工具の通販モノタロウ 遠心ポンプの基礎講座 ポンプの回転速度の変化

遠心ポンプの基礎講座

電力、自動車、建設機械、鉄鋼、化学、食品など、多くの産業分野において使用されている「ポンプ」。
本連載では遠心ポンプにスポットをあてて、ポンプの種類、またポンプで使われる記号や圧力計の読み方などの豆知識まで、さまざまな事項をご紹介していきます。
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第3章 ポンプの性能

3-3 ポンプの回転速度の変化

吐出し量を少なくしたい、吐出し圧力を下げたいなど何らかの事情によって、ポンプの性能を下げる必要があることがあります。 その場合、ポンプを交換する、インペラカットする、多段ポンプであれば段抜きする、というポンプに手を加える方法はあるのですが、ここでは、ポンプそのものに手を加えない方法を取り上げます。 その方法には、インバータまたはVプーリを使って、ポンプの回転速度を低くすることが挙げられます。

それでは、ポンプの回転速度を低くした場合について、ポンプの性能を予測する方法を説明します。 回転速度を変えた場合に、性能を予測するための換算式を表3-3-1に示します。変数の記号は表3-4-1に示すとおりです。 吐出し量は回転速度に比例し、全揚程は回転速度の二乗に比例します。そして、効率は表3-4-1に示す経験式で換算します。また、軸動力は次式で計算します。

P =0.1634 xρQH /(η/100)

ここに、

  • P:軸動力(kW)
  • ρ:液の密度(g/cm3
  • Q:吐出し量(m3/min)
  • H:全揚程(m)
  • η:効率(%)

表3-3-1:ポンプの速度変化による性能

表3-3-1:ポンプの速度変化による性能

ここで実際に数値を使って例を示します。 表3-3-2に示す100 %の回転速度で運転されているポンプを、80 %の回転速度、2940 x 0.80=2352 min-1にしたときの性能を予想してみます。 このときの液は水とし、ρ=1.0 g/cm3にします。表3-3-2に示すNo.6が最高効率点で、吐出し量は2.2 m3/min、全揚程は82.0 m、効率は74.6 %です。

吐出し量は回転速度に比例し、全揚程は回転速度の二乗に比例するので、最高効率点における80 %の回転速度の吐出し量および全揚程は、次のようになります。

吐出し量=2.2 x 0.80=1.76 m3/min
全揚程=82.0 x 0.802=52.5 m

最高効率点の効率は表3-3-1に示す経験式で換算すると

効率=1-(1-0.746)/0.81/5=0.734=73.4 %

になります。

最高効率点以外は、表3-3-2および表3-3-3のNo.ごとに示すように、吐出し量および全揚程は最高効率点の換算と同様です。 しかし、効率については、100 %の回転速度での効率と80 %の回転速度での効率低下係数で換算します。この効率換算係数は、

効率換算係数=73.4/74.6=0.984

になります。

このようにして換算した性能曲線を図3-3-1に示します。計算しただけなのに、実際とは合わないのではないかと疑問を持つ方がいるかもしれません。しかし、実用上問題にならないほどよく合います。

表3-3-2:100%回転速度のポンプ性能

表3-3-3:80%回転速度のポンプ性能

図3-3-1:ポンプの速度変化による性能曲線

図3-3-1:ポンプの速度変化による性能曲線

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの基礎講座』の目次

第1章 ポンプの基礎

第2章 ポンプの豆知識

第3章 ポンプの性能

第4章 ポンプの選定

第5章 知っておきたいポンプの技術

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