工具の通販モノタロウ フルハーネス等の基礎講座 墜落制止用器具の法改正

フルハーネス等の基礎講座

高所や急傾斜など墜落のおそれがある場所で作業を行う時、危険を防止するために装備する「墜落制止用器具」。本連載では、墜落制止用器具の種類や使い方から、墜落制止用器具に関する法規まで、墜落制止用器具利用への意識を高めてもらうための基礎知識を紹介していきます。
第1章 墜落制止用器具の法改正

1-1 墜落制止用器具の法改正

第1.法改正の概要
1.はじめに

筆者は、東京オリンピック施設関連工事施工のため来日した外国人作業者(イタリア・スペイン・ギリシア人等、約150名)に対し、2019年10月から翌年3月まで、8回のハーネス特別教育を行なった(写真1)。

フルハーネス先進国のEU諸国作業者が持参したフルハーネスは、参考にする点も多かったが、宙づりに対する自己救助・延命措置訓練は初体験のようで大変興味をもって参加していた。

写真1
写真1

 

2.当講座の目的

ハーネス特別教育では、中災防や建災防等の教材と副本として拙著「フルハーネス型安全帯、フルハーネス時代の安全管理=労働新聞社」等を要約したレジメを使用した。

当講座内容は、墜落制止用器具の改正に伴うガイドラインの解説が主体だが、ガイドラインでは触れていない点も多数含んでいるので、現場で参考としていただければ幸いである。

 

3.改正の背景と趣旨

(1)胴ベルト型安全帯を使用して墜落した時に、宙づり状態による胸部圧迫から低酸素脳症等となり死亡する災害が多発した(第2章第3参照)。

(2)欧米では、フルハーネスだけを墜落制止用器具とし、胴ベルト型は使用を禁止している。

(3)日本の休業4日以上の、年千人当たりの災害発生率(年千人率)は、イギリスの5分の1、ドイツの13分の1と低いが、建設業の10万人当たりの死亡率は、イギリスの4倍、ドイツの1.5倍と高い。(図1 2005年のデータ)。

(4)このような背景から、日本でも墜落制止用器具の国際基準を参考に安全帯の構造規格を改正し、フルハーネス使用を原則義務化とした。

図1
図1

 

4.改正点等のポイント

(1)「安全帯」の名称を「墜落制止用器具」に改めた。本稿では図2のようにフルハーネスと胴ベルト型と呼ぶことにする。

(2)U字つり専用の胴ベルト型は、改正後(2019年2月1日)から使用禁止とした。

(3)旧構造規格のフルハーネスと胴ベルト型は、2022年1月1日まで使用できるが、1月2日以降は新規格を使用しなければならない(図3)。

  • 新規格のフルハーネスは、法改正以降使用できる。
  • 旧規格の胴ベルト型は、高さに関係なく2022年1月1日まで使用できる。
  • 新規格の胴ベルト型は、法改正以降6.75m超えでは使用できない。

(4)高さが2m以上の高所作業において、作業床を設けることが困難な場合で、フルハーネスを使用して作業を行う作業(ロープ高所作業を除く)に従事する作業者は、特別教育を受けなければならない。

図2
図2

図3
図3

 

執筆: みなとみらい労働法務事務所 所長 菊 一 功

『フルハーネス等の基礎講座』の目次

第1章 墜落制止用器具の法改正

第2章 墜落制止用器具等の基礎知識

第3章 ハーネスの特徴

第4章 フルハーネスの使い方、使用する際の注意点

第5章 点検・保守・保管

第6章 墜落災害発生時の救助体制と延命措置

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