工具の通販モノタロウ ポンプ・送風機・電熱機器 遠心ポンプの実践講座 ポンプのケーシングボリュート形状

遠心ポンプの実践講座

本連載では、基礎講座に続き遠心ポンプにスポットをあて、ポンプを構成する部品の役割からポンプの点検の仕方、トラブルとその対策まで、 より実践的な知識をご紹介していきます。遠心ポンプの基礎講座はこちら>>
第2章 ポンプの構成部品と役割

2-2 ポンプのケーシングボリュート形状

ケーシングには吸込口及び吐出し口があり、吸込口から液を取り込み、吐出し口から液を送り出す役割があります。 ケーシング内に羽根車が配置されて、羽根車によって遠心力を与えられた液を効率よく吐き出すために、ケーシングの通液路は特別な形状になります。

主な形状としては、シングルボリュート、ダブルボリュート、ディフューザの3種類あります。シングルボリュートは、図2-2-1に示すように、羽根車の外周に通液路が「かたつむり」のようなボリュートが1個あります。 ダブルボリュートは、図2-2-2に示すように、羽根車の外周にボリュートが2個あり、180°対称の位置になっています。 ディフューザは、図2-2-3に示すように、羽根車の外周に通液路がたくさんあります。その数は「羽根車の翼数±1」にするのが一般的です。

図2-2-1 シングルボリュート

図2-2-1 シングルボリュート


図2-2-2 ダブルボリュート

図2-2-2 ダブルボリュート


図2-2-3 ディフューザ

図2-2-3 ディフューザ

これら3種類のケーシングの通液路の特徴を表2-2-1にまとめて示します。 単段ポンプで口径が小さい範囲はシングルボリュート、単段ポンプで口径が小さい範囲でも全揚程が高ければダブルボリュート、単段ポンプで口径が大きくなるとダブルボリュート、多段ポンプではディフューザを使用しています。

表2-2-1 ケーシングの構造と特徴

形式 構造 特徴
シングルボリュート 一つの通液路 広範囲の運転点で効率が良い。
ダブルボリュート 二つの通液路 広範囲の運転点で効率が良いが、シングルボリュートよりは劣る。
ディフューザ たくさんの通液路 ディフューザの外側にボリュートがある。効率が良い範囲は狭い。

このように、ケーシングの通液路の形状はそれぞれ目的があって使い分けているのです。 最大の理由は、羽根車の半径方向に作用するラジアルスラストの低減にあります。ラジアルスラストが大きいほど、ポンプの主軸のたわみが大きくなります。 したがって、シングルボリュートで主軸径を大きくするか、ダブルボリュートにしてたわみを小さくして主軸径を小さくするかは、ポンプメーカの設計の方針によって決まります。

一般には、全揚程が200 m以上の単段ポンプ、及び吸込口径が200 mm以上の単段ポンプにダブルボリュートを採用しています。

ラジアルスラストの他に、製造コスト及び鋳造性も考慮する必要があります。形状から分かると思いますが、シングルボリュート、ダブルボリュート、ディフューザの順に高コストになります。 そして、ダブルボリュートで小形の単段ポンプでは、鋳造の歩留まりが向上しません。 多段ポンプの場合、数段分を1つのケーシングで鋳造することは難しいので、このようなときはケーシングを上下2つに分割すると鋳造が容易になります。

単段ポンプはすべてダブルボリュートにするように指定する購入者がいます。ダブルボリュートにしてラジアルスラストを低減し、回転体のたわみを小さくすることによってポンプの信頼性を向上させるためです。

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの実践講座』の目次

第1章 ポンプの仕様

第2章 ポンプの構成部品と役割

第3章 ポンプの据付けと試運転

第4章 ポンプの運転

第5章 ポンプの保守点検と省エネルギー

第6章 ポンプのトラブルと対策

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