工具の通販モノタロウ ポンプ・送風機・電熱機器 遠心ポンプの実践講座 ポンプのケーシングによるラジアルスラスト

遠心ポンプの実践講座

本連載では、基礎講座に続き遠心ポンプにスポットをあて、ポンプを構成する部品の役割からポンプの点検の仕方、トラブルとその対策まで、 より実践的な知識をご紹介していきます。遠心ポンプの基礎講座はこちら>>
第2章 ポンプの構成部品と役割

2-3 ポンプのケーシングによるラジアルスラスト

ケーシングのボリュート形状によって、羽根車に作用するラジアルスラストが変わるのですが、それでは、どのようにしてラジアルスラストが分かるのでしょうか。

ラジアルスラストは、表2-3-1に示す計算式で計算することができます。ラジアルスラストFは、液の密度ρ、全揚程H、羽根車直径D2、羽根車出口の全幅Bに比例します。 つまり、全揚程及び吐出し量が大きくなればなるほど、ラジアルスラストFが大きくなります。また、ラジアルスラストFは、スラスト係数Kにも比例します。

表2-3-1 ラジアルスラスト

表2-3-1 ラジアルスラスト

では、スラスト係数Kはどうなるのでしょうか。表2-3-2にシングルボリュートの場合のスラスト係数Kを示します。同表にあるように、スラスト係数Kは2種類提唱されています。 ステパノフによるスラスト係数K(s)及びHIS(米国Hydraulic Institute Standards)による係数K(HIS)です。 どちらもポンプの運転点によって変わるのですが、図2-3-1に示すように、最高効率点の吐出し量QBEPのとき0になり、吐出し量が小さくなるに従って大きくなります。そして、吐出し量が0で最大になります。


表2-3-2 スラスト係数

図2-2-2 ダブルボリュート
図2-3-1 ラジアルスラスト

図2-3-1 ラジアルスラスト

次に、ダブルボリュートのときのラジアルスラストですが、ダブルボリュートはボリュートを2つにして180°対称にし、両者のボリュートでラジアルスラストをつり合わせることを狙っています。 しかし、実際には2個のボリュートの後流部が対称でないことと、製造した鋳物のズレ及び加工の時の心出しのズレとから、完全につり合わせることができず、シングルボリュートの25 %ほどになると推定されています。

ディフューザは、ダブルボリュートよりも更にボリュート数を増やしているので、ラジアルスラストをかなりつり合わせることができます。 しかし、完全につり合わせることができないのはダブルボリュートと同じで、ダブルボリュートの25 %ほどになると推定されています。

多段ポンプでは、各段のケーシングをシングルボリュートにして、隣同士のケーシングを180°対称に組み立てることによって、ラジアルスラストを相殺させるという設計方法があります。 また、単段ポンプでは、ボリュートにしないで単純な円形にしたものもあります。これは小流量側でラジアルスラストが小さくなることを利用した設計方法です。

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの実践講座』の目次

第1章 ポンプの仕様

第2章 ポンプの構成部品と役割

第3章 ポンプの据付けと試運転

第4章 ポンプの運転

第5章 ポンプの保守点検と省エネルギー

第6章 ポンプのトラブルと対策

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