遠心ポンプの基礎講座

電力、自動車、建設機械、鉄鋼、化学、食品など、多くの産業分野において使用されている「ポンプ」。
本連載では遠心ポンプにスポットをあてて、ポンプの種類、またポンプで使われる記号や圧力計の読み方などの豆知識まで、さまざまな事項をご紹介していきます。
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第1章 ポンプの基礎

1-7 国内のポンプ生産

ポンプがどのぐらい生産されているのかを見てみましょう。経済産業省はホームページに、国内におけるポンプ形式別の生産台数及び生産金額の統計を公表しています。そして、生産金額は販売金額と同じ金額だとしています。

この統計を使って、1985年から年別にポンプ全体の生産台数の推移を図1-7-1に、生産金額の推移を図1-7-2にそれぞれ示します。 ポンプ全体の生産台数は、図1-7-1に示すように、概ね600万台で推移してきて、最近は400万台になっています。また、生産金額は図1-7-2に示すように、3000億円から4000億円の間で比較的安定しています。

図1-7-1:国内におけるポンプ形式別の生産台数

図1-7-1:国内におけるポンプ形式別の生産台数


図1-7-2:国内におけるポンプ形式別の生産金額

図1-7-2:国内におけるポンプ形式別の生産金額

ポンプの形式別ではどうでしょうか。経済産業省のデータを、遠心ポンプなどの「ターボ形ポンプ」、ギヤポンプなどの「容積形ポンプ」及び「それら以外のポンプ」の3つに分類して年別にまとめ、 生産台数を図1-7-1に、生産金額を図1-7-2にそれぞれ示します。「ターボ形ポンプ」は生産台数ではポンプ全体の約5割ですが、生産金額では6割を超えています。

また、「ターボ形ポンプ」である単段ポンプ及び多段ポンプ、「容積形ポンプ」であるギヤポンプ及びピストンポンプの4種類の形式について、生産金額を生産台数で割った平均生産金額を図1-7-3に示します。ポンプの形式別では、平均生産金額は1万円台から41万円台と大きく異なっています。

図1-7-3:国内におけるポンプ形式別の平均生産金額

図1-7-3:国内におけるポンプ形式別の平均生産金額

このことは何を意味するのでしょうか。例えば、ターボ形ポンプは1台数千円のものから1台数億円、ギヤポンプでも1台数千円のものから1台数千万円と 1台当たりの生産金額には大きな差があります。しかし、平均生産金額から見れば、ターボ形ポンプは1台の金額が高いのでポンプそのものは修理して長期間使用し、 ギヤポンプは調子が悪くなったときに修理にお金を使うよりは、新品を購入するほうがはるかに安くなります。

さて、毎年400万台ものポンプが国内で生産されているのですが、一体これらのポンプはどこで使われているのでしょうか。 例えば、ボタンを押すと飲料が出てくる自動販売機では、ギヤポンプが中に設置されています。 化学工場や石油精製所では、タンクや配管が目立ちますが、ポンプは目立ちません。じっくりとポンプを探すと配管中に確かにポンプがあります。 ポンプは、電力、自動車、建設機械、船舶、鉄鋼、石油精製、石油化学、化学、食品、パルプ、医療など、国内外のほとんどの産業分野において、各産業をしっかりと支えています。

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの基礎講座』の目次

第1章 ポンプの基礎

第2章 ポンプの豆知識

第3章 ポンプの性能

第4章 ポンプの選定

第5章 知っておきたいポンプの技術

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