遠心ポンプの実践講座

本連載では、基礎講座に続き遠心ポンプにスポットをあて、ポンプを構成する部品の役割からポンプの点検の仕方、トラブルとその対策まで、 より実践的な知識をご紹介していきます。遠心ポンプの基礎講座はこちら>>
第1章 ポンプの仕様

1-3 スラリーが混入するポンプ液

ここでいうスラリーとは、摩耗させる成分のことをいいます。スラリーが混入する液の場合、摩耗に対して強い構造のポンプを選定します。 また、ポンプの接液部品の形状も単純にするのがよいのですが、なかなかそうは設計できません。 構造で対応する場合は、羽根車はセミオープン形またはオープン形にします。 材料で対応する場合は、表面が硬い高クロム鋼など材料、または柔らかいゴムなどの材料を使います。構造や材料にかかわらず、ポンプの回転速度はできるだけ低くします。

また、スラリーが混入する液の場合、軸封にも注意する必要があります。軸封がグランドパッキンでもメカニカルシールでも、スラリーを含んだ液がスタフィングボックス内に入り込まないようにします。

具体的には、液が大気中に漏れても危険でないときには、グランドパッキンでもよいのですが、この場合、図1-3-1に示すように、スロートブッシュをポンプ側に入れて、外部からポンプの液に混じっても問題のない清浄な液で、 スタフィングボックス内の圧力よりも高い圧力で外部フラッシングします。このフラッシングはポンプの停止中も必要です。

メカニカルシールの場合、図1-3-2に示すように、シングル形メカニカルシールとし、スタフィングボックスに炭素製などのフローティングリングを入れて、 グランドパッキンの場合と同様に、外部からポンプの取扱液に混じっても問題のない清浄な液で、スタフィングボックス内の圧力よりも高い圧力で外部フラッシングします。ポンプの停止中も同様にフラッシングは必要です。

図1-3-1 グランドパッキン

図1-3-1 グランドパッキン


図1-3-2 シングル形メカニカルシール

図1-3-2 シングル形メカニカルシール

万一液が漏れたら危険なときには、図1-3-3に示すように、ダブル形メカニカルシールを使用します。そして、外部からポンプの液に混じっても問題のない清浄な液で、 スタフィングボックス内の圧力よりも高い圧力で外部フラッシングし、また、ポンプの停止中もフラッシングするのはシングル形メカニカルシールの場合と同じです。

どのような軸封にするかは、ポンプメーカが決めることではなく、購入者が指定する必要があります。どのような用途か、ポンプの周囲がどのような状況になっているかなどを知っているのは購入者だからです。

図1-3-3 ダブル形メカニカルシール

図1-3-3 ダブル形メカニカルシール

スラリーが混入していない液でも、条件によってはスラリーを析出することがあります。 液にせん断力が働くと結晶化してスラリーとなりポンプを摩耗させる場合、ある温度以下になると固体化する液の場合などがあります。 せん断力が働くと結晶化する液の場合、ポンプの接液部表面を研磨して液に対するせん断力を低減します。 ある温度以下になると固体化する場合には、ケーシング外表面を加温または保温して、固体化する温度に下がらないような対策が必要になります。軸封については、スラリーが混入する場合と同様です。

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの実践講座』の目次

第1章 ポンプの仕様

第2章 ポンプの構成部品と役割

第3章 ポンプの据付けと試運転

第4章 ポンプの運転

第5章 ポンプの保守点検と省エネルギー

第6章 ポンプのトラブルと対策

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