工具の通販モノタロウ 遠心ポンプの基礎講座 ポンプの特性を表す比速度

遠心ポンプの基礎講座

電力、自動車、建設機械、鉄鋼、化学、食品など、多くの産業分野において使用されている「ポンプ」。
本連載では遠心ポンプにスポットをあてて、ポンプの種類、またポンプで使われる記号や圧力計の読み方などの豆知識まで、さまざまな事項をご紹介していきます。
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第2章 ポンプの豆知識

2-4 ポンプの特性を表す比速度

2-4-1 比速度 Ns の意義

遠心ポンプにおいて、特性を表わすための値として、吐出し量、全揚程、効率、回転速度、NPSH3などがあります。 吐出し量、全揚程及び回転速度の数値によって、ポンプの大きさや形状はいろいろと変わります。 したがって、一つの特性数を用いて、ポンプの特性や形状を表すことができれば、性能評価、性能予測、比例設計などに利用でき、非常に便利になります。

そこで、ポンプの相似則から、比速度Nsという特定数が導入されるようになりました。比速度Nsは次式で表しますが、無次元数ではなく単位を持った特定数です。

図3 ねじの条数

ここに、Q:吐出し量(m³/min)、H:全揚程(m)、N:回転速度(min-1)であり、最高効率点の値を用います。

多段ポンプの場合には全揚程H は1段当たりの全揚程、両吸込形羽根車の場合には吐出し量Q を半分にして計算します。

2-4-2 比速度 Ns による羽根車の形状

図2-4-1に示す形状が異なる3種類の羽根車について、Ns がどうなるかを見てみましょう。

図2-4-1 羽根車の形状

図2-4-1 羽根車の形状

表2-4-1:羽根車の諸寸法

羽根車 羽根車直径 出口幅 目玉外径 目玉内径
A D2A B2A DSA dnA
B D2B B2B DSB dnB
C D2C B2C DSC dnC

図2-4-1にある諸寸法を表2-4-1に示す記号として、羽根車を次のように設計します。

π・D2A・B2A= π・D2B・B2B=π・D2C・B2C
DSA=DSB=DSC
dnA=dnB=dnC

こうすることによって、最高効率点(BEP=Best Efficiency Pointという)の吐出し量Qを同一にすることができ(厳密に言うとNs によって少し異なります) 、 また全揚程H は羽根車直径の2乗に比例するので、3種類のうち、いずれかの性能が判っていれば、そのほかの性能は予想できます。

羽根車Aの寸法と性能を表2-4-2の値として、かつ、羽根車Bと羽根車Cの羽根車直径と出口幅を表2-4-2の値で設計すると、同表のような性能が予想されます。 そして、Ns を計算すると、羽根車Aは123、羽根車Bは189、羽根車Cは347になります。

表2-4-2:ポンプの性能

  羽根車直径(mm) 出口幅(mm) Q@BEP(m³/min) H@BEP(m) N(min-1) Ns@BEP
A 240 7.5 1.167 77 2950 123
B 180 10 1.167 43.3 2950 189
C 120 15 1.167 19.3 2950 347

先に、厳密に言うとNs によって吐出し量Qは少し異なると書きました。その理由は次によります。

・ポンプの性能は、羽根車だけで決まるのではなく、ケーシングの設計によって変わる。

・羽根車の翼長さはNs が大きいほど短くなる。

・円板摩擦損失及び体積効率がNs によって変わる。

さて、図2-4-1に示す羽根車のNsが左から123、189、347になりましたが、図2-4-2にNsが100から1500の羽根車の形状を参考に示します。 Nsによって、ポンプの形式を図2-4-3にあるように、遠心、斜流及び軸流と分けて呼ぶことがあります これら3種類の区分けは、Nsを厳密に「いくら」と規定してはいません。最後に、図2-4-4に羽根車の外観を示します。

図2-4-2:Nsごとの羽根車の形状

図2-4-2:Nsごとの羽根車の形状


図2-4-3:ポンプの形式

図2-4-3:ポンプの形式


図2-4-4:羽根車の外観

図2-4-4:羽根車の外観

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの基礎講座』の目次

第1章 ポンプの基礎

第2章 ポンプの豆知識

第3章 ポンプの性能

第4章 ポンプの選定

第5章 知っておきたいポンプの技術

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