遠心ポンプの基礎講座

電力、自動車、建設機械、鉄鋼、化学、食品など、多くの産業分野において使用されている「ポンプ」。
本連載では遠心ポンプにスポットをあてて、ポンプの種類、またポンプで使われる記号や圧力計の読み方などの豆知識まで、さまざまな事項をご紹介していきます。
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第1章 ポンプの基礎

1-3 ポンプの概況3

引き続き、遠心ポンプについて、主なものを取りあげて概況を説明します。

1-3-1 多段ポンプ

単段ポンプでは圧力が足りない場合、羽根車数を多くした多段ポンプを使用します。ここでは、輪切り多段ポンプ、水平割り多段ポンプ及び二重胴多段ポンプの3種類に分けて紹介します。

輪切り多段ポンプは、各ケーシングが軸と直角方向に割れていて、輪を重ね合わせた形になっているので、「リングセクション」とも呼ばれています。外側のボルトでこれらのケーシングを一括して押さえています。

水平割り多段ポンプは、ケーシングが軸中心で横水平に2つ割りになっているので、ポンプを分解するのが容易です。多段ポンプでは、分解及び組立のしやすさやそれに要する時間が問題になることがありますが、この問題に対しては水平割り多段ポンプは最善の多段ポンプになります。

二重胴多段ポンプは、ポンプの中に輪切り多段ポンプが格納されていて、その外側にさらに外胴があるので、二重胴多段ポンプと呼ばれています。 また、ポンプの中に水平割り多段ポンプが格納される場合もあります。ポンプの外観は、外胴しか見えないので単純な円筒状になります。 外胴があるために、仮に内側のポンプから液が漏れても、ポンプの外に液が漏れる心配はありません。そのため、1000 MW級の火力発電所や原子力発電所などのボイラ給水ポンプに使用されています。

1-3-2 高比速度ポンプ

遠心形ポンプより比速度が大きいポンプを高比速度ポンプと呼ぶことがあります。斜流ポンプ及び軸流ポンプが高比速度ポンプに該当します。

斜流ポンプは吐出し量が多いのですが、全揚程が低いので、羽根車は主軸方向に対して斜めの流れを作ります。ポンプの外観は、「かたつむり」のように「ずんぐり」しています。

軸流ポンプは、液を主軸の方向に流すので、さほど全揚程が高くなく、羽根車の形状は家庭で使う扇風機の羽根のようになっています。

これらのポンプは、田畑のかんがい、洪水対策などに使用されますが、遠心形ポンプと比較して需要は極めて少ないポンプです。

1-3-3 立形ポンプ

立形単段ポンプは、鉛直方向に吊り下げられた状態で設置されます。羽根車は最下端にあります。そして、下部は液の中に埋没していて、液を真下から吸込み地上部の吐出し口から吐き出します。モータは最上部に取り付けます。

立形多段ポンプは、地上部に設置され、ポンプの吸込ノズルも吐出しノズルも地上部にあります。モータが最上部に取り付けられるのは、立形単段ポンプと同じです。

1-3-4 水中モータポンプ

水中モータポンプは、モータとポンプが一体になった構造で液中に埋設されます。吸い込まれた液は、ポンプの吐出しノズルから配管を介して地上へ吐き出されます。

深井戸用水中モータポンプは、温泉水や地下水を汲み上げるときによく使用されています。このポンプを設置するためには、地中にいわゆる井戸を掘る必要があります。そして、井戸径をできるだけ小さくするために、ポンプとモータの外径が小さくなるように設計されています。

水中モータポンプには他に、下水中継用に使用される汚水用水中モータポンプもあります。このポンプは下水に入り込む異物がポンプ内に詰まらないように、工夫された設計になっています。

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの基礎講座』の目次

第1章 ポンプの基礎

第2章 ポンプの豆知識

第3章 ポンプの性能

第4章 ポンプの選定

第5章 知っておきたいポンプの技術

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