加工現場の手仕上げ作業の勘どころ
ものづくりの現場において機械を頼らず手作業で行なう、「手仕上げ加工」。本連載では、各工程に沿って、加工現場における手仕上げ加工のコツをお教えします。
第2章 きさげ作業

2-1 きさげの基本と摺り合わせ

きさげ作業は英語でHand Scrapingと呼ばれ、きさげという一枚刃の工具を使用して、押すまたは引っ掻くことで金属表面をわずかに削り取る手作業の仕上げ技術です。 最終的に高い精度の面(平面、直角面、V面、円筒内面など)を得ることが出来ます。この作業は古い金属加工法ですが、重要な金属加工法で精密工作機械には不可欠な古くて新しい技術です。 図2-1は20年ほど前の、日本の平面研削盤のメーカーでのきさげ作業の写真で、鋳鉄製のベッドのV-V形の案内面を加工しているところです。現在では空調も整った作業環境で行われていますが、基本的な作業動作は今でも変わっていません。

図2-1 きさげ作業

図2-1 きさげ作業

2.1きさげの基本と摺り合わせ

きさげには、内面や端面の作業に用いられるささばきさげや角みぞの底をさらう時に使用される斜め刃きさげなどがありますが、代表的なきさげは、平面仕上げに使用される図2-2のような平きさげです。 この形は昔から全く変わっていません。材質はハイス(高速度鋼)と超硬があります。ハイスのきさげは火造りをして形を整え、刃先部を焼入れします。超硬のきさげはチップをろう付けしたものとクランプしたものとがあります。 きさげは木製の柄に取り付けられ使用しますが、太さや長さは作業する人の体格や作業内容によって様々です。きさげ作業に用いられる基本的な用具を図2-3に示します。 きさげ作業は基準となる軸や図2-4の定盤などの基準面を加工物の面に摺り合わせ、その接触点(当たり)をきさげによって一点ずつ除去する作業です。当たりを見るには塗料を塗りますが、 定盤に塗った塗料が加工物に転写された点を赤あたりといい、逆に工作物に塗った塗料が定盤に摺り取られ、金属が表面に出た凸部を黒あたりといいます。一般に、粗きさげでは赤あたり、仕上げでは黒当たりを除去します。 一回の摺り合せ毎にきさげをかける方向を90°変えるのできさげ面は図2-5のような模様になります。摺り合わせに用いる定盤の基準面は、高い精度が要求されるため昔から三面摺り合せが行われています。 三面摺り合せとは、3枚の平定盤のそれぞれの面をA面B面C面としますとこの手順は、

①A面とB面の双方の当たりを取り除きのぞき密着するようにします。

②A面を基準としてC面の当たりを取ります。

③B面とC面の互いの当たりを取ります。

④B面を基準としてA面の当たりを取ります。

⑤A面とC面の互いの当たりを取ります。

このように、お互いに摺り合せて凸部を削り取り、繰り返して理想的な平面に近づける作業です。

図2-2 平きさげ

図2-2 平きさげ

図2-3 きさげの作業用具

図2-3 きさげの作業用具

図2-4 定盤

図2-4 定盤

図2-5 きさげをかけた面

図2-5 きさげをかけた面

執筆: APTES技術研究所 代表 愛恭輔

『加工現場の手仕上げ作業の勘どころ』の目次

第1章 切断作業

第2章 きさげ作業

第3章 やすり作業

第4章 磨き作業

第5章 けがき作業

第6章 穴あけ作業

第7章 リーマ作業

第8章 ねじ立て作業

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