遠心ポンプの実践講座

本連載では、基礎講座に続き遠心ポンプにスポットをあて、ポンプを構成する部品の役割からポンプの点検の仕方、トラブルとその対策まで、 より実践的な知識をご紹介していきます。遠心ポンプの基礎講座はこちら>>
第3章 ポンプの据付けと試運転

3-1 ポンプによる基礎の荷重

ポンプから基礎にどのぐらいの荷重がかかるのでしょうか。その前にまず、どのような荷重があるのか考えてみます。

荷重として挙げられるのは、表3-1-1に示すように、ポンプ、駆動機及び共通ベースの質量、回転体の振動による加振力、配管荷重、配管モーメント、吸込配管と吐出し配管の質量、ポンプ内と配管内の液体の質量などになります。 また、地震のときには、これらの荷重に加え、更に加速度による荷重が加算されます。それでは、各荷重について見ていきましょう。

表3-1-1 ポンプの基礎荷重

No. 荷重の種類
1 ポンプの質量
2 駆動機の質量
3 共通ベースの質量
4 回転体の振動による加振力
5 ポンプ内の液の質量
6 ポンプ内の液の運動量変化による荷重
7 配管荷重
8 配管モーメント
9 吸込配管と吐出し配管の質量
10 吸込配管と吐出し配管内の液の質量
11 配管サポートによる荷重軽減
1.ポンプ、駆動機及び共通ベースの質量

ポンプメーカから提出されるデータシートや外形図に値が明記されます。

2.回転体の振動による加振力

ポンプの主軸や羽根車など回転する部品が振動することによって発生する荷重を、ここでは加振力と称します。ポンプメーカに加振力がいくらになるかを要求すると値が提出されます。一般に、加振力は回転体が片振幅を半径として振れ回る遠心力ととらえ、次の式で計算します。

  • F =mrω2
  • m:回転体の質量(kg)
  • r:振動の片振幅(m)
  • ω:角速度(rad/s)=2ΠN/60
  • N:回転速度(min-1

計算例を示しましょう。たとえば、回転体の質量m=50kg、回転速度N=2960 min-1とします。JIS B 8301によると、振動基準値の参考として全振幅は0.032 mmとあるので、振動の片振幅rはその半分の0.016 mmとします。これで、具体的数値を使って計算できます。

  • ω=2×Π×2960/60=310rad/s
  • F=50×(0.016/1000)×3102=76.9kg-m/s2=7.8kg

この結果から分かるように、回転体の振動による加振力は、回転体の質量と比較してかなり小さくなります。

3.ポンプ内の液の質量

例えば、「エンド-トップ」のポンプの場合、ポンプが運転中、液は軸方向で水平方向から流入し、上方向に吐き出されます。これを運動量の変化としてとらえると、吸込からある流速を持った液がポンプ内で方向を90°変えているわけです。 すなわち、水平方向に流速を持った液は吐出しでは水平方向の流速がなくなっているので、運動量が水平方向において変化しています。これを計算式で示すと次のようになります。

  • Fv=ρQV1-ρQV2
  • Fv:運動量の変化(kg)
  • ρ:液の密度(kg/m3
  • Q:運転点の吐出し量(m3/s)
  • V1:吸込口の流速(m/s)
  • V2:吐出し口の流速(m/s)

計算例で説明しましょう。吸込口径100mm、吐出し口径80mmで130m3/hで運転中のポンプにおいて、液の密度ρ=1g/cm3と仮定します。吸込側では次のようになります。

  • 水平方向の流速  V1=130/(60x60)/(π/4×0.12)=4.6m/s
  • 水平方向の流速  V2=0
  • Fv=ρQV1-ρQV2=ρQV1=1000×130/(60×60)×4.6
  • =166 kg-m/s2=16.9kg

したがって、この「エンド-トップ」のポンプでは、軸方向で水平方向に16.9kgの荷重が作用します。吐出し側では次のようになります。

  • 垂直方向の流速 V1=0
  • 垂直方向の流速 V2=130/(60×60)/(Π/4×0.082)=7.2 m/s
  • Fv=ρQV1-ρQV2=-ρQV2=1000x130/(60×60)x7.2
  • =-260kg-m/s2=-26.5 kg

吐出し配管は垂直上向きになっているので、垂直下向きに26.5 kgの荷重が作用します。「サイド-サイド」のポンプでは、吸込口の流速及び吐出しの流速の方向が変わるのですが、いずれの荷重も水平方向に作用します。 及び「トップ-トップ」のポンプでは、吸込口の流速及び吐出しの流速の方向ともに垂直方向なので、いずれの荷重も垂直下向きに作用します。

5.吸込配管と吐出し配管の質量、及び吸込配管と吐出し配管内の液の質量

配管の設計によって、配管の質量及び配管の内容積は、あらかじめ計算によって求めることができます。内容積が分かれば液の質量が分かります。配管及び液の質量は、配管荷重としてポンプの吸込ノズル及び吐出しノズルに作用します。

6.配管サポートによる荷重軽減

配管のサポートがある場合、サポートの固定が共通ベース上でなければ、サポートの基礎が受ける荷重はポンプの基礎に作用する荷重から取り除くことができます。

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの実践講座』の目次

第1章 ポンプの仕様

第2章 ポンプの構成部品と役割

第3章 ポンプの据付けと試運転

第4章 ポンプの運転

第5章 ポンプの保守点検と省エネルギー

第6章 ポンプのトラブルと対策

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