工具の通販モノタロウ ポンプ・送風機・電熱機器 遠心ポンプの実践講座 ポンプの羽根車によるアキシャルスラスト

遠心ポンプの実践講座

本連載では、基礎講座に続き遠心ポンプにスポットをあて、ポンプを構成する部品の役割からポンプの点検の仕方、トラブルとその対策まで、 より実践的な知識をご紹介していきます。遠心ポンプの基礎講座はこちら>>
第2章 ポンプの構成部品と役割

2-6 ポンプの羽根車によるアキシャルスラスト

2-6 ポンプの羽根車によるアキシャルスラスト

ポンプの運転中には、羽根車に半径方向に作用するラジアルスラストの他に、軸方向にアキシャルスラストが作用します。羽根車のアキシャルスラストは、羽根車の吸込側と反吸込側の圧力差によって生じます。

羽根車のアキシャルスラストを羽根車自体によって低減して、アキシャル軸受の負担を軽減するために、バランスホール、片ライナ、裏羽根、羽根車の背面合わせなどの方法が採用されています。それでは、これら4つの方法について、どのようにしてアキシャルスラストを低減するか説明します。

  • 2-6-1羽根車のアキシャルスラスト-バランスホール
  • D1:羽根車直径
  • D2:側板側ライナ直径
  • D4:主板側ライナ直径
  • D5:軸スリーブ直径
  • F1:側板側アキシャルスラスト(D1-D2間)
  • F4:主板側アキシャルスラスト(D1-D4間)
  • F5:主板側アキシャルスラスト(D4-D5間)

そして、D2=D4と設計すると、F1=F4となり、アキシャルスラストはF5だけになります。

図2-6-1 バランスホール付き羽根車

図2-6-1 バランスホール付き羽根車

ここで羽根車を出て吸込側に還流する流れを考えてみます。図2-6-2に示すように、羽根車を出た昇圧された液は主板側及び側板側のライナ部を通過して吸込側へ還流します。 バランスホールは主板に設けるので、同図の「流れI」に示すように、主板側の流れはライナ部を通過し、バランスホールを経由して低圧である吸込側へ還流します。ここで重要なことはライナ部の半径すき間の断面積ALYとバランスホール総数の断面積ABHの関係です。アキシャルスラストF5を最小にするためには、

ABH ≧5xALY

にする必要があります。

図2-6-2 主板側及び側板側の還流

図2-6-2 主板側及び側板側の還流

2-6-2 羽根車のアキシャルスラスト-片ライナ

吸込圧力が0でなく高圧の場合、できるだけアキシャルスラストを低減するために、図2-6-3に示すように、主板側のライナ部をなくした片ライナの羽根車にします。 この羽根車にはバランスホールは付けません。同図において、F3は吸込圧力によるアキシャルスラストですが、同図にある主板側アキシャルスラストF4を大きくすることによって結果的にアキシャルスラストを低減しているのです。

図2-6-3 片ライナ形羽根車

図2-6-3 片ライナ形羽根車

2-6-3 羽根車のアキシャルスラスト-裏羽根

アキシャルスラストを低減する方法の3つ目です。図2-6-4に示すように、主板に羽根車の翼と反対の位置に裏羽根と称するものを羽根車に一体で取り付けます。裏羽根の形状はラジアルベーンか曲線にします。 同図において、吸込圧力が0として、F1は羽根車前面に作用するアキシャルスラスト、F4は裏羽根がないとした時の側板側に作用するアキシャルスラスト、F6は裏羽根が発生する圧力によるアキシャルスラストを示します。F4とF6はアキシャルスラストの方向が逆になるので、結果的にアキシャルスラストを低減しているのです。

図2-6-4 セミオープン形裏羽根付き羽根車

図2-6-4 セミオープン形裏羽根付き羽根車

2-6-4 羽根車のアキシャルスラスト-羽根車の背面合わせ

羽根車を背面合わせに配列してアキシャルスラストを低減する方法です。羽根車は図2-6-3に示す片ライナ形羽根車で、多段ポンプに適用されます。図2-6-5は6段のポンプの例ですが、羽根車を3個ずつ背面になるように配列するので、アキシャルスラストの方向が逆になって、アキシャルスラストを低減しているのです。

図2-6-5 図2-6-5 背面合わせ配列の羽根車

図2-6-5 背面合わせ配列の羽根車

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの実践講座』の目次

第1章 ポンプの仕様

第2章 ポンプの構成部品と役割

第3章 ポンプの据付けと試運転

第4章 ポンプの運転

第5章 ポンプの保守点検と省エネルギー

第6章 ポンプのトラブルと対策

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