工具の通販モノタロウ 遠心ポンプの実践講座 空気を含んだポンプの運転

遠心ポンプの実践講座

本連載では、基礎講座に続き遠心ポンプにスポットをあて、ポンプを構成する部品の役割からポンプの点検の仕方、トラブルとその対策まで、 より実践的な知識をご紹介していきます。遠心ポンプの基礎講座はこちら>>
第4章 ポンプの運転

4-5 空気を含んだポンプの運転

ポンプや配管内に空気が外部から侵入しないとしても、パルプ液や復水などのように、液そのものに空気が混入している場合はどうしたらよいでしょうか。

例えば、「理科年表」には、1atmにおける水1cm3に対する空気の溶解度、及び圧力と水温が変化したときの水1cm3に対する空気の溶解度が掲載されています。それらのデータから、次のことが分かります。

  1. 液温が高いほど、空気の溶解度が低下する。
  2. 圧力が低いほど、空気の溶解度が低下する。

この2つのことから、液温を上げて圧力を低くすることが、液中にある空気を取り除くために有効であることが分かります。

ポンプの性能試験装置では、NPSH3の試験のときポンプの吸込側に、図4-5-1に示すように、ポンプの吸込側に脱気器を置くことがあります。 脱気器内にヒーターを入れて水を加温し、タンクは密閉のものにして真空ポンプでタンク内及び脱気器内の真空度を高めます。 この方法だと空気による悪影響を避けることができるからです。

図4-4-1 脱気器を付けたポンプの性能試験装置

図4-4-1 脱気器を付けたポンプの性能試験装置

しかし、場合によってはこのような方法が実用的でないかもしれません。そのときには、ポンプの吸込配管の口径をできるだけ大きくして、吸込流速を小さくして空気を配管内で上昇させて、ポンプに入り込む前に吸込タンクへ戻す方法は効果があります。

具体的には、図4-5-2に示すように、吸込タンクから取り出す配管はできるだけサイズを大きくします。そして、同じ配管サイズの空気抜き短管、レジューサ及びポンプと同じ配管サイズの整流短管を取り付けます。 空気抜き短管の断面を図4-5-3に、同図における断面〝A″を図4-5-4に示します。 空気が混入している液を低速にして、空気を上方に浮かせます。そして、その空気を図4-5-3に示す止め板で止めて、空気溜り槽へ滞留させて、図4-5-2に示す上り勾配になった空気抜き配管で吸込タンクの気相へ戻します。 止め板の高さは上から配管内径の約1/4覆うようにhs =1/4 x Dpiにし、溶接で固定します

図4-5-2 空気抜き装置

図4-5-2 空気抜き装置

図4-5-3 空気抜き短管の断面

図4-5-3 空気抜き短管の断面

図4-5-4 空気抜き短管の止め板

図4-5-4 空気抜き短管の止め板

次に、整流短管です。断面を図4-5-5に、同図における矢視〝A″を図4-5-6に示します。整流短管には十字形に整流板を溶接で固定し、羽根車の回転によって吸込配管の上流部に旋回流が発生して空気が上昇できなくなることを防止します。

図4-5-2に示す吸込タンクは密閉になっていますが、大気に開放したタンクにも適用できます。また、同図では吸込が押込みになっていますが、吸上げのときは逆に空気を吸い込んでしまうために、この方法は適用できません。 吸込配管の途中に弁やストレーナなどを付ける場合には、配管サイズが小さい方に付けると経済的です。

図4-5-5 整流短管の断面

図4-5-5 整流短管の断面

図4-5-6 整流短管の整流板

図4-5-6 整流短管の整流板

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの実践講座』の目次

第1章 ポンプの仕様

第2章 ポンプの構成部品と役割

第3章 ポンプの据付けと試運転

第4章 ポンプの運転

第5章 ポンプの保守点検と省エネルギー

第6章 ポンプのトラブルと対策

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