工具の通販モノタロウ 遠心ポンプの実践講座 密閉管路内のポンプ運転

遠心ポンプの実践講座

本連載では、基礎講座に続き遠心ポンプにスポットをあて、ポンプを構成する部品の役割からポンプの点検の仕方、トラブルとその対策まで、 より実践的な知識をご紹介していきます。遠心ポンプの基礎講座はこちら>>
第4章 ポンプの運転

4-3 密閉管路内のポンプ運転

ポンプが密閉管路の装置内で運転されている場合、液の温度上昇はどうなるのでしょうか。図4-3-1に示すような密閉管路内にポンプを設置した場合、ポンプの運転中に装置全体の液温がどれだけ上昇するのか、ポンプの性能は図4-3-2に示すものとして、運転点の吐出し量Qmについて考えてみたいと思います。

駆動機から与えられる軸動力Smは、次のことに消費されます。

  1. 吐出し量Qmを流すための有効な仕事
  2. ポンプ、配管及びタンク内にある液の温度上昇
  3. ポンプの振動、騒音
  4. ポンプの構成部品、配管及びタンク材料の温度上昇
  5. ポンプ、配管及びタンク外周表面からの熱放射
  6. 軸封へのフラッシング
  7. ウェアリング部などの内部環流
図4-3-1 ポンプを使った装置

図4-3-1 ポンプを使った装置

図4-3-2 ポンプの性能

図4-3-2 ポンプの性能

次に、液温の上昇値の計算を表4-3-1に示します。同表で「ポンプの振動、騒音」などの熱量の総和E3は、ここでは軸動力Smの20 %と仮定しています。これらの消費動力がいくらか、実験によって求めることが可能かもしれませんが、筆者は断定できません。

しかし、これらのうち「ポンプの構成部品、配管及びタンクの材料そのものの温度上昇」及び「ポンプ、配管及びタンク外周表面からの熱放射」は装置の計画が終われば、周囲の条件などを仮定すれば計算で推測が可能になります。

例えば、装置内の液温を一定にして試験する必要がある場合、タンク内にヒーターと冷却水の配管を設けて、放熱などとの熱バランスを取りながら実施していただきたいと思います。

表4-3-1 液の温度上昇値の計算式
  • 1.液が得る熱量:E1
  • E1=(比熱) x (質量) x (液の温度上昇値)=Cw x (ρ・Vp)/1000x Δt (kcal)
  • Cw:液の比熱(kcal/(kg・℃))
  • ρ:液の密度(kg/m3
  • Vp:ポンプ、配管およびタンク内にある液の全容量(l)
  • Δt:液の温度上昇値(K(℃))
  • 2.吐出し量Qmを流すために必要な有効な仕事:E2
  • E2=(密度)x(吐出し量)x(全揚程)=ρx Qm/60 x Hm(kg・m/s)
  • Hm:吐出し量Qmにおける全揚程(m)
  • 1kW=101.97kg・m/sなので、E2=ρx Qm x Hm/(60 x 101.97)(kW)
  • 3.「ポンプの振動、騒音」、「ポンプの構成部品、配管及びタンク材料の温度上昇」、「ポンプ、配管およびタンク外周表面からの熱放射」、「軸封へのフラッシング」及び「ウェアリング部などの内部環流」の熱量の総和:E3
  • E3はここでは軸動力Smの20 %と仮定し、E3=0.2 x Sm(kW)
  • 4.軸動力:Sm
  • Sm=ρx Qm x Hm/(60 xηm)(kg・m/s)=ρx Qm x Hm/(60 x 101.97 xηm)(kW)
  • ηm:効率(%/100)
  • 5.熱つり合い
  • E1(kcal) =Sm(kW)-E2(kW)-E3(kW)
  • 単位を(kW)に合わせるために、ポンプ運転経過時間をT(s)とすれば、1kW=0.2389kcal/sなので、
  • E1/(0.2389 x T ) (kW) =Sm(kW)-E2(kW)-E3(kW)
  • このつり合い式をΔtについて解くと、次のようになります。
執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの実践講座』の目次

第1章 ポンプの仕様

第2章 ポンプの構成部品と役割

第3章 ポンプの据付けと試運転

第4章 ポンプの運転

第5章 ポンプの保守点検と省エネルギー

第6章 ポンプのトラブルと対策

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