電気のおはなし

私たちの生活から切り離せない存在、「電気」。 電気が循環する回路の種類や、電気の測定、電気用品、発電、電源など、 電気にまつわるあらゆる基本的な事項をご紹介していきます。
第1章 電気回路

1-3 交流回路とは

交流波形をした電圧や電流が電源から負荷に流れているのが交流回路です。同じ波形を繰り返す交流波形には商用電源に使われている正弦波、一定周期で動作を繰り返す回路の掃引など使われている鋸(のこぎり)波、デジタル回路のクロックなどに使われている矩形波、など多くの種類があります(図1)。

図1:交流波形の種類

  • 正弦波
  • 正弦波
  • 鋸波
  • 鋸波

  • 矩形波
  • 矩形波

一番よく利用されている交流が正弦波形をした商用電源です。交流発電所から工場、デパート、ショッピングモールなど大口需要家、そして一般家庭、商店などの小口需要家へと送電されていきます。この商用電源の送電路は、大規模な交流回路の一部を構成しています。

交流商用電源は、発電機の回転子が回転して発電されているので1秒間に正確な回数を繰り返すつぎの図のような正弦波になります (図2)。この繰り返し周波数をヘルツ(Hz)とよんでいます。 明治時代に導入された交流発電機の発電周波数が地域によって異なっていたため50Hzと60Hzの二つの周波数が日本の商用電源には存在することになり現在に至っているのです。

図2:商用電源の波形と時間

図2:商用電源の波形と時間

交流は、トランスの一次側と二次側の巻き数比で電圧を高めたり低めたりすることが直流より簡単にできます。 そこでこのトランスを使って高圧に昇圧した電力を遠距離まで損失を少なく届けることができます。 需要家の近くで今度はトランスを使って降圧して給電することができます。 配電が開始された当初に主流だった直流送電システムは、 損失を抑えるために需要家の近くに発電所を設けねばならないというネックがあり、交流送電システムが確立されると直流から交流へとその座を譲り渡していきました。

この交流送電システムや電磁気学分野へ多大な貢献をした二コラ・テスラ(1856~1943)に対して米国の電気電子情報学会IEEEはマイルストーン特別賞を2006年に贈り、栄誉をたたえました。

一般家庭やオフィスでは多くの電化製品のプラグをコンセントに差し込んで使っています。電化製品のスイッチを入れて交流が流れて動作を開始すると商用電源と電化製品の間には交流回路が形成されています。

よく使われている便利な配線器具にテーブルタップがあります。 このテープルタップは、欧米ではパワーストリップとかパワーアウトレットと呼ばれることが多いようです。 デスクトップのパソコンの後ろ側をみるとプリンター、ディスプレイ、モデムなど多くの周辺機器のプラグがテーブルタップに差し込まれているのをよくみかけます(図3)。ここでは多くの交流並列回路が形成されています。

図3:たこ足状態のテーブルタップ

図3:たこ足状態のテーブルタップ

このようなたこ足状態の使い方はごみがたまりやすく見栄えもよくありません。そこでディスプレイの筐体中にパソコン基板、DVDなどをすべて収納して配線をすっきりさせたノートパソコンを大きくしたようなディスクトップパソコンも商品化されています。

交流は直流のように電池に蓄えておいてバックアップすることができません。 そこで瞬停や短時間の停電が発生したときにも処理作業の継続やデータの保管が求められる用途ではパソコンやサーバーの電源にUPS(無停電電源装置)が使われています(図4)。 UPSでは商用電源の正弦波停止を検出すると瞬時にACスイッチを商用電源側から蓄電池駆動のインバータ側へ切り替えて負荷へ商用電源と同じ電圧、周波数をした交流を供給し、停電による障害発生を防止します。 このようにUPSは交流回路の信頼性をバックアップしているのです。

UPSで使われている蓄電池には寿命があります。年月が経過するにしたがい電気を蓄えられる量が徐々に減少するという劣化現象が蓄電池内で進行していきます。 交換時期がわかるバッテリーの寿命チェッカーが付いているUPS製品を選択されることをお勧めします。

図4:UPSの構成/UPS内蔵蓄電池の例

図4:UPSの構成/UPS内蔵蓄電池の例

執筆:常深 信彦

『電気のおはなし』の目次

第1章 電気回路

第2章 電気の測定

第3章 回路計

第4章 電気用品

第5章 発電

第6章 電源装置

目次をもっと見る