電気のおはなし
1-1 回路とは
漢字が示す通り、回って戻って来る路が回路です。回路を循環しているものが電気なら電気回路、電子なら電子回路になります。循環走行するのがレーシングカーならカーサーキットやテストコースが回路になります。
エネルギーを循環させている路は自然界にも多く見られます。たとえば大地に降った雨は河川となり海へと流れていきます。水を含んだ大地、河川、海等の水は蒸発して雲となり、また大地に雨を降らせます。
河川には、上流で流れをせき止め、水を貯え、河川の水量を制御する機能を有する治水ダムを設けているところが多くあります。 ダムの貯水は、灌漑用水、水道の水源や水の落差エネルギーを電気エネルギーに変換する水力発電としても利用されています。 これらの大自然のエネルギーの循環には多くのエネルギーが関与していますがそのエネルギーの源となるのが太陽の熱エネルギーでしょう(図1)。
図1:自然の循環系
カーサーキットを疾走するレーシングカーではガソリンをエンジンのシリンダー内で爆発燃焼させたときに発生する熱エネルギーをピストンが往復する運動エネルギーに変換し、 この動きを機械的に回転エネルギーに変換し、駆動するタイヤに伝えています。タイヤの回転は、走行路面をとらえる摩擦エネルギーや走行する推進エネルギーに変換されます(図2、図3)。 最近のレーシングカーでは様々なドライバーの運転情報やエネルギー変換の様子などを多数のセンサーで計測し、エンジンやブレーキを制御し、無線でこれらの情報をピットへ送っています。 ピットでは受信した情報を分析し、ドライバーへの指示やタイヤの交換時期などを決めるのに利用しています。
図2:循環するカーレーシングコース
図3:自動車のエネルギー変換
電気回路や電子回路の中にも電流の量や電圧の大小を制御する増幅回路、計測回路、制御回路、変換回路等を有しているものがあり、多くの電気機器、電気部品、電子部品等が使われています。
電気回路や電子回路に電気エネルギーを供給するのは電源です。電源には電線を通じて供給されてくる商用電源、ポータブル機器に使われている様々な電池、自然エネルギーを使って発電する太陽電池、風力発電、バイオマス発電など多くの種類があります。
このように見てくると回路とはエネルギーを循環させて利用するための流れ路なのかもしれません。この連載では電気回路、電子回路に特化して皆さんと回路についていろいろな角度から学んでいきたいと思っています。
次の表に回路を回るもの、回路を形成する路、支配的なエネルギー源の種類をまとめてみました(表1)。
表1:回路の形成
電気/電子回路 | カーサーキット | 大自然の循環 | |
---|---|---|---|
回るもの | 電流 | レーシングカー | 水 |
路 | 電線、回路基板等 | 走行路 | 河川、海等 |
エネルギー | 電気 | エンジンの燃料 | 太陽 |
『電気のおはなし』の目次
第1章 電気回路
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1-1回路とは漢字が示す通り、回って戻って来る路が回路です。回路を循環しているものが電気なら電気回路、電子なら電子回路になります。
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1-2回路の種類電気回路には大電流、大電力の発電系、送電系からの大工場、大型ショッピングモールなどの受電系、一般家庭の受電系、パソコン、スマホなどのプリント基板のパターンを流れる小電流回路、ICやLSI内部の微小電流まで扱う電流の大小により多くの種類があります。
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1-3交流回路とは交流波形をした電圧や電流が電源から負荷に流れているのが交流回路です。
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1-4直流回路とは直流電源を使用している回路や部品、機器、設備の内部には直流回路が形成されています。直流電源には直流発電機、電池、交流から直流に変換する電源アダプターなど多くの種類があります。
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1-5並列回路とは工場の電動機や照明等の負荷への配線、オフィスの複写機、パソコン等の負荷への配線、住宅内のエアコン、家電品等の負荷への配線など電力会社から受電した電気を負荷へ供給している配線回路のほとんどが並列回路を形成しています。
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1-6直列回路とはスマホ、ノートパソコンなどの携帯電子機器ケースの内部には充電できる二次電池のホルダーが収納されています。 中
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1-7分岐回路とは退避線のある駅に各駅停車の電車が近づくと本線から分岐された線路を通って目的のプラットホームへと向かい停車します。
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1-8遮断回路とは地震や火災、風水害が発生した時や保守点検、工事安全確保が必要な場合や目的に達した時に電路と切り離し動作を行う回路に遮断回路があります。
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1-9プリント配線板とは電子回路や電気回路の配線の一部を印刷して展開した板をプリント配線板とよんでいます。
第2章 電気の測定
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2-1電気回路測定の心得電気回路の測定に入る前に測定する周囲の電場環境や磁場環境など周囲環境が電気回路や電子回路にどのような影響を与えているのかを調べておきたいと思います。
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2-2電圧の測定電圧の測定器はメーターの針で測定値を示す指針型のアナログ計器とLEDや液晶の表示器に測定値を数字で示すデジタル計器とにわけられます。
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2-3電流の測定電圧の測定で紹介した回路計(マルチメータ)の電流測定機能と測定範囲は機種によって異なっています。
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2-4抵抗の測定抵抗測定というと、Ωレンジへ切り替えて測定するテスタ、マルチメータをイメージしてしまいがちです。
第3章 回路計
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3-1テスター(回路計)とはテスターは、機種により装備している機能が異なりますが電気回路、電子回路の電圧や電流、電子部品の抵抗、容量などが手軽に測定できる便利な測定器です。
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3-2アナログテスターの使い方アナログテスターの電圧や電流の測定では測定部位にテストリードのテストピンをあてがいます。テストピンで取り出された電圧や電流は、切り替えつまみ
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3-3デジタルテスターの使い方デジタルテスターでも電圧や電流の測定ではアナログテスターと同じく測定部位にテストリードのテストピンをあてがいます。テストピンで取り出された電圧や電流は、切り替えつまみで切り替えられたスイッチ回路を通してAD変換器を中心とするLSIと周辺回路へ送られます。
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3-4自動車用テスターとスキャンツール現在の自動車は電気回路や電子回路やマイコン、センサーにより電子制御されています。今後、自動運転化が進むにつれてこの電子制御化傾向はさらに加速していくものと思われます。
第4章 電気用品
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4-1電気回路と関係のある法律とマーク電気回路と関係がある国内と海外の安全に関する法律や安全マークに数回にわたって解説していきます。
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4-2JIS日本工業規格とは今回は、電気回路に関係している電気設備、電気用品、電気部品、電気材料や機械部品などの標準化を定めている日本工業規格(JIS:Japan Industrial Standards)(以下JIS)について調べていきましょう。
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4-3電波法と技適マークについて電波を公平かつ能率的な利用を確保することによって、公共の福祉を増進することを目的として定められたのが電波法です。多くの政令や省令に詳細が定められています。
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4-4人工知能(AI)とは準備中
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4-5CEマーク準備中
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4-6ULマーク準備中
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4-7CSAマーク準備中
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4-8FCCマーク準備中
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4-9VCCIマーク準備中
第5章 発電
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5-1発電の種類準備中
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5-2水力発電準備中
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5-3風力発電準備中
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5-4火力発電準備中
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5-5地熱発電準備中
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5-6バイオマス発電準備中
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5-7原子力発電準備中
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5-8内燃機関発電準備中