快適空間へ導くLED照明実践講座
2-7 コーブ照明の効果とランプ位置
コーブ照明の目的
コーブ照明は天井面を照らす建築化照明です。天井の隅や壁の高い位置にくぼみ(アゴや庇などとも言う)、を設け、その内部に連続した光源を隠して天井面を照明します。コーブとは壁と天井との接合部に形成されるアーチ状の成形品のことですが、一般にはその部分がアーチになっていなくても上記のような照明をコーブ照明と呼んでいます。
コーブ照明はもともと部屋の明るさをとるより、天井を広く明るくすることで天井の高さや空間の明るさ感を強調したりしますが、天井面がアーチ状になっていると空間に優しさも生まれます。(写真1)
写真1 コーブ照明(アーチ天井)
写真2 誘導効果を高めるコーブ照明
以前は天井面をできるだけ均一な明るさで照らすことをよしとされ、特に自然光の入らない部屋は空のイメージが得られコーブ照明の最適な演出効果でした。
最近では天井面を均一に光らせることより、空間を縁取るように、光の輪郭をデザインする目的に応用されるケースが増えています。例えば通路のように奥行きのある空間は、あえて天井面が均一な明るさにするのではなく、天井の両側、もしくは片側がライン状に光らせることで、人の流れを誘導します。(写真2)
効果的に演出するための留意点
コーブ照明の効果をより高めるには次の点に留意する必要があります。
1.天井の形状と仕上げ
アーチ天井や傾斜天井にコーブ照明は効果的です。天井の仕上げも反射率の高い白色が一般的に選ばれますが、床面や作業面照度を高めるには天井だけではなく壁面の反射率も高い仕上げにしなければなりません。
特別な例を除いて、天井は光沢のない素材や仕上げにすると良いです。
また、天井面にエアコンの吹き出しや煙感知器などの設備が付いていると、それらを明るく照らしてしまうため、効果が半減することもあります。
2.部屋の大きさ
天井高さに対して間口や奥行きのある広い空間ほど、光の反射が有効に働き、床面や作業面の照度が得られやすくなります。
3.使用器具と遮光角
LEDライン型モジュール(以下、ライン型LED)もしくは直管LEDがコーブ照明に良く使用されます。器具はできるだけ拡散もしくは広角配光がよく、柔らかな光が間接照明効果をより高めます。
図1-1で器具の高さと遮光板の高さdはほぼ同面が勧められますが、通常視線で光源が見えないことが重要です。
4.開口寸法の高さ
天井面をどのように光らせたら効果的かは設計者の経験や感性によります。一般的にコーブ照明の効果を高めるためには図1-1の開口寸法cに留意します。
トラフ形の直管蛍光灯に比べ、器具厚が薄いライン型LEDを使用することで、多くの設計者はスマートに光源を隠したいため、開口寸法cを小さくとり、天井との距離を狭くしすぎる傾向にあります。結果として、躯体などに遮光される光量が多くなるほど効率の悪い照明になってしまい、思っていたほどの明るさが得られないことがあります。さらにホットスポット(光の強い反射によるランプイメージ)も強調されやすいです。
もし、開口寸法が十分に取れない場合は図1-2のように狭角配光のライン型LEDで天井を舐めるように角度をつけて照明することが望まれます。しかし陰影が出やすいため、例えば天井面の仕上げが悪いと、それが強調されてしまうので注意しなければなりません。
開口寸法cが狭すぎると手が入りにくいことからメンテナンスもむずかしくなります。従ってcは最低でも10cm以上取ることが望まれます。
図1 器具の高さとカットオフライン
5.器具の取り付け位置
器具は図1-1のBよりAのように、できるだけ壁際に近づけると天井面をより広く照らすことが可能になります。しかし壁にぴったり付けると壁が明るくなりすぎるし、また器具の放熱が十分にいかなくなることも考えられるため、図1-1のaは少し壁から離すことが勧められます。(写真3)
器具と器具間は出来るだけ隙間なく連結させことが重要です。またランプのエンド部はランプの配光にもよりますが、図2-eは壁から5~10cmほど離すことで、壁に強い光が生じないで済みます。(写真4)
図2 角や隅が明るすぎないランプの位置
写真3 壁にぴったりの場合
写真4 eが5cmの場合
『快適空間へ導くLED照明実践講座』の目次
第1章 ベースライトの選び方
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1-1シーリングライト(大型)の選び方と取り付け大型のシーリングライト器具は一灯で基準の明るさが得られ、給電口があれば電気工事の資格なしで器具の取り付け可能なことから、日本では住宅照明用として普及しています。
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1-2シーリングライト(小型)の選び方シーリングライトとは天井直付け器具のことを言います。
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1-3ダウンライト器具の選び方と配灯LEDダウンライトはLED電球用とLEDモジュール一体型があります。
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1-4壁付け器具の形状と取り付け壁付け器具は以前「照明のことが分かる講座」で紹介しましたが、今回は壁直付け(以下、ブラケットライト)の用途と取り付けにについて紹介します。
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1-5直管LEDベースライトの種類と使い方全般照明とは室内の主要部を一様な明るさにする照明で、それは集光する器具より光の拡散するベースライトによって実現されます。
第2章 スポットライトの選び方
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2-1卓上ライトの形状と照明効果卓上ライトを安定して取り付けるためにはおもに4つの方法があります。
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2-2フロアスタンドライト(意匠照明用スタンド器具)の選び方シーリングライトのLED化が一段落すると、LEDのスタンド器具を購入する人が日本でも増えています。
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2-3シャンデリアの形状と取り付け吊り下げ型器具には一灯用と多灯用があります。一般的には前者をペンダントライト、後者をシャンデリアと言われています。
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2-4スポットライトの配光と照射位置LEDスポットライトは従来光源である白熱電球用スポットライトに比べ様々な利点があり、性能が向上しています。
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2-5ライティングレールの種類2本の電線を配管の中に入れて通電させる装置をライティングレール (ライティングバー、ライティングダクト、配線ダクトなどと呼ばれる。以下、配線ダクト)と言います。
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2-6ライン型LEDモジュールの種類と用途LEDモジュール(module)とはLEDパッケージを基板に取り付け、点灯可能にした最小構成の商品です。
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2-7コーブ照明の効果とランプ位置コーブ照明は天井面を照らす建築化照明です。天井の隅や壁の高い位置にくぼみ(アゴや庇などとも言う)、を設け、その内部に連続した光源を隠して天井面を照明します。
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2-8コーニス照明の効果とランプ位置何故、壁面全体を明るくするのでしょうか?壁面は通常の生活視点で最も目に入りやすいため、その面をどう照らすかによって空間全体の雰囲気や印象に大きな影響を与えるからです。
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2-9ガーデンライト(庭園灯)の選び方と配置庭園とは草花や樹木、石、池などを計画的に配し、整えられた空間を言います。
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2-10投光器と演出効果LED投光器はLEDの光を柱状に集めて、特定の方向や場を効率よく照らす屋外用照明器具のことです。
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2-11キッチンライト(流し元灯)の種類と照明効果LEDの特長の一つに器具の小型化があります。小型である故、今まで器具の設置が難しかった小スペースや狭スペースに取り付けを可能にしています。