電気のおはなし

私たちの生活から切り離せない存在、「電気」。 電気が循環する回路の種類や、電気の測定、電気用品、発電、電源など、 電気にまつわるあらゆる基本的な事項をご紹介していきます。
第2章 電気の測定

2-3 電流の測定

○電流測定用の計器

回路計(マルチメータ)

電圧の測定で紹介した回路計(マルチメータ)の電流測定機能と測定範囲は機種によって異なっています。測定する際には配線を切断する必要があります。切断した両端の間にテストリードを接触させます。

クランプメータ

クランプメータは、二つに分割された開閉のできる変流器の鉄心で電流の流れている電線を挟み込む(クランプする)ことにより交流電流を測定する計器です。

交流電流が流れる電線の周りに発生する磁力線を変流器の鉄心に巻かれたコイルがひろって電流に変換しています。

直流も測定できる機能の付いたクランプメータでは変流器にホール素子を組み込み、ホール素子に予め微小電流を流しておき、直流電流を測定しています。

クランプメータの測定のしくみにはクーロンの法則、フレミングの法則等が使われています。

  • クーロンの法則
  • 電気、磁気の極の強さと極が配置された距離の関係から決まる極間に発生する力の関係を示しているのがクーロンの法則です。
  • 電気にはプラスとマイナス、磁気にはNとSの極があります。同じ極間には反発しあう力が、異なる極間には引き合う力が発生します。
  • フレミングの法則
  • 発電する場合と電動する場合の電流、磁気、力の関係を両手の指を使って説明しているがフレミングの法則です。
  • 発電機では右手の中指が発電電流の流れる方向、人差し指が磁力線の方向、親指が加える力の方向を示しています。

図1 クランプメーター

図1 クランプメーター

○電流センサー

電流センサー(CTセンサー:Current Transformer)

CTの構成は同心円のトロイダルコア、同心円を貫通して電流の流れている電線、トロイダルコイルに巻き付けられたコイルより構成されています。コイルに誘導された電圧から電流値に変換されます。

図2 CTセンサー

図2 CTセンサー

○直流の電流測定例

デジタルテスタを使って電圧の測定で使用した懐中電灯のLEDに流れる電流を測定してみました。次の手順で測定を進めます。

  • テスタのレンジを直流電流測定のA位置に切り替えて測定体制に入ります。
  • 電流制限抵抗器からスイッチへ配線している電線を切断し、電流測定用の線を引き出します。
  • ワニ口クリップが両端についたコードを使ってデジタルテスタの赤と黒のテストリード棒と接続します。
  • 表示器に0.045表示されましたので45mAの直流電流が流れていると測定されました。

図3 直流の電流測定の様子

図3 直流の電流測定の様子

図4 直流電流測定回路

図4 直流電流測定回路

○交流の電流測定例

クランプメータを使ってオーブントースターの1000Wに切換えたときの電流を測定してみました。

  • クランプメータのレンジをAの下に~が付いている20A位置に切り替えて測定準備態勢に入ります。
  • タイマーをONして通電を開始した時には10.32が表示され10.32Aと交流電流が測定されました。
  • その後、電流値は徐々に降下し、60秒後には10.09Aで落ち着きました。

これはヒータが高温になるにしたがって抵抗値が上昇していき、しだいに安定していくこと示しています。

図5 ヒータに電流を流し始めた時の測定値(まだヒータが赤熱していない)

図5 ヒータに電流を流し始めた時の測定値(まだヒータが赤熱していない)

図6 ヒータに電流を流し始めて60秒経過後の測定値(ヒータが赤熱している)

図6 ヒータに電流を流し始めて60秒経過後の測定値(ヒータが赤熱している)

図7 交流電流測定回路

図7 交流電流測定回路

執筆:常深 信彦

『電気のおはなし』の目次

第1章 電気回路

第2章 電気の測定

第3章 回路計

第4章 電気用品

第5章 発電

第6章 電源装置

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