電気のおはなし
3-2 アナログテスターの使い方
アナログテスターの電圧や電流の測定では測定部位にテストリードのテストピンをあてがいます。テストピンで取り出された電圧や電流は、切り替えつまみで切り替えられたスイッチ回路を通して処理回路へ送られます。回路で処理された電流は電流計に送られて指針を動かします。
抵抗の測定では測定対象の抵抗に切り替えつまみで切り替えられたスイッチ回路を通して処理回路へ送られます。回路で処理された電流は電流計に送られて指針を動かします。
目盛板の目盛の中から切り替えつまみの測定レンジに対応した目盛を選択し、電流計の指針が示している数値を読み取ります。この値に読み取り倍率を掛け合わせた値が読み取り結果になります。
ここでは学校用や研修用のキット教材もあり、自動車の測定に使える三和電気計器のTA55を例にとって使い方を説明します。図1に測定や操作に関係するTA55の各部の名称を示します。
図1 TA55前面の各部名称
図2にTA55の目盛板と表1のレンジとの対応を、図3に切り替えつまみとのレンジ表示パネルを示します。
図2 目盛板と表1のレンジとの対応
図3 切り替えつまみとレンジ表示
表1に使用レンジと読み取った値に掛け合わせる読み取り倍率を、表2に読み取り結果の例を示します。
表1 使用レンジと読み取り倍率
使用レンジ | 読み取り倍率 | 使用レンジ | 読み取り倍率 | ||
---|---|---|---|---|---|
(1) | Ω×1k | ×1k(1000) | (2) | DCA3 | ×0.01 |
Ω×100 | ×100 | DCA30 | ×0.1 | ||
Ω×10 | ×10 | (3) | DCV60 | ×1 | |
Ω×1 | ×1 | (4) | ACV120 | ×10 | |
(2) | DCV30 | ×0.1 | (5) | DCV16 | ×1 |
DCV3 | ×0.01 | (6) | DCA0.5 | ×1 | |
DCV0.3 | ×0.001 | (7) | PROBE(30A) | ×1 | |
ACV300 | ×1 | PROBE(300A) | ×10 | ||
ACV30 | ×0.1 | (8) | 12V | GOODまたはBAD |
表2 読み取り結果の例
ファンクション | レンジ | 目盛番号 | 読み取り方 | 読み取り結果 |
---|---|---|---|---|
Ω | ×100 | (1) | 26×100 | 2600Ω=2.6kΩ |
DCV | 30V | (2) | 130×0.1 | 13V |
ACV | 120V | (4) | 5.2×10 | 52V |
DCA | 0.5A | (6) | 0.215×1 | 0.215A |
レンジ切り替えつまみをOFF位置にし、図4に示すように-ドライバーでメータ0調整器をゆっくり回して指針が目盛板の0位置をしめすよう調整します。
図5にしめす手順でテストリードが導通状態にあるかを確認します。
- 切り替えつまみをΩレンジにします。
- テストリードの赤プラグを+端子に、黒プラグを-端子に差し込みます。
- 赤と黒のテストピンを接触させます。指針が振れ具合を確認します。振り切れれば導通、振れが不安定であれば断線気味を、指針が動かなければ断線を示します。断線や断線気味の時には良品のテストリードと交換してから測定してください。
- 図4 指針の0位置調整
- 図5 テストリードの導通チェック
- 各レンジの最大定格入力電圧を超えた入力信号を加えないこと。
- 測定中は他のレンジに切り替えないこと。
- 測定値の見当がつかない場合は、最大レンジで測定すること。
- 測定中はテストリードのつばよりテストピン側を持たないこと。
DC1.5V乾電池の測定では3Vレンジで測定します。
- (1)テストリードの赤プラグを+入力端子に、黒プラグを-入力端子に差し込みます。
- (2)レンジ切り換えつまみでDCVの余裕のあるレンジにします。
- (3)測定対象の-側に黒のテストピンを、赤のテストピンを+側にしっかり接触させます。
- (4)VA目盛の指針が示した値を読み取ります。
- (5)測定が終了したらテストピンを測定対象から取り外します。
AC100Vの測定では120Vレンジで測定します。
- (1)テストリードの赤プラグを+入力端子に、黒プラグを-入力端子に差し込みます。
- (2)レンジ切り替えつまみをACVの余裕のあるレンジにします。
- (3)測定対象に赤と黒のテストピンをしっかり接触させます。
- (4)VA目盛の指針が示した値を読み取ります。
- (5)測定が終了したらテストピンを測定対象から取り外します。
- 入力端子には外部よりの電圧を絶対に加えないこと。
- 必ず負荷を通して直列に接続すること。 ※下図参照
- 入力端子に最大定格電流を超える入力を加えないこと。
- (1)テストリードの赤プラグを+入力端子に、黒プラグを-入力端子に差し込みます。
- (2)切り替えつまみをDCAの余裕のあるレンジにします。
- (3)負荷と電源の並列接続の片側を切り離して直列にします。
- (4)赤テストピンを+側に黒テストピンを-側に接触させます。
- (5)VA目盛の指針が示した値を読み取ります。
- (6)測定が終了したらテストピンを測定対象から取り外します。
30A+専用入力端子にはヒューズなどの保護回路はなく、誤って電圧を印加しますとショート状態となりやけどなどの人身事故につながるおそれがあり大変危険です。 測定前に再確認して行ってください。また、測定は内部抵抗、リード線発熱のため5秒以内に行い、次の測定まで2分以上間隔をあけてください。
- (1)テストリードの赤プラグを+入力端子に、黒プラグを-入力端子に差し込みます。
- (2)切り替えつまみをDCAの30レンジにします。
- (3)負荷と電源の並列接続の片側を切り離して直列にします。
- (4)赤テストピンを+側に、黒テストピンを-側に接触させます。
- (5)300目盛の指針が示した値を読み取ります。
- (6)測定が終了したらテストピンを測定対象から取り外します。
入力端子には外部よりの電圧を絶対に加えないこと。必ず被測定物の電源を切ってから測定を行うこと。
- (1)テストリードの赤プラグを+入力端子に、黒プラグを-入力端子に差し込みます。
- (2)レンジ切り替えつまみを想定されるレンジにします。
- (3)赤と黒のテストピンを接触させて0Ω調整つまみをまわして指針をΩ目盛の0位置に合わせます。
- (4)測定対象の両端に赤と黒のテストピンをあてがいます。
- (5)Ω目盛の指針が示した値を読み取ります。
- (6)測定が終了したらテストピンを取り外します。
※注意:×1レンジで0Ω調整ができない場合には、電池が消耗していますので、新しい電池と交換してください。
入力端子には外部よりの電圧を絶対に加えないこと。必ず被測定物の電源を切ってから測定を行うこと。
- (1)テストリードの赤プラグを+入力端子に、黒プラグを-入力端子に差し込みます。
- (2)レンジ切り替えつまみを ()にします。
- (3)測定回路や導線チェック部分にテストピンを接触させます。
- (4)ブザーが鳴れば導通、鳴らなければ非導通を示します。
- (5)チェックが終了したらテストピンを取り外します。
※注意:×1レンジで0Ω調整ができない場合には、電池が消耗していますので、新しい電池と交換してください。
- 最大定格入力電圧を超えた入力信号を加えないこと。
- 測定中は他のレンジに切り替えないこと。
- 測定中はテストリードのつばよりテストピン側を持たないこと。
- (1)テストリードの赤プラグを+入力端子に、黒プラグを-入力端子に差し込みます。
- (2)レンジ切り替えつまみを ()にします。
- (3)バッテリーの-出力端子に黒のテストピンを、+出力端子に赤のテストピンを接触させます。
- (4)指針の指す範囲が ()目盛のGOODなら良、BADなら否となります
- (5)チェックが終了したらテストピンを取り外します。
アナログテスターでは電流計の巻き線抵抗や内部回路による内部抵抗があります。この内部抵抗は電圧測定レンジでは測定対象に並列に、電流回路では直列に接続されて測定対象となる回路や部品に影響を与えるので誤差の原因になります。
測定レンジ | 電圧測定 | 電流測定 |
接続形式 | 並列 | 直列 |
理想のインピーダンス | ∞ | 0 |
理想に近い回路 | OPアンプ、FET | 低抵抗な分流器 |
電圧測定時の内部抵抗の影響を低減し測定誤差を少なくするために入力回路にインピーダンスの高いFETやオペアンプを採用し、理想に近い高入力インピーダンスを実現している製品もあります。このような製品の入力インピーダンスはおおむね1MΩ以上になります。電流測定では各社独自の抵抗値の分流器を採用して測定誤差を小さくしています。測定する対象に対応した入力インピーダンスの値を選定の目安の一つにしてください。
『電気のおはなし』の目次
第1章 電気回路
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1-1回路とは漢字が示す通り、回って戻って来る路が回路です。回路を循環しているものが電気なら電気回路、電子なら電子回路になります。
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1-2回路の種類電気回路には大電流、大電力の発電系、送電系からの大工場、大型ショッピングモールなどの受電系、一般家庭の受電系、パソコン、スマホなどのプリント基板のパターンを流れる小電流回路、ICやLSI内部の微小電流まで扱う電流の大小により多くの種類があります。
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1-3交流回路とは交流波形をした電圧や電流が電源から負荷に流れているのが交流回路です。
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1-4直流回路とは直流電源を使用している回路や部品、機器、設備の内部には直流回路が形成されています。直流電源には直流発電機、電池、交流から直流に変換する電源アダプターなど多くの種類があります。
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1-5並列回路とは工場の電動機や照明等の負荷への配線、オフィスの複写機、パソコン等の負荷への配線、住宅内のエアコン、家電品等の負荷への配線など電力会社から受電した電気を負荷へ供給している配線回路のほとんどが並列回路を形成しています。
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1-6直列回路とはスマホ、ノートパソコンなどの携帯電子機器ケースの内部には充電できる二次電池のホルダーが収納されています。 中
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1-7分岐回路とは退避線のある駅に各駅停車の電車が近づくと本線から分岐された線路を通って目的のプラットホームへと向かい停車します。
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1-8遮断回路とは地震や火災、風水害が発生した時や保守点検、工事安全確保が必要な場合や目的に達した時に電路と切り離し動作を行う回路に遮断回路があります。
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1-9プリント配線板とは電子回路や電気回路の配線の一部を印刷して展開した板をプリント配線板とよんでいます。
第2章 電気の測定
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2-1電気回路測定の心得電気回路の測定に入る前に測定する周囲の電場環境や磁場環境など周囲環境が電気回路や電子回路にどのような影響を与えているのかを調べておきたいと思います。
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2-2電圧の測定電圧の測定器はメーターの針で測定値を示す指針型のアナログ計器とLEDや液晶の表示器に測定値を数字で示すデジタル計器とにわけられます。
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2-3電流の測定電圧の測定で紹介した回路計(マルチメータ)の電流測定機能と測定範囲は機種によって異なっています。
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2-4抵抗の測定抵抗測定というと、Ωレンジへ切り替えて測定するテスタ、マルチメータをイメージしてしまいがちです。
第3章 回路計
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3-1テスター(回路計)とはテスターは、機種により装備している機能が異なりますが電気回路、電子回路の電圧や電流、電子部品の抵抗、容量などが手軽に測定できる便利な測定器です。
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3-2アナログテスターの使い方アナログテスターの電圧や電流の測定では測定部位にテストリードのテストピンをあてがいます。テストピンで取り出された電圧や電流は、切り替えつまみ
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3-3デジタルテスターの使い方デジタルテスターでも電圧や電流の測定ではアナログテスターと同じく測定部位にテストリードのテストピンをあてがいます。テストピンで取り出された電圧や電流は、切り替えつまみで切り替えられたスイッチ回路を通してAD変換器を中心とするLSIと周辺回路へ送られます。
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3-4自動車用テスターとスキャンツール現在の自動車は電気回路や電子回路やマイコン、センサーにより電子制御されています。今後、自動運転化が進むにつれてこの電子制御化傾向はさらに加速していくものと思われます。
第4章 電気用品
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4-1電気回路と関係のある法律とマーク電気回路と関係がある国内と海外の安全に関する法律や安全マークに数回にわたって解説していきます。
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4-2JIS日本工業規格とは今回は、電気回路に関係している電気設備、電気用品、電気部品、電気材料や機械部品などの標準化を定めている日本工業規格(JIS:Japan Industrial Standards)(以下JIS)について調べていきましょう。
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4-3電波法と技適マークについて電波を公平かつ能率的な利用を確保することによって、公共の福祉を増進することを目的として定められたのが電波法です。多くの政令や省令に詳細が定められています。
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4-4人工知能(AI)とは準備中
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4-5CEマーク準備中
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4-6ULマーク準備中
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4-7CSAマーク準備中
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4-8FCCマーク準備中
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4-9VCCIマーク準備中
第5章 発電
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5-1発電の種類準備中
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5-2水力発電準備中
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5-3風力発電準備中
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5-4火力発電準備中
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5-5地熱発電準備中
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5-6バイオマス発電準備中
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5-7原子力発電準備中
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5-8内燃機関発電準備中