フルハーネス等の基礎講座

高所や急傾斜など墜落のおそれがある場所で作業を行う時、危険を防止するために装備する「墜落制止用器具」。本連載では、墜落制止用器具の種類や使い方から、墜落制止用器具に関する法規まで、墜落制止用器具利用への意識を高めてもらうための基礎知識を紹介していきます。
第2章 墜落制止用器具等の基礎知識

2-9 カラビナの使用方法

1.D環とランヤードを接続する
1

ランヤードとD環との接続は、写真1のように一体型が多いが、ランヤードを交換のために接続するには、写真2のコネクタがあらかじめ接続されたものが便利である。写真3のようなカラビナを接続手段とする別売りのランヤードもある。

写真1
写真1

写真2
写真2


写真3
写真3

 

2 欧米でのカラビナの使用例

オリンピック関連工事で来日した欧州人作業者が着用するハーネスには、写真4のように2箇所にカラビナが使用されていた。フック、ロープ等、ショックアブソーバの各部品は、各単品で交換することができる。カラビナとフックは、日本規格の破断荷重11.5KNに対し、いずれも25KNと大きく重い。

写真4
写真4

 

2.接続上の注意点
1 横荷重にならないために

オーバル型のカラビナは、偏荷重が掛かると比較的横荷重になりやすい特性がある。オーバル型のカラビナを使用する場合は、横荷重防止措置を行い「外れ止めの装置がカラビナの主軸上にない」ことが必要となる。

写真5のオーバル型カラビナは、横荷重防止のために区画ピンを設置している。

写真5
写真5


写真6は、横荷重防止のためにカラビナにキャップを装着している(キャプティブ ペツル社)。

写真6
写真6


写真7は、横荷重防止のためにカラビナにパッキングを装着している。

写真7
写真7

変D型を使用する場合も、横荷重防止のためにキャップ等の装着が望ましい。

2 単独で使用できるカラビナ

写真8のペツル社のオムニ(縦荷重20KN、横荷重15KN)は、横荷重が発生しても強度が11.5KN以上ある。

写真8
写真8

 

3.安全環について
1 安全環が締まった状態で使用

締まっていない状態(オープンゲート)では強度が著しく低下する。

安全環が締まっていない状態を、赤い線が表示するカラビナもある。(写真7)。

安全環がスクリューバネとなっており、ひねって解放し離すと自動的に締まる構造のカラビナ(写真3)もある。

写真7
写真7

写真3
写真3

2 カラビナの向き

振動により安全環が緩む場合、写真9の向きの場合は環が下に落下すると締まる方向なので正当、しかし逆の場合は環が下に落下すると緩む方向となり危険となる。

写真9
写真9

 

4.カラビナもどき

次の写真は、正規のカラビナではない。

1 シャックル(写真10)

シャックルは、外れ防止がなくカラビナではなない。研修ではシャックルでハーネスとランヤードを接続しているのを2件発見した。

写真10
写真10

2 工具掛け用カラビナ(写真11)

過去にU字つりして墜落災害が多発した(図1)。

写真11
写真11

図1
図1

執筆: みなとみらい労働法務事務所 所長 菊 一 功

『フルハーネス等の基礎講座』の目次

第1章 墜落制止用器具の法改正

第2章 墜落制止用器具等の基礎知識

第3章 ハーネスの特徴

第4章 フルハーネスの使い方、使用する際の注意点

第5章 点検・保守・保管

第6章 墜落災害発生時の救助体制と延命措置

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