フルハーネス等の基礎講座

高所や急傾斜など墜落のおそれがある場所で作業を行う時、危険を防止するために装備する「墜落制止用器具」。本連載では、墜落制止用器具の種類や使い方から、墜落制止用器具に関する法規まで、墜落制止用器具利用への意識を高めてもらうための基礎知識を紹介していきます。
第2章 墜落制止用器具等の基礎知識

2-6 ランヤードの種類

1.ランヤード

ランヤードは、写真1のようにベルトと親綱等の取付設備とを接続するためのロープ又はストラップ、ショックアブソーバ、フック等から構成されている。

写真1
写真1

 

2.ロープ等の種類による分類
1 ストラップ式

(1)伸びないストラップ式 (写真1)

フック+ストラップ+ショックアブソーバ+コネクタで構成されている。

(2)伸びるストラップ(ショックアブ機能付き) (写真2)

フック+ストラップ+コネクタで構成されている。
墜落時にストラップ自体が伸びることで衝撃荷重を緩和する。軽くて構造は極めてシンプルである。

写真2
写真2

 

2 撚り(より)ロープ式

イ.胴ベルト型用

2022年1月2日以降は、三つ打ちロープと八つ打ちロープのランヤードは、ショックアブソーバの装備がないと使用できない。

ロ.フルハーネス用

写真3は、欧州規格(EN規格)品の三つ打ちロープにショックアブソーバが装備されたランヤードである。

写真4
写真3

3 編み(あみ)ロープ式(写真4)

編みロープにショックアブソーバが装備されたランヤードである。

写真4
写真4

 

3.巻取り式ランヤード(写真5)
1 ロック機能

巻取り器でロック機能があるものは、墜落時には瞬時に停止するので、墜落安全距離がとれない低層で威力を発揮する。

ロック機能がないものは、墜落時にストラップの長さだけ落下するので、事前に機能を確認しておく必要がある。

いずれも長所と短所があるが、低層でフルハーネスを使用する機会が多い場合は、ロック機能付きを使用すべきである。

写真5
写真5

2 フルハーネスにダブルランヤードで装備した例

ロック機能付巻取り器を、二個装備している例もみられるが、重いのが欠点である。

二丁掛けと低層等の用途に応じて使用できるので、写真6のような二種類の装備が望ましいといえる。

写真6
写真6

 

4.新規格のランヤード
1 タイプ1ランヤード

自由落下距離1.8メートルで墜落を制止したときの衝撃荷重が4.0 KN以下である第一種ショックアブソーバを装備したランヤードである。

2 タイプ2ランヤード

自由落下距離4.0メートルで墜落を制止したときの衝撃荷重が6.0 KN以下である第二種ショックアブソーバを装備したランヤードである。

3

写真7の上段が第二種、中段が第一種、下段が旧規格のショクアブソーバである。日本ではショックアブソーバ単体での販売は現在のところ見当たらず、パッケージでランヤードとして購入することになる。

写真7
写真7

 

執筆: みなとみらい労働法務事務所 所長 菊 一 功

『フルハーネス等の基礎講座』の目次

第1章 墜落制止用器具の法改正

第2章 墜落制止用器具等の基礎知識

第3章 ハーネスの特徴

第4章 フルハーネスの使い方、使用する際の注意点

第5章 点検・保守・保管

第6章 墜落災害発生時の救助体制と延命措置

目次をもっと見る