遠心ポンプの実践講座

本連載では、基礎講座に続き遠心ポンプにスポットをあて、ポンプを構成する部品の役割からポンプの点検の仕方、トラブルとその対策まで、 より実践的な知識をご紹介していきます。遠心ポンプの基礎講座はこちら>>
第6章 ポンプのトラブルと対策

6-4 ポンプトラブルの経済的原因

国内では昔、ポンプの売上げは経済成長率並みで、伸びは緩やかだが落ち込みはないと言われていました。作れば売れる時代だったのです。また、ポンプを納入後、予備品や修理などの受注も大いに期待できました。

しかし、様変わりしました。グローバル化により、ポンプビジネスも好むと好まざるとにかかわらず、外部の経済環境を無視できない時代に入ってきました。得意先の業種によっては、苦しい経営を強いられているポンプメーカもあります。

ポンプは一般には機能に対して質量の比率が高い機械です。現在、材料の価格が上昇しています。そのうち、また下がるかもしれませんが、相場に振り回されると不安定な経営に陥ります。材料費を縮減することを真剣に考えるときが到来したように感じます。 トラブルの原因として先に述べた技術的原因及び人的原因は、経済的原因と比較すると、さほど経済環境の影響は受けません。

それでは、トラブルの経済的原因には、表6-4-1に挙げて説明します。

表6-4-1 経済的原因

(1)納期厳守 (2)赤字受注 (3)コストダウン
(4)低価格材料使用 (5)為替レート変動  
1:納期厳守

契約時に決まった納期は厳守するのが当然です。輸出の場合、納期が遅れると罰金を支払うという契約になるのが一般的です。しかし、出荷前にトラブルが発生すると、輸出の場合は船便も決まっていますから、徹夜で対応するなど切羽詰った状態になります。 もちろん、納期を守られないトラブルが発生した場合には、顧客と納期遅れの交渉をすることになります。

2:赤字受注

本来赤字で受注しないほうがいいのですが、商売ですから赤字受注のときもあります。特に工場の生産能力に対して受注量が少ないときに、赤字でも受注することを検討します。そして、赤字で受注したときは、製造原価を下げる手段を講ずる必要があります。

3:コストダウン

既に設計が完成した標準化されたポンプでも、競合メーカと価格の差があると、コストダウンを検討する必要が出てきます。コストダウンにおいては、機能を低下させないで製造原価を下げるための検討をするので、経験のない構造変更などが伴います。

4:低価格材料使用

赤字受注やコストダウンの場合以外に、利益率を向上させるために、製造原価を下げる努力をすることは当然です。国内でも海外でも、同じ部品を安く製造できるところがあれば、発注先の変更を検討します。それには、発注前に試作していただいたりして、品質や納期の検証が必須です。

5:為替レート変動

国内では「円」で受注しますが、輸出は一般に「米ドル」で受注します。為替レートの変動リスクを少しでも低減するために、海外生産などを検討します。

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの実践講座』の目次

第1章 ポンプの仕様

第2章 ポンプの構成部品と役割

第3章 ポンプの据付けと試運転

第4章 ポンプの運転

第5章 ポンプの保守点検と省エネルギー

第6章 ポンプのトラブルと対策

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