遠心ポンプの基礎講座

電力、自動車、建設機械、鉄鋼、化学、食品など、多くの産業分野において使用されている「ポンプ」。
本連載では遠心ポンプにスポットをあてて、ポンプの種類、またポンプで使われる記号や圧力計の読み方などの豆知識まで、さまざまな事項をご紹介していきます。
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第5章 知っておきたいポンプの技術

5-6 ポンプの吸込ストレーナ

5-6-1 吸込ストレーナの必要性

ポンプの吸込口の前流側に取り付ける吸込ストレーナは、必ず必要ということではありません。しかし、ポンプに接続されている配管などに異物が混入している可能性がある場合、プロセスの関係で固形物が析出する可能性がある場合は、吸込ストレーナを付けておくと安全です。

5-6-2 吸込ストレーナを取り付ける場合の選定と注意点

a.メッシュ

吸込ストレーナのメッシュは、想定される異物が通過できない大きさにする必要があります。または、ある大きさ以下の異物がポンプに混入しても問題なければ、その大きさにします。

b.形式

吸込ストレーナには、コーン形、Y形、バケット形、複式などがあります。そして、プラントなどの建設が完了して、試運転前に洗浄のときだけに使用する場合と、常時設置される場合とがあります。 吸込ストレーナが目詰まりしたときの清掃について、コーン形は大変ですが、Y形は比較的容易です。複式のときは、目詰まりしても切り替えることによってポンプをすぐに運転できます。

c.注意点

注意点はただ一つです。ポンプのNPSHAが確保されている必要があります。吸込ストレーナの目が細かくなると、それだけ吸込圧力損失が大きくなってしまい、ポンプのNPSHAが小さくなります。 また、目詰まりすることによってもNPSHAが小さくなります。ストレーナの圧力損失について、ストレーナメーカから流量と圧力損失の関係を示す2次曲線などが出されています。この曲線を使って圧力損失を算出します。 どのような状態であっても、NPSHA>NPSH3を確保する必要があります。

5-6-3 吸込ストレーナを取り付けた場合の対策

吸込ストレーナもそうですが、弁などを含め、付属品は少ないほうがポンプにとっては安全であることに間違いはありません。吸込ストレーナが目詰まりしていることを見落としたり、 弁を全開にするところを間違って全閉にしてポンプを始動してしまったり、電気的なトラブルで検知できなかったりする事故があるからです。 したがって、吸込ストレーナの場合には、人が間違ったことをしても、ポンプを安全に運転するために、次のような対策が必要になります。

a.吸込ストレーナの前後の差圧を測定し、差圧が規定以上になったときに「アラームそしてシャットダウン」によって、ポンプを停止するための接点付差圧計を設けます。

b.または、吸込ストレーナとポンプの吸込口間に、吸込圧力が異常低下したことを検知し「アラームそしてシャットダウン」によって、ポンプを停止するための接点付圧力計を設けます。

c.メンテナンスを考慮して、吸込ストレーナの前後に仕切弁を取り付けた場合、メンテナンスするときを除いて、弁を全開に保持するための錠が付いた仕切弁を設けます。

d.電気信号で「アラームそしてシャットダウン」する場合、信号線が切れていないことを確認するための接点を回路の中に設けます。

執筆:外山技術士事務所 所長 外山幸雄

『遠心ポンプの基礎講座』の目次

第1章 ポンプの基礎

第2章 ポンプの豆知識

第3章 ポンプの性能

第4章 ポンプの選定

第5章 知っておきたいポンプの技術

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