工具の通販モノタロウ 切削工具の基礎講座 色々な用途のドリル

切削工具の基礎講座

ものづくりに欠かせない「切削工具」。切削工具にはどのような種類があるのか?購入する時に気を付けることは?使い方は? 本連載では、切削工具の正しい知識について、ご紹介していきます。
第2章 ドリル

2-5 色々な用途のドリル

図に色々なドリルを示します。フラットドリルは先端角が180°(平坦な)のドリルで、傾斜面への穴加工や交差する穴をあけるときに使用すると便利なドリルです。フラットドリルは穴の出口に発生するバリが少なく、真っ直ぐな穴をあけられることが特徴です。 また、フラットドリルは加工した穴の底面を完全な平坦にすることができることも利点です。

スターティングドリルはドリル加工の加工前の穴の位置決めやドリル加工後の面取り加工に使用するドリルです。また、ドリルという名称ですが、材料の角部の面取りやV溝のミーリング工具としても使用できます。スターティングドリルの先端角は60°、90°、120°、140°など多くの種類が市販されています。

ルーマ形ドリルは電子基板などの小径穴加工で用いるドリルで、ドリル直径に対してシャンク径が太く剛性が高いので高精度な穴加工ができます。しかし、ルーマ形ドリルは微細な穴加工用ドリルですので、振動によって刃部が折損することがあります。 ルーマ形ドリルは刃部全体を鏡面仕上げして切削抵抗を小さくし、高寿命にしているものもあります。

段付きドリルは二つ以上の直径を持ち、段になっているドリルで、段付き穴や面取りを1回の加工で同時にできる便利なドリルです。

ステップドリルは直径の異なる多数の円筒に切れ刃を持ち、階段状に重なることによって円すい形をした形状をしています。ステップドリルはその形状から一般に「筍(たけのこ)ドリル」と呼ばれています。 ステップドリルは任意の直径で送りを止めることにより小径から大径まで広い範囲の穴加工を1本で行うことができ、直径に合わせてドリルの交換を行う必要がないので便利です。

3枚刃ドリルは切れ刃が3枚あるドリルで、穴を3点で支持できるため、真円度の高い穴をあけることができます。ただし、溝が狭くなるため、切りくずの排出性が悪くなります。このため、3枚刃ドリルは切りくずの排出が問題にならないL/Dが3程度の穴あけや横穴の加工に有効です。

コアドリルは円筒形状で、円周に切れ刃が付いており、中心部は空洞になっています。通常のドリルは穴の体積分を取り除き、切りくずとして排出しますが、コアドリルは穴の外周のみを切れ刃によって削り取り、穴の中心部をくり抜くように穴をあけます。 コアドリルは電気、水道、道路、ガス、ダム・トンネル・橋梁など建築工事や配管工事で多用され、通常のドリルよりも大きな直径の穴を短時間であけることができることが利点です。なお、図に示すように、中心部に通常のドリルがあるものは、穴の中心を見失わないように取り付けられています。

  • フラットドリル
  • フラットドリル
  • スターティングドリル
  • スターティングドリル

  • ルーマ形ドリル
  • ルーマ形ドリル
  • 段付きドリル
  • 段付きドリル

  • ステップドリル
  • ステップドリル
  • 3枚刃ドリル
  • 3枚刃ドリル

  • コアドリル
  • コアドリル
執筆: 芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 澤 武一 准教授

『切削工具の基礎講座』の目次

第1章 切削工具とは?

第2章 穴あけ加工と穴仕上げ加工

第3章 旋盤用の切削工具

第4章 フライス加工用の切削工具

第5章 研削砥石

第6章 特徴的な切削工具

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