遠心ポンプの実践講座

本連載では、基礎講座に続き遠心ポンプにスポットをあて、ポンプを構成する部品の役割からポンプの点検の仕方、トラブルとその対策まで、 より実践的な知識をご紹介していきます。遠心ポンプの基礎講座はこちら>>
第4章 ポンプの運転

4-9 ポンプの直列運転

4-9-1 直列運転

ポンプを2台以上使って、直列に接続して同時に運転する場合を直列運転と呼びます。ここでは、同じ性能のポンプを2台使った直列運転について説明します。

直列運転は全揚程をポンプ1台のときより高くしたい場合に利用されます。図4-9-1に示すように、ポンプを2台直列に設置し、吸込配管も吐出し配管も1本にします。ポンプの運転点について図4-9-2に示します。同図で、横軸に吐出し量、立軸に全揚程を示します。 1台単独運転の全揚程は、ポンプ1台の全揚程をそのまま描きます。 直列運転の合計の全揚程は、締切点では1台の全揚程の点Dに同じ全揚程を加算した点Fを求め、その他の吐出し量では立方向に全揚程を加算して描きます。 具体的には、点Bの全揚程H2を立方向に加算して2・H2の点Aを求めます。他の吐出し量も同様で、1台のときの吐出し量における全揚程と同じ全揚程だけ加算して求めます。

図4-9-1 直列運転の配置

図4-9-1 直列運転の配置


図4-9-2 直列運転の性能

図4-9-2 直列運転の性能

点DBCを通る曲線がポンプ1台の全揚程、点FAを通る曲線がポンプ2台の全揚程、点ECAを通る2次曲線は配管抵抗曲線です。どちらかのポンプ1台の単独運転のとき、両者の交点Cが運転点になります。

ポンプ1台を運転していて、もう1台のポンプを運転すると、吐出し量が増加するので配管抵抗も増加し、点Cから点Aに運転点が移動します。 2台の直列運転のときは配管抵抗が増加するので1台の吐出し量は増加し、それぞれのポンプの運転点は点Cから点Bへ移動します。したがって、1台の単独運転のときは、吐出し量Q1、全揚程H1ですが、2台の直列運転のときはそれぞれ吐出し量Q2、全揚程2・H2になります。

2台のポンプのうち、最初に始動するのは吸込タンクに近いポンプにします。その後2台目のポンプを始動します。2台目のポンプを最初に始動すると、1台目のポンプが流れに対して圧力の損失になり、NPSHAを低下させてしまうからです。

4-9-2 直列運転の注意点

直列運転において、次の注意点があります。

1.ポンプの操作を容易にするために、2台のポンプはすぐ近くに設置します。そのため、2台目の吸込圧力は1台目の吐出し圧力になるので、2台目の軸封ではスタフィングボックス内の圧力が高くなります。

2.2台目のポンプに入る流量が不足すると、吐出し量が変動することがあります。

これらの対策として、図4-9-3に示すように、2台のポンプの間にタンクを追加することによって、事実上ポンプを単独運転に切り替えることが考えられます。 これらは、2台のポンプが相互に影響を与えることを避けた方法です。実際には状況に応じた最善策を採ることになります。

図4-9-3 直列運転の変更例

図4-9-3 直列運転の変更例

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの実践講座』の目次

第1章 ポンプの仕様

第2章 ポンプの構成部品と役割

第3章 ポンプの据付けと試運転

第4章 ポンプの運転

第5章 ポンプの保守点検と省エネルギー

第6章 ポンプのトラブルと対策

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