遠心ポンプの基礎講座

電力、自動車、建設機械、鉄鋼、化学、食品など、多くの産業分野において使用されている「ポンプ」。
本連載では遠心ポンプにスポットをあてて、ポンプの種類、またポンプで使われる記号や圧力計の読み方などの豆知識まで、さまざまな事項をご紹介していきます。
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第1章 ポンプの基礎

1-6 ポンプの用途

ポンプは、電力、自動車、建設機械、船舶、鉄鋼、石油精製、石油化学、化学、食品、パルプ、医療など、国内外のほとんどの産業分野において、送液、循環、加圧用などとして使用されています。

世界中で使用されている遠心ポンプのうち50%は片持単段渦巻ポンプ「OH1」だと思われます。 「OH1」と言っても、取扱液に腐食性があれば使用する材料はステンレス鋼などの耐食性のある材料になります。 また、取扱液に砂などのスラリーが混入していれば羽根車をセミオープン形に変えたりします。つまり用途によって記号は変わらないのですが、ポンプの材料や部品形状が変わることがあります。

飲料水の送水は、それほど全揚程が高くなく水温も高くないので、「OH1」や「BB1」がよく使われています。 ビルの揚水では、低層であれば「OH1」、高層になれば「BB4」が使用されます。 電力では、火力発電や原子力発電のボイラ給水ポンプに「BB5」が使用されています。用途には限定されませんが、ポンプの設置面積を小さくしたい場合には、「OH3」から「OH5」が適しています。

ポンプの一般的な用途について、記号ごとに表1-6-1に「○」印を付けて示します。 念のためですが、〇印がないからといって使用できないわけではありません。用途からみて使いやすいポンプであるという理由で、〇印の分野で一般に使用されているのです。

表1-6-1:ポンプの用途

API610の記号 用途
石油精製 化学 電力 汚水 ビル 食品 パルプ
OH1      
OH2            
OH3              
OH4            
OH5          
OH6                
BB1              
BB2              
BB3            
BB4              
BB5            
VS1              
VS2              
VS3                
VS4                
VS5                
VS6              
VS7              

近年、ポンプにおいて課題になっているのが、「水」を利用しない冷却技術です。

ポンプ液が高温、軸受が大きい、ポンプ回転速度が高いなどの場合、ポンプの軸受の冷却、軸封のガスケットの冷却、メカニカルシールの冷却などに、冷却水を必要とします。しかし、中近東など、水がないので使うことができない場所があります。

このようなときは、どうするのでしょうか? 扇風機の羽根のような形をしたファンをポンプ軸に取り付けて風によって軸受を冷却したり、 軸受ケーシングや配管途上に放熱フィンを取り付けて放熱面積を大きくしたり、耐熱性の高い材料に変えたり、軸受の潤滑をオイルミストにしたり、 ポンプ形式をキャンドモータポンプに変えたりして、なんとか対応しています。

最近のプラントは、効率向上及び建設コスト縮減のために大形化しています。そのため、ポンプも大形化及び高速化は更に進みます。そして、現在の冷却技術では限界になりそうです。 機器の冷却のための画期的な技術、または安価で水を作り出す技術が生まれることを密かに期待しています。

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの基礎講座』の目次

第1章 ポンプの基礎

第2章 ポンプの豆知識

第3章 ポンプの性能

第4章 ポンプの選定

第5章 知っておきたいポンプの技術

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