工具の通販モノタロウ 遠心ポンプの実践講座 ポンプの省エネルギーの具体策

遠心ポンプの実践講座

本連載では、基礎講座に続き遠心ポンプにスポットをあて、ポンプを構成する部品の役割からポンプの点検の仕方、トラブルとその対策まで、 より実践的な知識をご紹介していきます。遠心ポンプの基礎講座はこちら>>
第5章 ポンプの保守点検と省エネルギー

5-4 ポンプの省エネルギーの具体策

5-4-1 インペラカット

「インペラカット」は、図5-4-1に示すように、羽根車の外周を旋盤で加工して、羽根車直径をD1からD2のように小さくすることを言います。 軸動力の低下率は、正確には計算できないので経験値から想定します。「インペラカット」したときの性能変化の例を図5-4-2に示します。同じ全揚程において、軸動力は吐出し量の低下分に加え効率の上昇分低下します。同図では、インペラカット後、吐出し弁を絞ると、軸動力は点Aから点Bに低下します。

図5-4-1 インペラカット

図5-4-2 インペラカットの性能変化

5-4-2 段抜き

「段抜き」は多段ポンプに対して適用できる方法で、羽根車を必要数抜き取ることを言います。抜き取った羽根車の替りにディスタンスピースを入れると、ポンプは支障なく運転することができます。例えば、5段のポンプの3段目及び4段目を「段抜き」すると、同じ吐出し量において全揚程及び軸動力は約60%に低下します。

5-4-3 樹脂材料

直径が大きく出口幅が小さい羽根車にせざるを得ない、いわゆる低比速度ポンプにおいては、高効率を達成できたとは言えない状況にあります。その理由として、低比速度ポンプでは、漏れ損失が大きい、円板摩擦損失が大きい、及び羽根車の一体鋳造が難しいという問題が挙げられます。 これらの問題に対応するために、API 65では、樹脂材料のウェアリング及び溶接形の羽根車を認めています。

図5-4-3に示すように、ウェアリングに樹脂材料を使用して、羽根車との半径すき間を現状の半分まで小さくします。こうすることによって、ウェアリング部から漏れてポンプ効率を下げる原因になる環流量を低減して、図5-4-4に示すように、ポンプ効率を向上させることができます。 また同時に、全揚程も上昇するので、全揚程の上昇が不要なときは、羽根車外周をインペラカットすることによって、ポンプ軸動力を更に低減できます。この方法は、特に低比速度ポンプや小形ポンプに効果があります。このように対策した場合の電気料金の低減額を1 kWh=12円と仮定して図5-4-5に参考として示します。

図5-4-3 ウェアリング部の半径すき間

図5-4-4 性能変化

図5-4-5 電気料金の低減額

溶接形の羽根車は、低比速度ポンプでクローズド形羽根車の場合に適用されることがあり、翼間の通液路をミーリング加工し、別に製作した側板を羽根車の翼に溶接してクローズド形羽根車を一体に完成させます。このように製作することによって、寸法精度の向上、面粗さ悪化の解消及び鋳造性の問題を解消できます。

5-4-4 インバータ

インバータによる制御をした場合、図5-4-6に示すように、吐出し量及び全揚程の低下とともに、ポンプの軸動力も低下します。

図5-4-6 インバータによる制御

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの実践講座』の目次

第1章 ポンプの仕様

第2章 ポンプの構成部品と役割

第3章 ポンプの据付けと試運転

第4章 ポンプの運転

第5章 ポンプの保守点検と省エネルギー

第6章 ポンプのトラブルと対策

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