工具の通販モノタロウ ポンプ・送風機・電熱機器 遠心ポンプの実践講座 ポンプトラブルを減らすための日常の対応

遠心ポンプの実践講座

本連載では、基礎講座に続き遠心ポンプにスポットをあて、ポンプを構成する部品の役割からポンプの点検の仕方、トラブルとその対策まで、 より実践的な知識をご紹介していきます。遠心ポンプの基礎講座はこちら>>
第6章 ポンプのトラブルと対策

6-6 ポンプトラブルを減らすための日常の対応

ポンプメーカの技術者は、日常煩雑な業務に当たっていると思います。そして、トラブルはある日突然に予告なく襲ってきます。 トラブルを少なくするために、日常の業務の流れの中でできることもあります。「日常の業務がいっぱいで、とてもそんなことはできない!」と言われるかもしれません。 そうであっても、少し視点を変えて、日常の流れの中で、次のようなことを少し気にしながら業務を進めていただければと考え、表6-6-1に示す項目について筆者の考えを紹介します。

トラブルを減らすためには、技術者個々人の力量を伸ばすことは確かに必要ですが、一人の技術者では限界もあります。そこで、人脈を利用することによって、トラブルを未然に防止できたり、トラブルが起こったとき、その解決のために協力していただけたりする可能性があります。

特に管理職は、トラブルが起こったときに、即刻解決に向けた方針を打ち出す必要があります。方針を打ち出せないときは解決に時間がかかり、顧客を怒らせてしまいかねません。そうなれば、ポンプメーカ、顧客双方にとって損失が大きくなっていきます。

表6-6-1 日常の対応

1.有志の勉強会
2.トラブル事例集まとめ
3.セミナー参加
4.最新技術の習得
5.技術分野ごとのエキスパート
6.社内であれば、異なる分野の人との交流
7.社外の人との交流
1.有志の勉強会

特に若い技術者であれば、基礎的な技術も分かっていないことがあります。それを補うために、勉強会の時間を作ってお互いに勉強します。どうしても理解できないときは、可能であれば社内の先輩に依頼して、その技術を説明してもらうのです。 これは効果があります。技術のほかに、社内でどのようなところにその技術が使われているか、実践的に教えていただけます。

2.トラブル事例集まとめ

日常の業務の中で突然に遭遇するトラブルは、まず対策が最優先されます。そして対策がうまくできた段階で、何らかの形で記録に残します。この記録はその会社の宝になるはずなので、管理基準を作って保管する必要があります。

管理基準は手間をかけないように、簡単にします。例えば、決められた様式のA4用紙1枚に、管理番号、年月日、顧客名、担当者名、ポンプ名、トラブル現象、推定原因、対策などを、担当者が簡潔に記入します。詳しい資料は、必要なときに管理番号から見ることができるようにして保管しておきます。 重要なことは、トラブルについて、関係者がいつでも容易に検索できるということです。

そうすることによって、後に同じような仕様のポンプがあったときに参考にしたり、若手の勉強会の資料にしたりします。ただし、外部に漏れないような対策は講じておく必要があります。

3.セミナー参加

ポンプ関係でなくても構わないのですが、CAEの研修会、最新の技術紹介など、世の中の動向を勉強できるようなセミナーに参加してみるのもためになります。セミナーに参加したら、講師と名刺を交換しておき、後日質問するときに使ってください。

4.最新技術の習得

設計や製造などの最新技術は、日常意識的に習得するように努めます。ポンプに関する最新技術はあまりないかもしれませんが、機械の設計や製造に関する最新技術というように、範囲を広めると専門誌や新聞などからかなり習得できます。

5.技術分野ごとのエキスパート

ポンプ技術に関するキーワードはたくさんあります。例えば、軸封、振動、軸受、潤滑、材料、付属品、トライボロジー、ばね、管路の諸損失、性能、キャビテーション、脈動などです。社内で技術者一人ひとりが、1つ以上のキーワードを担当し勉強して、社内でその分野のエキスパートになるのです。 エキスパートになる人は担当のキーワードについて勉強するのですが、第一人者になるためには、他の関連技術も勉強する必要があることに気付くはずです。そのような相乗効果も期待できます。

そして、社内で困ったとき、トラブルが起こったときなどに、そのエキスパートに相談して解決するような活用の仕方をします。社内の仕組みとして、明文化しておくことが重要です。

6.社内であれば、異なる分野の人との交流

会社の業務は、必ず他部署との関係があります。同期会、ふるさと会、同窓会などをきっかけにしても構いません。たまには、異なる分野の技術者と交流することによって、自分に何かひらめきが起こる可能性があります。

7.社外の人との交流

社外の人になると、社内よりはひらめきが起こる可能性が高くなります。社風の違い、業務の進め方、技術力、改善点などを発見できるよい機会になります。

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの実践講座』の目次

第1章 ポンプの仕様

第2章 ポンプの構成部品と役割

第3章 ポンプの据付けと試運転

第4章 ポンプの運転

第5章 ポンプの保守点検と省エネルギー

第6章 ポンプのトラブルと対策

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