6はNYにあるロック・フェラー・センタービルです。外観の照明は20年ほど前のものですが、周囲のビルの屋上から投光照明は意図的に光ムラが生じるように調整されています。これは陰影のある外壁照明を光の滝に見立てています。
写真5 サインボードの照明例
写真6 ビルのライトアップ
『快適空間へ導くLED照明実践講座』の目次
第1章 ベースライトの選び方
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1-1シーリングライト(大型)の選び方と取り付け大型のシーリングライト器具は一灯で基準の明るさが得られ、給電口があれば電気工事の資格なしで器具の取り付け可能なことから、日本では住宅照明用として普及しています。
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1-2シーリングライト(小型)の選び方シーリングライトとは天井直付け器具のことを言います。
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1-3ダウンライト器具の選び方と配灯LEDダウンライトはLED電球用とLEDモジュール一体型があります。
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1-4壁付け器具の形状と取り付け壁付け器具は以前「照明のことが分かる講座」で紹介しましたが、今回は壁直付け(以下、ブラケットライト)の用途と取り付けにについて紹介します。
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1-5直管LEDベースライトの種類と使い方全般照明とは室内の主要部を一様な明るさにする照明で、それは集光する器具より光の拡散するベースライトによって実現されます。
第2章 スポットライトの選び方
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2-1卓上ライトの形状と照明効果卓上ライトを安定して取り付けるためにはおもに4つの方法があります。
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2-2フロアスタンドライト(意匠照明用スタンド器具)の選び方シーリングライトのLED化が一段落すると、LEDのスタンド器具を購入する人が日本でも増えています。
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2-3シャンデリアの形状と取り付け吊り下げ型器具には一灯用と多灯用があります。一般的には前者をペンダントライト、後者をシャンデリアと言われています。
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2-4スポットライトの配光と照射位置LEDスポットライトは従来光源である白熱電球用スポットライトに比べ様々な利点があり、性能が向上しています。
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2-5ライティングレールの種類2本の電線を配管の中に入れて通電させる装置をライティングレール (ライティングバー、ライティングダクト、配線ダクトなどと呼ばれる。以下、配線ダクト)と言います。
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2-6ライン型LEDモジュールの種類と用途LEDモジュール(module)とはLEDパッケージを基板に取り付け、点灯可能にした最小構成の商品です。
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2-7コーブ照明の効果とランプ位置コーブ照明は天井面を照らす建築化照明です。天井の隅や壁の高い位置にくぼみ(アゴや庇などとも言う)、を設け、その内部に連続した光源を隠して天井面を照明します。
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2-8コーニス照明の効果とランプ位置何故、壁面全体を明るくするのでしょうか?壁面は通常の生活視点で最も目に入りやすいため、その面をどう照らすかによって空間全体の雰囲気や印象に大きな影響を与えるからです。
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2-9ガーデンライト(庭園灯)の選び方と配置庭園とは草花や樹木、石、池などを計画的に配し、整えられた空間を言います。
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2-10投光器と演出効果LED投光器はLEDの光を柱状に集めて、特定の方向や場を効率よく照らす屋外用照明器具のことです。
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2-11キッチンライト(流し元灯)の種類と照明効果LEDの特長の一つに器具の小型化があります。小型である故、今まで器具の設置が難しかった小スペースや狭スペースに取り付けを可能にしています。