フルハーネス等の基礎講座

高所や急傾斜など墜落のおそれがある場所で作業を行う時、危険を防止するために装備する「墜落制止用器具」。本連載では、墜落制止用器具の種類や使い方から、墜落制止用器具に関する法規まで、墜落制止用器具利用への意識を高めてもらうための基礎知識を紹介していきます。
第2章 墜落制止用器具等の基礎知識

2-2 胴ベルトの種類

1.一本つり用

(1)胴ベルトには、一本つり用の胴ベルト型墜落制止用器具とU字つり専用のワークポジショニング用具、その兼用の3種類がある(図1)。

図1
図1


(2)一本つり用とは、墜落対応(フォールアレストシステム)のことで、日本国内で一般的に使用されている。

写真1は、作業者が墜落した場合に伸びることで衝撃を緩和するストラップ式ランヤードを使用している。

写真2は、巻取り式で衝撃を緩和するショックアブソーバ付きランヤードを使用している。

写真1
写真1

写真2
写真2


(3)巻取り式ランヤードは、車のシートベルトのようにフリーでは伸縮し、衝撃でストップする形式のものは、落下距離を短くできるのがメリットである。

 

2.胴ベルト型で二丁掛け

(1)胴ベルト型で二丁掛けを行う場合は、墜落制止用のランヤードのフック等を掛け替える時のみに使用するものとして補助ロープの使用が認められる。


(2)補助ロープは、ショックアブソーバ付きランヤードが望ましいが、ランヤードでない単なるロープでもよい。

しかし補助ロープがショックアブソーバ付きでない場合、ガイドラインは作業時に一本つりとして使用できないように長さを1.3m以内に制限している。

写真3の胴ベルト型は、補助ロープにショックアブソーバがなく、1.3m以上の長さなので新規格では認められない。

写真3
写真3

 

3.U字つり専用(写真4)

U字つり専用の胴ベルトは、一本吊り・墜落対応(フォールアレストシステム)の機能がないので、新規格の墜落制止用器具としては認められず、ワークポジショニング用器具と呼ばれる。

2019年2月1日から、高さが2m以上の墜落による危険のおそれがある箇所での単独使用は禁止とされた。

写真4
写真4

 

4.U字つりと一本吊り兼用(写真5)

一本吊りランヤードとワークポジショニング用器具の双方が装備されたもので、柱上用として電気工事に従事する作業者が使用している。ロープの長さを調節する伸縮調節器(写真6)が必要である。伸縮調節器により最小限のロープの長さで使用することであれば、二丁掛けの補助ロープとしても使用できる。

写真5
写真5

写真6
写真6

 

執筆: みなとみらい労働法務事務所 所長 菊 一 功

『フルハーネス等の基礎講座』の目次

第1章 墜落制止用器具の法改正

第2章 墜落制止用器具等の基礎知識

第3章 ハーネスの特徴

第4章 フルハーネスの使い方、使用する際の注意点

第5章 点検・保守・保管

第6章 墜落災害発生時の救助体制と延命措置

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