工具の通販モノタロウ フルハーネス等の基礎講座 その他、ランヤードに関する事項

フルハーネス等の基礎講座

高所や急傾斜など墜落のおそれがある場所で作業を行う時、危険を防止するために装備する「墜落制止用器具」。本連載では、墜落制止用器具の種類や使い方から、墜落制止用器具に関する法規まで、墜落制止用器具利用への意識を高めてもらうための基礎知識を紹介していきます。
第2章 墜落制止用器具等の基礎知識

2-7 その他、ランヤードに関する事項

1.U字つり用(図1 作業姿勢保持用)の器具

図1
図1

厳密には、墜落制止用ランヤードではない。

1 胴ベルト型用

写真1は、柱上作業用で伸縮調節器によりロープの長さの調節をする。

しかし、墜落制止用ランヤードの装備がないので、2019年2月1日以降2m以上の高さでは使用禁止となった。

写真2は、墜落制止用ランヤードも装備されているので、併用した場合に限り使用ができる。

ただし、ショックアブソーバが装備されていないので、2022年1月2日以降は使用禁止となる。

写真1
写真1

写真2
写真2

2 フルハーネス用

フルハーネス及びシットハーネスでU字つり(作業姿勢保持=ワークポジショニング)を行うためには、姿勢を保持するためのD環が両腰に2箇所必要である(写真3及び4)。

写真3
写真3

写真4
写真4

写真5は、ワークポジショニング用ロープ(CAMP社のフルハーネス用U字つりランヤード)で、伸縮調節器が付いている。

写真6は、伐採用フルハーネス用U字つりランヤードで、伸縮調節器があり、ロープ芯は鋼芯のため、誤ってチェンソーがロープに触れても容易に切断しない機能を持っている。

写真5
写真5

写真6
写真6

 

2.規格外品
1

傾斜面や足場の不安定な場所での作業で、作業姿勢を保持し墜落や滑落を防止するための個人防護器具である。

欧州 (EN)規格においては50cm(米国は60cm)以上作業者が落下する可能性がある場合は、墜落対応のフルハーネスの使用を命じている。

日本ではそのような規定はないが、宙づり状態となる場合は禁止であるので、参考とすべきである。

2 メタルフォーム用

写真7は、両腰に専用フックを備えたメタルフォーム用作業帯

写真7
写真7

3 法面用

写真8は、両腰に環を備え、ロリップに接続している。

ロリップをスライドさせることで上下移動が可能となる。

写真8
写真8

 

3.旧規格胴ベルト型を使用する場合
1

85㎏の砂のうを接続した八つ打ちロープを腰の位置に掛けた落下試験結果は、7KN(700㎏重)の衝撃荷重であった。これは、新規格の4KNを満たさない。

2

旧規格のショックアブソーバ付きランヤードは、腰の位置では4KN以下という実験結果が出ている(図2)。

図2
図2

旧規格の胴ベルト型を使用する場合は、猶予期間内でもショックアブソーバ付きを使用すべきである。

さらに、衝撃による損傷と宙づりでの耐えられない激痛を考えると胴ベルト型の限界が見えてくる。

共著「あなたの安全帯は大丈夫」(労働新聞社)から引用

 

執筆: みなとみらい労働法務事務所 所長 菊 一 功

『フルハーネス等の基礎講座』の目次

第1章 墜落制止用器具の法改正

第2章 墜落制止用器具等の基礎知識

第3章 ハーネスの特徴

第4章 フルハーネスの使い方、使用する際の注意点

第5章 点検・保守・保管

第6章 墜落災害発生時の救助体制と延命措置

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