工具の通販モノタロウ 空調設備の基礎講座 地熱・地中熱を利用する
  

空調設備の基礎講座

私たちは、室内外の状況変化に応じて温度や湿度などを調節するために、暖房、冷房、換気などの「空調設備」を使用します。本連載では、空調設備の役割・目的から各種設備の特徴まで、快適に過ごすために知っておくべき基本的な事項を紹介していきます。
第5章 空調設備と省エネ

5-6 地熱・地中熱を利用する

「地熱」と「地中熱」はその意味を混同しがちなので、まず意味の違いを説明します。地熱とは地中深くに存在する火山近くの高温な熱利用のことです。例えば地熱発電は代表的な地熱利用例です。対して地中熱とはもっと身近で地表面に近いところの熱利用です。私たちの足元近くの熱利用なので比較的利用しやすいのが特徴です。

地熱発電

地熱発電とはマグマで熱せられた地下水から熱水と蒸気を汲み取ってタービンを回して発電する方法のことです。太陽光発電、風力発電、水力発電など、再生可能エネルギーによる発電の方法はいろいろありますが、地熱発電もその一つです。

例えば太陽光発電は太陽が出ていない夜の発電はできません。風力発電もその発電量は風まかせになってしましますが、地熱発電は昼夜を問わず、天候や時間帯に左右されずに安定した発電が期待できる発電方法といえます。温泉の枯渇の懸念、国有地の開発など、地熱を活かせない理由も様々あるようですが、日本は世界的に見ても豊富な地熱資源を保有する火山大国でもあるので、その利点を十分に生かしてもらいたいものではあります。

地中熱の利用例

鍾乳洞などの洞窟などに行った経験のある方ならわかりやすいと思います。地中の洞窟に入ると夏はひんやりと涼しく、冬は適度に暖かく感じます。地中は通年安定した温度を保っていてこのような地中の性質を「恒温性」といいます。この地中の恒温性を空調設備に利用できないかということで、いくつかのシステムが実用化されています。以下にその一例の概要を説明します。

クールピット

外気を建物の「クールピット」と呼ばれる地下空間に取り込んで、地中熱を利用して空気を夏はあらかじめ冷やし、冬はあらかじめ暖めて室内に届けるシステムを総じてクールピットといいます。空気が予冷、予暖されているので、冷暖房の負荷が軽減されるしくみになっています。

クールピット

クールチューブ

地中に「クールチューブ」と呼ばれる配管を埋め込んで外気を取り込みます。外気が配管を通る途中で地中熱と熱交換をして夏はあらかじめ冷やされ、冬はあらかじめ暖められた空気を室内に届けるシステムをクールチューブといいます。

クールチューブ

地中熱ヒートポンプ

地中熱をヒートポンプの技術で汲み上げるシステムを「地中熱ヒートポンプ」といいます。比較的小規模な地中熱ヒートポンプの概要としては、地中にU字形のパイプを埋設してパイプ内の循環液と地中で熱交換して地中熱を汲み上げるしくみになっています。

地中熱ヒートポンプ

執筆: イラストレーター・ライター 菊地至

『空調設備の基礎講座』の目次

第1章 空調設備を学ぶ前に

第2章 空調方式

第3章 熱源と主要機器

第4章 熱搬送設備

第5章 空調設備と省エネ

第6章 個別暖房と直接暖房

第7章 換気設備

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