工具の通販モノタロウ 遠心ポンプの実践講座 ポンプのケーシングガスケット

遠心ポンプの実践講座

本連載では、基礎講座に続き遠心ポンプにスポットをあて、ポンプを構成する部品の役割からポンプの点検の仕方、トラブルとその対策まで、 より実践的な知識をご紹介していきます。遠心ポンプの基礎講座はこちら>>
第2章 ポンプの構成部品と役割

2-4 ポンプのケーシングガスケット

ポンプは言うまでもありませんが、圧力容器の1つです。そして、ポンプのケーシングは鋳造、加工、組立などの制約があって、ケーシングカバーなどと組み合わせた構造になります。 そのため、その組合せ面を密封して液が漏れないようにします。そこで、ケーシングガスケットが必須になります。

ケーシングガスケットとして主に使用されているものを「JIS B 8265 圧力容器の構造」から抜粋して、下記に示します。最も安価で一般的なガスケットはOリングです。 下記では「セルフシールガスケット」に該当します。また、産業用ポンプには「ジョイントシート」もよく使われています。高温や低温、高圧などのポンプでは、「渦巻形金属ガスケット」は信頼性が高いので広く使用されています。

セルフシールガスケット(Oリング、金属、ゴム、その他 セルフシーリングとみなされるもの。)
ガスケットの材料 ガスケット係数(m) 最小設計締付圧力
(y N/mm2
セルフシールガスケット
(Oリング、金属、ゴム、その他 セルフシーリングとみなされるもの。)
0 0

布又は多くの繊維を含まないゴムシート
ガスケットの材料 ガスケット係数(m) 最小設計締付圧力
(y N/mm2
スプリング硬さ(JIS A)75未満 0.50 0
スプリング硬さ(JIS A)75以上 1.00 1.4

ジョイントシート
ガスケットの材料 ガスケット係数(m) 最小設計締付圧力
(y N/mm2
厚さ3.0mm 2.00 11.0
厚さ1.5mm 2.75 25.5
厚さ0.8mm 3.50 44.8

渦巻形金属ガスケット
ガスケットの材料 ガスケット係数(m) 最小設計締付圧力
(y N/mm2
スプリング硬さ(JIS A)75未満 0.50 0
スプリング硬さ(JIS A)75以上 1.00 1.4

平形金属ガスケット
ガスケットの材料 ガスケット係数(m) 最小設計締付圧力
(y N/mm2
軟質アルミニウム 4.00 60.7
軟質の銅または黄銅 4.75 89.6
軟鋼または鉄 5.50 124.1
モネルまたは4~6%Cr鋼 6.00 150.3
ステンレス鋼およびニッケル合金 6.50 179.3

同表に「ガスケット係数 m」及び「最小設計締付圧力 y」があり、ガスケットの材料や厚さによって、これらの値が異なっています。 どちらの値も、ガスケットを組込み、ポンプの運転中に漏れなどが発生しないようにするために、設計上必要になります。 逆に言うと、これらの値を使って設計すると、通常は問題が起こりません。 そして、どちらの値も小さいほどケーシングカバーの厚さを薄くできたり、ボルトの本数を少なくしたりできます。 詳しく言うと、「ガスケット係数 m」はガスケットを組込むときの強度、「最小設計締付圧力 y」はポンプの運転中の密封に関係する値です。

ここで、「セルフシールガスケット」を見ると、「ガスケット係数 m」も「最小設計締付圧力 y」も0です。 「セルフシールガスケット」と呼ばれる所以がここにあるのですが、ボルトなどで強固に締め付ける必要がないので、ケーシングカバーなどもさほど強固に設計する必要はありません。 一方、値の大きい「渦巻形金属ガスケット」や「平形金属ガスケット」は、ケーシングカバーを強固に設計し、ボルトも太く本数を多くする必要があります。

ガスケットの選定に当たっては、価格が安く液性、温度、圧力などに耐えるものにします。Oリングは安価ですが、耐食性、温度、圧力などに限界があります。 金属ガスケットはOリングと比較して高価ですが、材料を適切に選定することによって、耐食性、温度、圧力など広範囲に適用できます。 また、Oリングは金属ガスケットと比較して、密封するための接触面積が小さいので、接触面積が広い金属ガスケットの方が信頼性は高くなります。

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの実践講座』の目次

第1章 ポンプの仕様

第2章 ポンプの構成部品と役割

第3章 ポンプの据付けと試運転

第4章 ポンプの運転

第5章 ポンプの保守点検と省エネルギー

第6章 ポンプのトラブルと対策

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