遠心ポンプの実践講座

本連載では、基礎講座に続き遠心ポンプにスポットをあて、ポンプを構成する部品の役割からポンプの点検の仕方、トラブルとその対策まで、 より実践的な知識をご紹介していきます。遠心ポンプの基礎講座はこちら>>
第4章 ポンプの運転

4-4 ポンプへの空気の侵入防止

ポンプや配管の内圧が大気圧力より低い場合、ポンプや配管内に空気が外部から侵入することがあります。ポンプの吐出し側は、一部の軸流ポンプを除き、このような負圧になることはありません。 しかし、吸込側は負圧になることがよくあります。 吸込側から空気を吸い込むと、羽根車の入口を塞ぐエアーロックという現象を起こしたり、ポンプの吐出し量や全揚程が不足したり、振動や騒音が高くなったりという問題が発生します。

このような問題が起こった場合、空気を吸い込んでいることが原因なのか他に原因があるのか、原因を特定することは容易ではありません。少なくとも、原因になり得る要素はできるだけ少ない方がよいのです。そのため、ここではポンプの吸込配管から空気を吸い込まないための方法について紹介します。

例として図4-4-1に示す吸上げの吸込配管で、最下端にフート弁が付いた場合を考えてみます。鋼管と継手の締結部は「ねじ込み」、「ねじ込み+シール溶接」、「ソケット溶接」などがあります。フート弁は液中にあるので、ねじ部が緩んでも脱落しないかぎりはさほど問題はありません。

図4-4-1 吸上げの吸込配管

図4-4-1 吸上げの吸込配管

まず、「ねじ込み」の場合を図4-4-2に示します。ポンプの運転中に、仮にねじ込み部から空気を吸い込んでいるとすれば、ねじ込み個所をさらにきつく締め込むために、増締めします。 そうすると、図4-4-2の〝A″から見た図4-4-3に示すように、立配管が垂直にならないことに加え、ポンプの吸込ノズルに接続するフランジも穴が合わなくなって、再取付けが困難になります。

図4-4-2 ねじ込み配管

図4-4-2 ねじ込み配管

図4-4-3 増締め後の配管

図4-4-3 増締め後の配管

それでは、図4-4-4に示すように、ねじ込んだ後にねじ込み部を図4-4-5に示すシール溶接をしたらどうでしょうか。溶接したからには緩む心配はないので、増締めは不要です。 しかし、ねじ部が完全に密封されているかどうか少し心配が残ります。ねじを使わないで溶接する方法が、図4-4-6に示す「ソケット溶接」です。この方法はねじ部がなく、鋼管の外周とエルボなどの端面を完全に密封できるので信頼性が高くなります。

図4-4-4 「ねじ込み+シール溶接」配管

図4-4-4 「ねじ込み+シール溶接」配管

図4-4-5 シール溶接

図4-4-5 シール溶接

図4-4-6 ソケット溶接

図4-4-6 ソケット溶接

吸込圧力が5 torrのような高真空になる場合、図4-4-7に示すように、フランジ同士のシールにシートパッキンを使っていると、そこから空気を吸い込む恐れがあります。 配管を修正できないときに苦肉の策として、フランジ同士の外側と側面全周にガムテープ(商品名)を巻くと少しは効果があるのですが、確実ではありません。 このような高真空では、耐食性や液温などにおいてOリングが使用可能であれば、図4-4-8に示すように、どちらかのフランジ面にOリング溝を加工してOリングでシールする方法があります。 Oリングが使用できなければ、図4-4-7に示すシートパッキンに替えて、渦巻ガスケットを使用することになります。

図4-4-7 シートパッキンによるシール

図4-4-7 シートパッキンによるシール

図4-4-8 Oリングによるシール

図4-4-8 Oリングによるシール

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの実践講座』の目次

第1章 ポンプの仕様

第2章 ポンプの構成部品と役割

第3章 ポンプの据付けと試運転

第4章 ポンプの運転

第5章 ポンプの保守点検と省エネルギー

第6章 ポンプのトラブルと対策

目次をもっと見る

『配管・水廻り部材/ポンプ/空圧・油圧機器・ホース』に関連するカテゴリ

『ポンプ・送風機・電熱機器』に関連するカテゴリ