遠心ポンプの実践講座

本連載では、基礎講座に続き遠心ポンプにスポットをあて、ポンプを構成する部品の役割からポンプの点検の仕方、トラブルとその対策まで、 より実践的な知識をご紹介していきます。遠心ポンプの基礎講座はこちら>>
第1章 ポンプの仕様

1-4 高温のポンプ液

ポンプの液が低温であれば、液が気化しないように注意します。液が気化すると空気相ができ、空気は液より軽いので上方へ移動します。 ポンプの始動前に空気はポンプ内から完全に取り除く必要があるので、気化しやすい液を扱うポンプには、空気抜きが容易な立形ポンプが多く使われます。ただし、ポンプは高価格になります。

ポンプの液が高温であれば、軸受、スタフィングボックスおよびペデスタルを冷却する必要がある場合があります。何℃以上から冷却が必要になるかは、ポンプメーカによって基準が異なっています。 購入者からみれば冷却はしない方がよく、ポンプメーカからみればポンプを安全に運転するために冷却を推奨したくなります。

ポンプメーカによって水冷基準が異なっているのは事実ですが、他社でできないほどの「高温の液まで非水冷でできます」というポンプメーカがあったとしても、使用している材料にとっては過酷な条件になるので、まず使用実績やメンテナンス期間などを確認することを推奨します。

次に、冷却が必要な場合の水冷構造を示します。軸受ハウジングの水冷構造を図1-4-1に示します。同図において、軸受ハウジングの外周に水冷室カバーを取り付けて、水冷ジャケットを形成します。そして、図1-4-2に示す水冷配管を付属して冷却水を供給します。 この配管系統を図1-4-3に示します。 水冷ジャケットへの冷却水は、水冷ジャケットの下側から入れて上方から戻します。 スタフィングボックスの水冷構造は、図1-4-4に示すように、ケーシングカバーを使って水冷ジャケットを形成します。水冷配管などは、軸受ハウジングの水冷と同様です。 また、軸受ハウジングとスタフィングボックスの両方を水冷する必要がある場合には、図1-4-3に示す冷却水入口および冷却水出口は、それぞれ1個所とし、配管で分岐してそれぞれに冷却水を供給します。

図1-4-1 軸受ハウジングの水冷構造

図1-4-1 軸受ハウジングの水冷構造

図1-4-2 水冷配管例

図1-4-2 水冷配管例

図1-4-3 水冷配管系統

図1-4-3 水冷配管系統

図1-4-4 スタフィングボックスの水冷構造

図1-4-4 スタフィングボックスの水冷構造

軸受ハウジングでは、転がり軸受やすべり軸受のサイズが大きかったり回転速度が高かったりすると、摩擦損失が大きくなるために、液温が低くても水冷することがあります。

中東など冷却水がない場合には、図1-4-5に示すような「ファンクーリング」で軸受ハウジングを空冷することがあります 。家庭で使う扇風機のような羽根をポンプの主軸端に付けて、その外周にファンカバーを設けます。 空気は同図の左側から吸い込まれ、ファンカバーを案内にして軸受ハウジングの外周を冷却します。

また「ファンクーリング」は、本来不要である場合にも、軸受寿命を延ばすため、潤滑油の交換期間を延ばすためなどに使用することがあります。

図1-4-5 ファンクーリング

図1-4-5 ファンクーリング

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの実践講座』の目次

第1章 ポンプの仕様

第2章 ポンプの構成部品と役割

第3章 ポンプの据付けと試運転

第4章 ポンプの運転

第5章 ポンプの保守点検と省エネルギー

第6章 ポンプのトラブルと対策

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