遠心ポンプの実践講座

本連載では、基礎講座に続き遠心ポンプにスポットをあて、ポンプを構成する部品の役割からポンプの点検の仕方、トラブルとその対策まで、 より実践的な知識をご紹介していきます。遠心ポンプの基礎講座はこちら>>
第5章 ポンプの保守点検と省エネルギー

5-1 ポンプの点検

5-1-1 ポンプの点検

日常、ポンプの状態を点検することは重要なのですが、ポンプの台数が多いと大変です。しかし、大変だからといって省略することはできません。そこで、長年ポンプの点検をした結果を紙などにまとめておいて、ポンプごとに問題が起こりそうな間隔を把握することが重要になります。間隔が把握できれば、ポンプの重要度に応じて、どの程度の間隔で点検するか方針を立てることが可能になります。

ポンプの点検は、点検項目を日常、毎月、半年ごと及び1年ごとに分けて実施します。そして、点検した結果、問題があるかどうかを判定するための基準が必要になります。実際には、保守点検を管理するための管理標準を作成して実施します。

管理標準の詳細については、「遠心ポンプの基礎講座」の「第5章 5-13 ポンプの管理標準」を参照してください。

5-1-2 全分解点検と間隔

ポンプに問題がなくても、定期的にポンプをすべて分解して点検することはその後の運転時間を確保するために必要になることがあります。その間隔をどうするかは難しいのですが、ポンプの重要度と用途によって決めることになります。重要なポンプであれば予備機を設置して、主機として運転されているポンプに問題が発生したら予備機に切り替えて、問題があるポンプはゆっくりと調査して対策すればよいのです。

表5-1-1に用途別に起こりやすいトラブルと全分解点検間隔を参考として示します。予備機のない場合、トラブルが起こる前に対策すると、生産などへの悪影響を回避することができます。

表5-1-2 全分解点検と間隔

用 途 起こりやすいトラブル 全分解点検間隔
石油精製ポンプ シール漏れ、かじり、浸食 2~4年
化学ポンプ 腐食 1年
高速ポンプ 振動、騒音、シール漏れ 2年
高温ポンプ かじり、浸食、シール漏れ 1年
低温ポンプ かじり、シール漏れ 2年
スラリポンプ 摩耗 半年
海水ポンプ 腐食 1年
上水送水ポンプ ウォータハンマ 3年
下水ポンプ 詰まり 1年
排水ポンプ 腐食、浸食 1年
デスケーリングポンプ 振動、かじり 1年
5-1-3 ポンプの長期保管と検査

ポンプを購入後、プラントの工事が遅れているなどの理由から、ポンプを長期間保管する必要が出てきた場合、ポンプをきちんと保管し運転開始に備えます。長期保管の保守と点検について実施する項目を表5-1-2に示します。特に、軸受や軸受ハウジングは錆びると使用できなくなるので、保管中も潤滑油を適量入れておいて、1週間に1度手回しして潤滑油を攪拌して、軸受や軸受ハウジング内面に付着させる必要があります。

表5-1-3 長期保管の保守と点検

状況 実施する項目
保守と点検 1:グランドパッキンの場合、グランドパッキンの固形するのを防止するためにグランド押えのナットを緩める。メカニカルシールの場合はそのままにする
2:ごみや湿気からポンプを保護するために、ポンプにシートを被せる
3:回転体の1週間に1度、回転体を手回しする
4:1か月に2度、晴天のときシートを取り外して換気する
5:3か月ごとの点検と保守
  • ポンプの外面の塗装に傷などがないかを確認する、傷などがあれば補修塗りする
  • 機械加工面に塗布されている防錆油の皮膜を確認する、防錆油が剥がれて錆びているときは防錆油を塗りなおす
  • 回転体を手回しし、軸受部に異音や回転のむらがないかどうかを確認する
6:製ポンプなど内部が錆びるポンプの場合、ポンプ内に乾燥剤を入れて密封する
運転開始前 1:ンドパッキンの場合、ボルトとナットが脱落していないかどうかを確認する
2:体を手回しし、軸受部に異音や回転のむらがないかどうかを確認する
3:潤滑油を全量新しいものに交換する
4:芯出しする
5:ポンプの実液運転前に、十分に洗浄のための運転を行う
執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの実践講座』の目次

第1章 ポンプの仕様

第2章 ポンプの構成部品と役割

第3章 ポンプの据付けと試運転

第4章 ポンプの運転

第5章 ポンプの保守点検と省エネルギー

第6章 ポンプのトラブルと対策

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