遠心ポンプの基礎講座

電力、自動車、建設機械、鉄鋼、化学、食品など、多くの産業分野において使用されている「ポンプ」。
本連載では遠心ポンプにスポットをあてて、ポンプの種類、またポンプで使われる記号や圧力計の読み方などの豆知識まで、さまざまな事項をご紹介していきます。
遠心ポンプの実践講座はこちら>>
第5章 知っておきたいポンプの技術

5-12 ポンプの保護装置

ポンプの保護装置には、異常を引き起こさないためにあらかじめ設けるミニマムフローラインがあり、また、機能の異常を検知してポンプを停止するために、振動計、温度計、漏洩検知器などの機器があります。まず、主な保護装置を次に列記します。

a.ミニマムフローライン

ポンプには運転できる最小吐出し量があります。この最小吐出し量のことを、通常ミニマムフローと呼んでいます。ミニマムフローラインはポンプの吐出し側に配管し、ミニマムフロー以下の運転を避けることができます。 具体的な方法として、「常時逃がし配管」と「ミニマムフロー弁」があります。 「常時逃がし配管」はポンプの運転中、常にミニマムフローの吐出し量を吸込タンクなどの低圧部に戻します。この量はポンプの損失になります。 「ミニマムフロー弁」は、ポンプの運転している吐出し量がミニマムフロー以下になったときにだけ弁が開いて、ミニマムフロー以上の吐出し量でポンプを運転します。したがって、「常時逃がし配管」と比べ、損失は激減します。

b.振動検知器

振動で問題になるのは軸受です。振動検知器は、軸受の異常な振動を検知します。また、振動検知器にモニターを付加すると、軸受の振動を常時監視することができます。回転速度が1450min-1以上の場合は振動速度、それより低い回転速度の場合には振幅を検知するのが一般的です。

c.温度検知器

軸受や取扱液の異常な温度上昇を検知します。

d.吸込圧力検知器

NPSHAが低下しないように、吸込圧力の異常な低下を検知します。

e.吐出し圧力検知器

吐出し圧力の異常な上昇を検知します。また、タービン駆動のとき、ポンプの回転速度の異常な上昇を検知します。

f.メカニカルシール漏れ検知器

液の漏れそのものを検知する場合と、メカニカルシールのように漏れた液をリザーバタンクに取り込んで、圧力スイッチやレベルスイッチで間接的に検知する場合とがあります。

g.満液検知器

ポンプの始動前に、ポンプ内に液が充満していることを検知します。

h.安全弁

吐出し圧力が異常に高くなったときに、その高圧の液を吸込タンクなどに逃がすときに使います。

i.空転防止リレー

ポンプの始動前にポンプ内に液が充満していないで始動した場合に、それを検知します。

j.フローリレー

フラッシング液や冷却水が流れていないことを検知します。

5-12-2 保護装置は必要か

ポンプに保護装置が必要かどうかの答えはありません。つまり、保護装置が必要かどうかという基準はありません。しかし、次のことを考えて要否を決めるのがよいと考えます。

  • a.ポンプの重要度
  • b.停止したときの生産に与えるリスクの大小
  • c.ポンプメーカの在庫状況
  • d.復旧させるために必要な時間
  • e.保守契約を結んでいるか
  • f.予備機を設置しているか
執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの基礎講座』の目次

第1章 ポンプの基礎

第2章 ポンプの豆知識

第3章 ポンプの性能

第4章 ポンプの選定

第5章 知っておきたいポンプの技術

目次をもっと見る

『配管・水廻り部材/ポンプ/空圧・油圧機器・ホース』に関連するカテゴリ

『ポンプ・送風機・電熱機器』に関連するカテゴリ