遠心ポンプの基礎講座
本連載では遠心ポンプにスポットをあてて、ポンプの種類、またポンプで使われる記号や圧力計の読み方などの豆知識まで、さまざまな事項をご紹介していきます。
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5-1 ポンプの国内の設計規格
ポンプは、目指す市場に適当と考えられる設計規格に適合または準じて設計されています。購入者は適用されている設計規格を見ると、ポンプのグレードが理解できるし、 使用するポンプのグレードを判断して、時にはポンプメーカに適用する設計規格を指定します。そして、ポンプメーカはその設計規格に合わせて設計すれば、 トラブルの少ないポンプにすることができるので、設計規格は購入者、ポンプメーカ双方にとって便利です。
それでは、国内にあるポンプの設計規格を見てみましょう。次に示すように、最も多く使用されている小形渦巻ポンプの設計規格から始まって、次々と設計規格が制定されてきました。
- 1958年、「小形渦巻ポンプ」JIS B 8313
- 1958年、「浅井戸用電気井戸ポンプ」JIS B 8314
- 1962年、「小形多段遠心ポンプ」JIS B 8319
- 1963年、「両吸込渦巻ポンプ」JIS B 8322
- 1964年、「水封式真空ポンプ」JIS B 8323
- 1966年、「深井戸用水中モータポンプ」JIS B 8324
- 1968年、「設備排水用水中モータポンプ」JIS B 8325
- 1978年、深井戸用電気井戸ポンプJIS B 8318
最近では、2009年に次の3つの設計規格が制定されました。
- 「遠心ポンプの技術仕様-クラスI」JIS B 8307
- 「遠心ポンプの技術仕様-クラスII」JIS B 8308
- 「遠心ポンプの技術仕様-クラスIII」JIS B 8309
上述したJIS規格のうち主な規格とその概要を下記に示します。
- 規格番号
- JIS B 8313
- 規格名称
- 小形渦巻ポンプ
- 適用
- ポンプの型式…片吸込形単段の小形渦巻ポンプ
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概要
0~40℃の清水を取り扱う片吸込形単段で最高使用圧力1MPaまでに使用する一般用小形渦巻ポンプで、共通ベース上で50Hz又は60Hzの2極又は4極三相誘導電動機とたわみ軸継手によって直結されるものについて規定した。
- 規格番号
- JIS B 8319
- 規格名称
- 小形多段遠心ポンプ
- 適用
- ポンプの型式…片吸込形の小形多段遠心ポンプ
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概要
0~40℃の清水を取り扱う片吸込形で最高使用圧力2.75MPaまでに使用する段数2~15段の一般用小形多段遠心ポンプで、共通ベース上で、50Hz又は60Hzの2極又は4極三相誘導電動機とたわみ軸継手によって直結されるものについて規定した。
- 規格番号
- JIS B 8322
- 規格名称
- 両吸込渦巻ポンプ
- 適用
- ポンプの型式…両吸込横軸形単段の渦巻ポンプ
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概要
0~40℃の清水を取り扱う両吸込横軸形単段で最高使用圧力1.4MPaまでに使用する一般用両吸込渦巻ポンプで、共通ベース上で50Hz又は60Hzの4極、6極又は8極三相誘導電動機とたわみ軸継手によって直結されるものについて規定した。
- 規格番号
- JIS B 8323
- 規格名称
- 水封式真空ポンプ
- 適用
- ポンプの型式…水封式真空ポンプ
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概要
吸込口径20~50mmの一般用水封式真空ポンプで、共通ベース上で、50Hz又は60Hz三相誘導電動機とたわみ軸継手によって直結されるもの及びVベルト掛けによって連結されるものについて規定した。
- 規格番号
- JIS B 8324
- 規格名称
- 深井戸用水中モータポンプ
- 適用
- ポンプの型式…片吸込遠心形又は斜流形の深井戸用水中モータポンプ
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概要
水温10~25℃の清水を取り扱うポンプ口径が25~200mmの片吸込遠心形又は斜流形の深井戸用水中モータポンプで、井戸ふた又は取付バンドに取り付けられた揚水管の下部につり下げられ、 その下部に50Hz又は60Hzの2極水中三相誘導電動機を軸継手によって直結し、その最大潜没深さが100m以内のものについて規定した。
- 規格番号
- JIS B 8325
- 規格名称
- 設備排水用水中モータポンプ
- 適用
- ポンプの型式…片吸込単段遠心形の設備排水用水中モータポンプ
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概要
建築物その他の設備から生じる水温0~40℃、pH5~9、含まれる固形物の大きさ20mm以下の汚水、雑排水を取り扱う片吸込単段遠心形の設備排水用水中モータポンプで、 貯留槽内につり下げ又は据置きされ、50Hz又は60Hzの、2極又は4極水中誘導電動機を、共通軸又は軸継手によって直結したものについて規定した。
ここで、JIS規格に関連し、話はポンプから国際貿易へと移ります。国際貿易において、1979年に国際協定として合意された、 技術的な事項に関する「貿易の技術的障害に関する協定」があります。そして、この協定は世界貿易機関WTO(World Trade Organization)加盟国全部に適用されています。
この協定をポンプの設計規格に当てはめると、次のようになります。
(1)JIS規格がすでに制定されていて、その後ISO規格が制定された場合、JIS規格でISO規格と異なる内容があれば、JIS規格をISO規格の内容に改定する。
(2)新たにJIS規格を制定する場合、すでに同類のISO規格があれば、そのISO規格と同じ内容の規格にする。
すなわち、時間的なずれはあっても、最終的にはJIS規格はISO規格と同じにする必要があるのです。
上述の設計規格のうち、1958年から1978年に制定された規格は、見直しのときにISO規格に合っていない内容は改定されました。 また、2009年に制定された3つの設計規格は、すでにISO規格が存在していたために、該当するISO規格を和訳した内容になっています。
参考として、ポンプのJIS規格がどのように制定されているかを簡単に紹介します。 まず、ポンプメーカが中心になって規格の「原案作成準備委員会」を立ち上げて、規格の原案を作成します。 その規格が委員会で承認されると、次は「原案作成委員会」が設置されます。この委員会は、使用者、有識者及びポンプメーカが委員になり、先の原案を審議します。 ここで承認されると、経済産業大臣へ規格制定の申請を行い、承認されれば正式にJIS規格として制定され発行されます。その後、原則として5年ごとに見直しがあります。
『遠心ポンプの基礎講座』の目次
第1章 ポンプの基礎
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1-1ポンプの概況1国内では毎年400万台のポンプを生産していますが、現在国内で運転されているポンプは何台になるのでしょうか。
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1-2ポンプの概況2専用に使用されるポンプには、雨水ポンプ、汚水ポンプ、汚泥ポンプ、グラインダーポンプ、消火ポンプ、石炭輸送ポンプ、LNGポンプ、熱媒ポンプ、人工心臓血液ポンプなどいろいろとあります。
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1-3ポンプの概況3単段ポンプでは圧力が足りない場合、羽根車数を多くした多段ポンプを使用します。ここでは、輪切り多段ポンプ、水平割り多段ポンプ及び二重胴多段ポンプの3種類に分けて紹介します。
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1-4ポンプの種類ポンプの種類は作動原理からみると、ターボ形、容積形などに分類でき、また構造上からは、横軸、立軸、単段、多段などに分類できます。
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1-5ポンプの特徴「1-4 ポンプの種類」において、API 610という規格にしたがったポンプの記号を説明しました。ここでは、各記号のポンプそれぞれの特徴を掘り下げて説明します。
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1-6ポンプの用途ポンプは、電力、自動車、建設機械、船舶、鉄鋼、石油精製、石油化学、化学、食品、パルプ、医療など、国内外のほとんどの産業分野において、送液、循環、加圧用などとして使用されています。
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1-7国内のポンプ生産ポンプがどのぐらい生産されているのかを見てみましょう。経済産業省はホームページに、国内におけるポンプ形式別の生産台数及び生産金額の統計を公表しています。
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1-8世界のポンプ生産それでは世界のポンプ生産はどうでしょうか。少し古いのですが、「the McIlvaine Company」の統計によると、世界におけるポンプの生産金額は、図1-8-1に示すように、2000年には米ドルで200億ドルとなっています。
第2章 ポンプの豆知識
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2-1ポンプで使用する記号ポンプの特性や仕様を指定するときに、一般に使用されている用語の代りに、よく記号を使っています。
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2-2ポンプで使用する単位と換算方法ポンプで使用する記号は、世界的な規格がないためにさまざまあります。また、ポンプで使用する単位は「SI単位」が世界的な標準なのですが、 実際には「CGS系単位」や「工学系単位」もまだ多く使われています。
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2-3ポンプの圧力と圧力計の読み方ポンプを設置して試運転のとき、ポンプが正規の圧力を出しているかどうか確認する必要があったり、使い始めて数年経過してポンプの圧力がどの程度低下しているかを確認したりすることがあります。
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2-4ポンプの特性を表す比速度遠心ポンプにおいて、特性を表わすための値として、吐出し量、全揚程、効率、回転速度、NPSH3などがあります。
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2-5ポンプの吸込性能を表す吸込比速度ポンプの特性や形状を表す特性数に比速度Nsがあります。似たような特性数として、吸込比速度Sというものがあります。
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2-6ポンプの吸込揚程と求め方「このポンプは何m吸い上げられるか」ということが、話題になることがあります。図2-6-1に示すhaが吸い上げることができる高さ、すなわち吸込揚程になります。
第3章 ポンプの性能
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3-1ポンプの性能曲線の見方ポンプの性能は、吐出し量を基に、それぞれの吐出し量に対する全揚程、効率、軸動力、NPSH3、電流などの能力のことをいいます。
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3-2ポンプの効率遠心ポンプの効率について規定している規格として、国内では次のJIS規格があります。
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3-3ポンプの回転速度の変化吐出し量を少なくしたい、吐出し圧力を下げたいなど何らかの事情によって、ポンプの性能を下げる必要があることがあります。
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3-4ポンプの吸込口と吐出し口の口径ポンプには吸込口と吐出し口があります。そして、ポンプを運転するためには、一部の水中ポンプを除き、吸込配管及び吐出し配管が必須であり、弁、ストレーナなどを含めてポンプに付設されます。
第4章 ポンプの選定
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4-1ポンプの選定ポイント基本的には、購入者が横軸、立形などポンプの形式を指定します。そして、ポンプメーカは指定された形式で仕様が満足できるかどうかを確認して、最適なポンプを選定します。
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4-2ポンプの選定ポンプが必要なとき、どのようにポンプを選定するのがよいのでしょうか。用途や使用年数などによって、当然選定するポンプは変わります。
第5章 知っておきたいポンプの技術
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5-1ポンプの国内の設計規格ポンプは、目指す市場に適当と考えられる設計規格に適合または準じて設計されています。
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5-2ポンプの国際的な設計規格ポンプに関する国際的な設計規格として、表5-2-1に示す「API 610」、「ANSI B 73.1」及び「ISO規格」があります。
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5-3ポンプのシールの漏れ量ここで取り上げたいシールは、軸封に使用するメカニカルシール及びグランドパッキン、軸受ハウジング内の潤滑油を外部に漏れないようにシールするデフレクタ及びオイルシールの4つの部品です。
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5-4ポンプで使うシールの選定遠心ポンプの主要な構成部品は、ケーシング、羽根車、主軸、軸受及びシールです。
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5-5ポンプのNPSHAとNPSH3前節「2-6 ポンプの吸込揚程と求め方」において、NPSHAとNPSH3の意味及び両者の関係を説明しています。要約すると、次のようになります。
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5-6ポンプの吸込ストレーナ吸込ストレーナのメッシュは、想定される異物が通過できない大きさにする必要があります。または、ある大きさ以下の異物がポンプに混入しても問題なければ、その大きさにします。
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5-7ポンプの吸込口、吸込タンク及び吸込配管ポンプは吸込口から空気を吸い込むことを避ける必要があります。
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5-8横軸ポンプ始動前の空気抜きポンプは流体機械の1つと定義されています。流体機械は、液を扱うポンプと気体を扱う送風機及び圧縮機があるので、正確に言うと、真空ポンプを除き、ポンプは液体機械なのです。
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5-9ポンプの締切運転ポンプの締切運転、すなわち吐出し量が零(0)のときでも、図5-9-1に示すように、ポンプには軸動力S (kW)が負荷されています。
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5-10ポンプの全揚程と吐出し圧力の関係ポンプの吐出し圧力は、ポンプの性能曲線に示される全揚程を圧力に換算した値と同じではありません。吸込圧力を考慮する必要があります。
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5-11ポンプの性能曲線と運転点の関係ポンプは独自に自由に運転点を決めることはありません。ポンプには吸込配管及び吐出し配管が必要です。
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5-12ポンプの保護装置ポンプの保護装置には、異常を引き起こさないためにあらかじめ設けるミニマムフローラインがあり、また、機能の異常を検知してポンプを停止するために、振動計、温度計、漏洩検知器などの機器があります。
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5-13ポンプの管理基準管理標準とは、ここではポンプに関することに限定し、トラブルを最小限に抑えて必要経費を縮減するために、点検項目を決めて管理するための基準とします。
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5-14ポンプの標準化「標準化」とは、広辞苑によると、「工業製品などの品質・形状・寸法を標準に従って統一すること。これによって互換性を高める。」とあります。