工具の通販モノタロウ 遠心ポンプの実践講座 ポンプトラブルの分類と原因分析

遠心ポンプの実践講座

本連載では、基礎講座に続き遠心ポンプにスポットをあて、ポンプを構成する部品の役割からポンプの点検の仕方、トラブルとその対策まで、 より実践的な知識をご紹介していきます。遠心ポンプの基礎講座はこちら>>
第6章 ポンプのトラブルと対策

6-1 ポンプトラブルの分類と原因分析

ポンプでは予期しなくとも残念ながらトラブルが発生します。ここでは、腐食、振動などのトラブルを「機能別分類」とし、またポンプの用途によって起こりやすいトラブルを「用途別分類」として説明します。

6-1-1 機能別分類

ある総合的なポンプメーカの統計では、トラブルを機能別に分類すると、図6-1-1のようになっています。腐食及び浸食のトラブルが約4割、シールが約3割、そして、振動・騒音、性能低下、温度上昇・かじりと続きます。 もちろん、扱っているポンプが変われば、これらの比率は変わります。例えば、汎用的なポンプメーカであれば、振動や性能低下の問題が多くあります。

図6-1-1には現れていませんが、ポンプの吸込側の弁を閉じたまま3分間運転し続けたことによって、焼付き事故を起こした事例を聞いたことがあります。これは、絶対避けなければならないのに起こってしまった事故で、いわば人的トラブルです。そして、このような人的トラブルは最近増えていると聞いています。

図6-1-1 機能別分類

6-1-2 用途別分類

起こりやすいトラブルをポンプの用途別に見ると、表6-1-1のようになります。石油精製ポンプはシール漏れやかじり、化学ポンプは腐食、高速ポンプは振動や騒音、海水ポンプは腐食など、それぞれの用途において特徴的なトラブルが起こりやすくなります。 これは、ポンプメーカの技術が低いから起こるのではなく、入念に検討して設計したとしても、残念ながら起こってしまいます

表6-1-1 用途別のトラブル

用 途 起こりやすいトラブル
石油精製ポンプ シール漏れ、かじり、浸食など
化学ポンプ 腐食
高速ポンプ 振動、騒音、シール漏れ
高温ポンプ かじり、浸食、シール漏れ
スラリーポンプ 摩耗
海水ポンプ 腐食
上水送水ポンプ ウォータハンマ
下水ポンプ 詰まり
排水ポンプ 腐食、浸食
デスケーリングポンプ 振動、かじり
6-1-3 原因分析

トラブルはなぜ起こるのでしょうか。

ポンプは、機械の1つです。ポンプを設計して製造するためには、流体工学をはじめ、振動工学、材料工学、熱工学などの工学を応用した技術が必要になります。そして、そこに介在するのは技術者などの人です。

ポンプの一生は、私たち人間の一生に似ています。すなわち、ポンプを必要とする顧客が必要とするポンプをポンプメーカに問い合わせし、ポンプメーカは価格を付けて顧客に見積り書を提出します。顧客はその価格や性能などに納得すれば発注します。 その後、ポンプメーカが製造することによって、ポンプの一生が始まります。命を与えられてポンプは、日夜働いて使用者に仕えます。ときどき、どこか具合が悪くなるので、手当をしてもらって回復しまた働き続け、そしてついに寿命を全うするのです

それでは、トラブルになった原因を技術的原因、人的原因及び経済的原因の3つに分けて、次の項からもう少し詳しく原因を見ていきましょう。

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの実践講座』の目次

第1章 ポンプの仕様

第2章 ポンプの構成部品と役割

第3章 ポンプの据付けと試運転

第4章 ポンプの運転

第5章 ポンプの保守点検と省エネルギー

第6章 ポンプのトラブルと対策

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