工具の通販モノタロウ 遠心ポンプの基礎講座 ポンプの性能曲線と運転点の関係

遠心ポンプの基礎講座

電力、自動車、建設機械、鉄鋼、化学、食品など、多くの産業分野において使用されている「ポンプ」。
本連載では遠心ポンプにスポットをあてて、ポンプの種類、またポンプで使われる記号や圧力計の読み方などの豆知識まで、さまざまな事項をご紹介していきます。
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第5章 知っておきたいポンプの技術

5-11 ポンプの性能曲線と運転点の関係

ポンプは独自に自由に運転点を決めることはありません。ポンプには吸込配管及び吐出し配管が必要です。この配管が細かったり太かったり、 長かったり短かったり、曲管が多かったり少なかったり、弁などを含めたこれらの配管系の全抵抗で運転点が自動的に決まります。全抵抗は弁の開度を変えたりして、人が操作することはできます。

それでは、ポンプの運転点がどのように決まるのかを説明します。

5-11-1 配置

例えば、図5-11-1に示すような配置の場合、吸込タンクから吸込弁を通過して取扱液がポンプに流入します。そして、吐き出された液は、逆止弁、吐出し弁及び流量計を通過して吐出しタンクに到達します。

  • 記号の説明:
  • Ha:実揚程(吐出しタンクと吸込タンクの液面高さの差)
  • Δhs:吸込配管の損失水頭
  • Δhd:吐出し配管の損失水頭
図5-11-1 配置

図5-11-1 配置

5-11-2 性能曲線と運転点の関係

ポンプの吐出し量に対して、全揚程及び効率が、図5-11-2に示すようなポンプについて説明します。

  • 記号の説明:
  • O:吐出し量零(0)で全揚程零(0)、つまり、ポンプが停止しているとき
  • OA:実揚程Ha
  • B:締切全揚程
  • ADC、AFE:配管抵抗曲線(それぞれ、ΔhsとΔhdの総和であり、吐出し量の2乗に比例して増加します。)
  • D、F:ポンプの運転点

ポンプを始動して運転点に到達するルートは、吐出し弁が開いているか閉じているかで異なります。

図5-11-2 ポンプの性能曲線と運転点

図5-11-2 ポンプの性能曲線と運転点

a.吐出し弁が全開のとき
ルート:O → A → D

ア.O → A:ポンプを始動してポンプの回転速度が定格回転速度に達する前に、全揚程が実揚程Haになった時点で、液が吸込側から吐出し側へ流れ始めます。

イ.A → D:ポンプの回転速度が徐々に増加していくので、吐出し量及び全揚程が徐々に増加していきます。回転速度が定格回転速度に到達すると、運転点Dを保持します。

b.吐出し弁が少し開いているとき
ルート:O → A → F

ア.O → A:ポンプを始動してポンプの回転速度が定格回転速度に達する前に、全揚程が実揚程Haになった時点で、液が吸込側から吐出し側へ流れ始めます。

イ.A → F:ポンプの回転速度が徐々に増加していくので、吐出し量及び全揚程が徐々に増加していきます。回転速度が定格回転速度に到達すると、運転点Fを保持します。

c.吐出し弁が全閉のとき
ルート:O → A → B

ア.O → A:ポンプを始動してポンプの回転速度が定格回転速度に達する前に、締切全揚程が実揚程Haになっても、吐出し弁が全閉のため、吐出し量は零(0)のままです。

イ.A → B:ポンプの回転速度が徐々に増加して定格回転速度に到達すると、締切全揚程に達します。そして、吐出し弁を少しずつ開いていくと、運転点はFに移り、全開になると運転点Dに達します。

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの基礎講座』の目次

第1章 ポンプの基礎

第2章 ポンプの豆知識

第3章 ポンプの性能

第4章 ポンプの選定

第5章 知っておきたいポンプの技術

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