工具の通販モノタロウ 遠心ポンプの基礎講座 ポンプで使用する記号

遠心ポンプの基礎講座

電力、自動車、建設機械、鉄鋼、化学、食品など、多くの産業分野において使用されている「ポンプ」。
本連載では遠心ポンプにスポットをあてて、ポンプの種類、またポンプで使われる記号や圧力計の読み方などの豆知識まで、さまざまな事項をご紹介していきます。
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第2章 ポンプの豆知識

2-1 ポンプで使用する記号

ポンプの特性や仕様を指定するときに、一般に使用されている用語の代りに、よく記号を使っています。 記号は、たとえばポンプの購入者とポンプメーカの設計者との間で、仕様などの連絡をし合うときに便利です。 JIS B 0131では、これらの記号を規格にしていますが、国際的な規格がないために、どれが正しいということはできません。 ポンプの特性には、吐出し量、全揚程、効率、回転速度、NPSH3などがあり、それぞれ次の記号を使用します。

特性 吐出し量 全揚程 効率 回転速度 NPSH3
記号 Q H η N NPSH3

これらの他に、特に海外では、吐出し量はCAP.、全揚程はTH、効率はE、回転速度はRPM、NPSH3はNPSHRなどを使用することもあります。また、回転速度は回転数と言われることもあります。

ポンプの仕様では、取扱液の特性として飽和蒸気圧力、密度、粘度などがあり、運転条件として液温、吸込圧力、規定吐出し量、規定全揚程、吐出し圧力、NPSHAなどがあります。そして、それぞれ次の記号を使います。

特性 飽和蒸気圧力 密度 動粘度 液温 吸込圧力 規定吐出し量 規定全揚程 吐出し圧力 NPSHA
記号 Pvp ρ ν t Ps Qr Hr Pd NPSHA

これらの他に、飽和蒸気圧力はPv、密度はγ、粘度はVvis、液温はT、規定吐出し量はQrated、規定全揚程はHratedなどがあります。また密度は比重、動粘度は粘度で言うこともあります。

これらの記号をまとめて表2-1-1に示します。先に述べたように、規格で決められているわけではないので、記号が何を表しているのか確認して利用してください。 特に海外の仕様書には見慣れない記号が多くあるので、注意してください。 また、日本国内で日本人同士が使用する場合には、 表2-1-1に示すJIS B 0131で規定している記号を使用するのがよいと考えています。

表2-1-1:ポンプで使用する主な記号

  用語 一般的な記号 その他の記号 JIS B 0131
特性を表す記号 吐出し量 Q CAP. Q
全揚程 H TH,DIFFH H
効率 η E,EFF. η
回転速度、(回転数) N RPM,R/M n
NPSH3 NPSH3 NPSHR,ReqNPSH Hsv
仕様を表す記号 飽和蒸気圧力 Pvp Pv,VAP.P. Pv
密度、(比重) ρ γ,SG ρ
動粘度、(粘度) ν Vvis ν
液温 t T,LiqT 規定なし
吸込圧力 Ps SUC.P. Ps
規定吐出し量 Qr Qrated,RATEDQ Qsp
規定全揚程 Hr Hrated, RATEDH Hsp
吐出し圧力 Pd DIS.P. Pd
NPSHA NPSHA NPSHAv,AvNPSH hsv

JIS B 0131は規格の名称が「ターボポンプ用語」です。この規定では、様々あった用語を統一したのです。日本語の用語に対応した英語もあります。そしてこの規格の解説に、次のような記述があります。

『ポンプは古くから使用されている機械ですが、既に慣習的に用いられている用語が多く、変更したほうが好ましい用語であっても、混乱を招くおそれが大きいと思われるものもある。 一方、英語を日本語化して用いている用語と日本語によるもののいずれを採用すべきかも難しい問題の一つであったが、一般性の高い用語を優先した』

このように、用語をJIS規格に作り上げた努力は大変なものだったと想像されます。そのためにも、ポンプの用語は今後JIS B 0131のものを使用していきたいと考えています。

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの基礎講座』の目次

第1章 ポンプの基礎

第2章 ポンプの豆知識

第3章 ポンプの性能

第4章 ポンプの選定

第5章 知っておきたいポンプの技術

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