加工現場の手仕上げ作業の勘どころ
ものづくりの現場において機械を頼らず手作業で行なう、「手仕上げ加工」。本連載では、各工程に沿って、加工現場における手仕上げ加工のコツをお教えします。
第6章 穴あけ作業

6-3 ドリルの種類と特徴

ドリルといえば一般にツイストドリルを指しますが、用途に応じてさまざまな種類があります。ここでは、卓上ボール盤の作業に使用されるハイスドリルについて主に述べます。

6.3 ドリルの種類と特徴

JIS(日本工業規格)ではドリルの種類を、(1)刃部の材料および表面処理、(2)構造、(3)シャンクの形態、(4)機能または用途の4種類に分類しています。 さらに、(4)機能または用途に対して(4)-1溝のねじれ、(4)-2ボディの軸直角断面形状、(4)-3長さ、(4)-4の用途に分類し、これらの用語を番号順に組み合わせて・・・ドリルと呼ぶようになっています。(例えばハイステーパーシャンクドリル、超硬窒化チタンコーティング付刃ストレートシャンクドリルなどと呼びます。)

1. 刃部の材料および表面処理による分類

刃部の材料にはハイス(高速度鋼)や超硬、超硬質工具材料(サーメット、CBN焼結体、ダイヤモンドなど)が使用されています。卓上ボール盤で行なわれる加工には、ハイスドリルが一般に使用されています。 ハイスドリルの表面処理は、化学的な方法の黒色表面処理と物理的な方法のTiN(窒化チタン)処理が一般的に行なわれています。図6-10に表面処理をしたドリルを示します。 黒色表面処理は、アルカリ水溶液の中にドリルを浸漬させてドリルの表面に黒色の四三酸化鉄の皮膜を形成させる方法とホモ処理と呼ばれる四酸化鉄の黒さびを形成させる方法があります。いずれも耐食性に優れています。TiN処理は、窒素の反応ガスの中でチタンをアーク放電によって蒸発させドリルの表面に皮膜を形成し耐摩耗性を向上させます。

図6-10 ハイスツイストドリルに適用されている表面処理

図6-10 ハイスツイストドリルに適用されている表面処理

2. 構造による分類

刃部とシャンクとを一体の工具材料で作ったドリルはソリッドドリルと呼ばれます。卓上ボール盤の作業では一般にハイスソリッドドリルが使用されています。 構造が異なるドリルには、切れ刃に超硬チップをロウ付けした付刃ドリルやドリル先端に超硬などの工具材料をろう付けした先むくドリル、刃先交換チップをシャンクに機械的に取り付ける刃先交換式ドリルなどいろいろありますが、これらのドリルは卓上ボール盤の作業ではほとんど使用されていません。

3. シャンクの形態による分類

図6-11に示すストレートシャンクドリルとテーパシャンクドリルが一般的に使用されています。ストレートシャンクドリルは刃部の直径とシャンクとが同じ直径でまっすぐになっているドリルです。テーパシャンクドリルは柄がモールステーパで作られたドリルです。 その他にシャンクの端部にねじが切ってあるねじ付ストレートシャンクドリルやシャンクの端部にねじが切ってあるねじ付きモールステーパシャンクドリルなどがあります。

図6-11ストレートシャンクドリルとテーパシャンクドリル

図6-11ストレートシャンクドリルとテーパシャンクドリル

4. 機能又は用途による分類
4.1溝のねじれによる分類

溝が右ねじれの右ねじれドリや溝の左ねじれのドリル、溝がねじれていないドリル、溝のリードが一定でないドリルなどがあります。

4.2)ボディの軸直角断面形状による分類

卓上ボール盤で使用する一般のハイスドリルの断面形状は 一つのランドに一つのマージン設けたシングルマージンドリルです。 その他ドリルには、一つのランドに二つのマージンを設けたダブルマージンドリルやボディに油穴をもつドリル油穴付きドリル、 刃部が板状の直刃ドリル、半月形ドリル 、切れ刃が一枚の半月形のドリルなどいろいろありますが、卓上ボール盤での作業では機械の剛性不足や回転振れが大きい、 油剤供給方法が不可などにより一部のドリルを除き使用されていません。

4.3長さによる分類

一般に使用されるドリルは刃部が直径の5倍~8倍程度の長さで、レギュラレングスドリルと呼ばれています。刃部が直径の2倍~4倍程度でレギュラレングスドリルよりも短い図6-12に示すスタブドリルがあります。 このドリルは浅穴加工用に使用されます。スタブとは短い突出部、木の切り株といった意味で「太くて短い」形状を表します。全長がレギュラレングスドリルよりも長い図6-13のようなドリルをロングドリルと呼ばれ深穴加工に使用します。

図6-12 スタブドリル

図6-12 スタブドリル

図6-13 ロングドリル

図6-13 ロングドリル

4.4)用途による分類

1)ルーマ形ドリル

小径加工に用いるドリルでシャンクが太く刃部が細い段付きになっているドリルです。軸がしっかりと把握出来るのですが刃部が細いため無理をすると折れやすいので注意が必要です。図6-14に直径が0.1mmのルーマ形マイクロドリルを示します。 ただし、卓上ボール盤ではマイクロドリルのような極細のドリルは先端部の回転振れが大きく回転数が不足していることから折損することが多いです。

 図6-14直径0.1mmのルーマ形マイクロドリル

図6-14直径0.1mmのルーマ形マイクロドリル

2)段付きドリル

図6-15のように二つ以上の直径刃部を設けて段になっているドリルです。このドリルは段付き穴や穴あけと面取りを同時に加工する場合に用いられます。 単溝段付きドリル、複溝段付きドリルなどがあります。

図6-15 段付ドリル

図6-15 段付ドリル

3)スターティングドリル

ボール盤で穴をあける場合には、いきなりドリルで穴をあけるとドリルの先端が振れて穴の位置がずれ事が多いため、一般にセンターポンチを打って行なわれています。図6-16のスターティングドリルを使用して加工すると穴の位置決め精度を高めることが出来ます。

図6-16 スターティングドリル

図6-16 スターティングドリル

4)薄板用ドリル

薄板の加工には図6-17のような先端がローソク形状のドリルが有効です。丸い穴形状の加工が容易にできます。

図6-17ローソク形ドリル

図6-17ローソク形ドリル

5)センタ穴ドリル

工作物が円筒形状でセンタ穴を必要とする作業の場合に使用されるドリルですが、もみつけ作業にも活用できます。図6-18にセンタドリルを示します。

図6-18 センタドリル

図6-18 センタドリル

6)皿取りドリル

JISでは沈めフライスとも呼ばれていますが、皿もみきりとも呼ばれます。図6-19のような形状をしており、先端の案内軸は先にドリルで開けた穴と同じ径のものを用いてドリルが振れるのを防ぎます。

図6-19 皿取りドリル

図6-19 皿取りドリル

7)その他のドリル

その他、卓上ボール盤による作業ではテーパピン用の下穴加工に用いるテーパピンドリルやねじの下穴あけ及びねじ立てを1工程で行う場合に用いるドリルタップ、下穴の穴あけ及びリーマ仕上げを1工程で行う場合に用いるドリルリーマなど用途に応じたドリルがいろいろと使用されています。

執筆: APTES技術研究所 代表 愛恭輔

『加工現場の手仕上げ作業の勘どころ』の目次

第1章 切断作業

第2章 きさげ作業

第3章 やすり作業

第4章 磨き作業

第5章 けがき作業

第6章 穴あけ作業

第7章 リーマ作業

第8章 ねじ立て作業

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