電気のおはなし
2-2 電圧の測定
○電圧測定用の計器
電圧の測定器はメーターの針で測定値を示す指針型のアナログ計器とLEDや液晶の表示器に測定値を数字で示すデジタル計器とにわけられます。
計測場所に携帯でき、レンジ切替スイッチを切り替えることにより直流電圧、直流電流、交流電圧、交流電流、抵抗、容量等の測定機能を有する計器にテスター(回路計)があり、マルチメーターともよばれています。
一方では直流電圧測定用、交流電流測定用などと測定対象が決まっている専用計器もあります。
制御盤とか監視盤などの盤面に取り付けられる測定計器はパネルメーターとよばれており、アナログ表示とデジタル表示の計器があります。数字の表示器には自己発光のLEDと液晶(LCD)があります。
表示器は時代とともに変遷してきているので映画やテレビの中でレトロな時代感覚を演出するためにニキシー管とよばれる放電管を表示器に使ったパネルメーターや時計が使われていることがあります。
電車や自動車のインパネに埋め込まれている計器には丸型のアナログ計器が好まれる傾向にあります。
図1 指圧式テスターとデジタルテスター
図2 指針式電圧計とデジタル表示電圧計(LCD表示とLED表示のパネルメーター)
図3 12V・自動車と電車・運転台の丸型指針式電圧計
○直流電圧の測定
デジタルテスターの直流電圧レンジを使ってLED懐中電灯を点灯させた状態の電気回路の各部の直流電圧を測定し、LEDを流れる電流と電池の内部抵抗を求めてみましょう。
LED懐中電灯の電源となる電池ボックス内部では、単三乾電池が3本直列に接続されています。
- 測定手順
- テスターのレンジをDCVに切り替えます。
- スイッチSWをONします。
- 赤(+)のテスター棒の先端を測定対象の+側に、黒(-)のテスター棒の先端を測定対象の-側の充電部に接触させます。(間違って+側と-側を入れ替えて接触させて測定したときには-が先頭に表示されます。)
- 表示された直流電圧値を読み取ります。
測定結果の利用
・LEDに流れている電流値を求める。
LEDに直列に電流を制限するための抵抗が入っています。この抵抗のカラーコードは順番に茶、黒、黒となっていますので10オームと読み取ることができます。
この抵抗Rの両端にテスター棒をあてて電圧Vrを測定します。スイッチをONさせてLEDを点灯させると電池から抵抗Rを通って順方向電流(If)が流れます。抵抗RとLEDは直列回路ですので両方に同じ値の電流が流れています。そこで測定した電圧Vrからオームの法則を使って電流値Ifを求めることができます。
この測定では、Vrがほぼ1.2Vで、Rが10ΩなのでIf=Vr/R=1.2/10=0.12となりますので、LEDを流れている電流はほぼ0.12A (120mA)と求めることができます。
・電池の内部抵抗を求める。
三個の電池は、直列接続されていますのでLEDと同じ値の電流0.12Aが流れています。
電池b1の内部抵抗r1は、r1=Vd1/If=0.018/0.12=0.15となり、ほぼ0.15Ωとなります。
電池b2の内部抵抗r2は、r2=Vd2/If=0.057/0.12=0.475となり、ほぼ0.48Ωとなります。
電池b3の内部抵抗r3は、r3=Vd3/If=0.28/0.12=2.333となり、ほぼ2.33Ωとなります。
電池残量が少なくなるにつれて電池の内部抵抗は高くなっていき、電池電圧も低下していきます。電池残量表示と警告のついている機器では、電池電圧が低下しすぎると電池残量を測定して警告をだす回路が動作できなくなってしまうので回路動作の限界電圧になる前に電池残量の警告を出すように設定されています。
図4 LED懐中電灯の回路図と測定電圧
スイッチ | 電池電圧 | R電圧 | LED電圧 | ||
---|---|---|---|---|---|
Vb1 | Vb2 | Vb3 | Vr | Vd | |
OFF | 1.622 | 1.352 | 1.081 | 0 | 0 |
ON | 1.606 | 1.295 | 0.801 | 0.41 | 3.3 |
電圧差 | 0.018 | 0.057 | 0.28 |
電流制限抵抗R | 10.1Ω |
---|---|
順方向電流If | 41mA |
お願い:電池交換をされるときには、残量が同じ新品の電池と入れ替えるようにしてください。
(この測定では、比較のために残量が異なる三本の電池を使用しています。)
- 図5 LEDランプ基板
- 図6 LED懐中電灯の内部構造と配線
○ 交流電圧の測定
電線は抵抗成分を有しているので長い配線に大電流を流すと配線の両端に電圧降下が発生します。 ここではデジタルテスターの交流電圧レンジを使ってオーブントースターのプラグをテーブルタップに差し込み、テーブルタップのプラグは壁面コンセントへ差し込み、通電した時の壁面コンセントの交流電圧とテーブルタップのコンセントの交流電圧を測定し、テーブルタップに使われているコードの抵抗を求めてみましょう。
- 測定手順
- テスターのレンジをACVに切り替えます。
- 赤のテスト棒の先端と黒のテスト棒の先端をプラグを空いている壁面コンセント口に差し込みます。オーブントースターのW切替スイッチの設定をしてからタイマーをONにしてヒーターに通電します。
- この状態で表示された壁面コンセント(交流電源側)の交流電圧値を読み取ります。
- つぎに同じように二本のテスト棒の先端をテーブルタップの空いているコンセント口に差し込みます。オーブントースターのW切替スイッチの設定をしてからタイマーをONにしてヒーターに通電します。
- この状態で表示されたテーブルタップコンセント(負荷側)の交流電圧値を読み取ります。
測定結果の利用
・テーブルタップコードの抵抗値を求める。
1000Wに設定して通電した時の壁面コンセントの交流電圧Vaは99.1V、タップコンセントの電圧Vbは98.2Vと測定されたので3m長のコード間の電圧差Vcは0.9Vとなります。交流電流値Iは、別途測定した結果から約10Aなのでコードの抵抗値Rbは、Rb=Vc/I=0.9÷10=0.09 となり、0.09Ωと求まります。
(負荷の交流電流値Iの測定については、2.電流の測定 で紹介します。)
・コード部分の損失電力を求める。
コード部分の損失Pは、P=I2・R の式で求まるので、P = 102×0.09=9 となり、コード部の損出電力は約9Wと求まります。
(負荷側にも1m長のコードがありますのでコード部分で合計すると10Wを超える損失が発生しています)
図7 交流電圧測定回路図と負荷(オーブントースター)の仕様
負荷(オーブントースター)の仕様
負荷の名称 | オーブントースター |
---|---|
コード長 | 1m |
負荷値切替 | 4段階 |
負荷 | 測定電圧 | ヒーター | ||
---|---|---|---|---|
壁面コンセント | タップコンセント | Va-Vb | ||
W | Va | Vb | 電圧差Vc | 抵抗値 |
OFF | 103.5 | 103.5 | 0 | ∞ |
300 | 102 | 101.7 | 0.3 | 32.5 |
400 | 101.6 | 101.2 | 0.4 | 24.8 |
700 | 100.4 | 99.8 | 0.6 | 14.3 |
1000 | 99.1 | 98.2 | 0.9 | 10.1 |
・交流電圧測定回路図と負荷(オーブントースター)の仕様
図8 タップコンセントの交流電圧測定状況(テスト棒の差し込み)
- 図9 テーブルタップと負荷の接続状況
- 図10 負荷の切替スイッチ(1000W)
・ご注意:AC100V前後の交流電圧を測定しますので感電しないよう十二分に注意して測定してください。
『電気のおはなし』の目次
第1章 電気回路
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1-1回路とは漢字が示す通り、回って戻って来る路が回路です。回路を循環しているものが電気なら電気回路、電子なら電子回路になります。
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1-2回路の種類電気回路には大電流、大電力の発電系、送電系からの大工場、大型ショッピングモールなどの受電系、一般家庭の受電系、パソコン、スマホなどのプリント基板のパターンを流れる小電流回路、ICやLSI内部の微小電流まで扱う電流の大小により多くの種類があります。
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1-3交流回路とは交流波形をした電圧や電流が電源から負荷に流れているのが交流回路です。
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1-4直流回路とは直流電源を使用している回路や部品、機器、設備の内部には直流回路が形成されています。直流電源には直流発電機、電池、交流から直流に変換する電源アダプターなど多くの種類があります。
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1-5並列回路とは工場の電動機や照明等の負荷への配線、オフィスの複写機、パソコン等の負荷への配線、住宅内のエアコン、家電品等の負荷への配線など電力会社から受電した電気を負荷へ供給している配線回路のほとんどが並列回路を形成しています。
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1-6直列回路とはスマホ、ノートパソコンなどの携帯電子機器ケースの内部には充電できる二次電池のホルダーが収納されています。 中
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1-7分岐回路とは退避線のある駅に各駅停車の電車が近づくと本線から分岐された線路を通って目的のプラットホームへと向かい停車します。
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1-8遮断回路とは地震や火災、風水害が発生した時や保守点検、工事安全確保が必要な場合や目的に達した時に電路と切り離し動作を行う回路に遮断回路があります。
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1-9プリント配線板とは電子回路や電気回路の配線の一部を印刷して展開した板をプリント配線板とよんでいます。
第2章 電気の測定
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2-1電気回路測定の心得電気回路の測定に入る前に測定する周囲の電場環境や磁場環境など周囲環境が電気回路や電子回路にどのような影響を与えているのかを調べておきたいと思います。
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2-2電圧の測定電圧の測定器はメーターの針で測定値を示す指針型のアナログ計器とLEDや液晶の表示器に測定値を数字で示すデジタル計器とにわけられます。
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2-3電流の測定電圧の測定で紹介した回路計(マルチメータ)の電流測定機能と測定範囲は機種によって異なっています。
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2-4抵抗の測定抵抗測定というと、Ωレンジへ切り替えて測定するテスタ、マルチメータをイメージしてしまいがちです。
第3章 回路計
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3-1テスター(回路計)とはテスターは、機種により装備している機能が異なりますが電気回路、電子回路の電圧や電流、電子部品の抵抗、容量などが手軽に測定できる便利な測定器です。
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3-2アナログテスターの使い方アナログテスターの電圧や電流の測定では測定部位にテストリードのテストピンをあてがいます。テストピンで取り出された電圧や電流は、切り替えつまみ
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3-3デジタルテスターの使い方デジタルテスターでも電圧や電流の測定ではアナログテスターと同じく測定部位にテストリードのテストピンをあてがいます。テストピンで取り出された電圧や電流は、切り替えつまみで切り替えられたスイッチ回路を通してAD変換器を中心とするLSIと周辺回路へ送られます。
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3-4自動車用テスターとスキャンツール現在の自動車は電気回路や電子回路やマイコン、センサーにより電子制御されています。今後、自動運転化が進むにつれてこの電子制御化傾向はさらに加速していくものと思われます。
第4章 電気用品
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4-1電気回路と関係のある法律とマーク電気回路と関係がある国内と海外の安全に関する法律や安全マークに数回にわたって解説していきます。
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4-2JIS日本工業規格とは今回は、電気回路に関係している電気設備、電気用品、電気部品、電気材料や機械部品などの標準化を定めている日本工業規格(JIS:Japan Industrial Standards)(以下JIS)について調べていきましょう。
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4-3電波法と技適マークについて電波を公平かつ能率的な利用を確保することによって、公共の福祉を増進することを目的として定められたのが電波法です。多くの政令や省令に詳細が定められています。
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4-4人工知能(AI)とは準備中
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4-5CEマーク準備中
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4-6ULマーク準備中
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4-7CSAマーク準備中
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4-8FCCマーク準備中
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4-9VCCIマーク準備中
第5章 発電
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5-1発電の種類準備中
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5-2水力発電準備中
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5-3風力発電準備中
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5-4火力発電準備中
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5-5地熱発電準備中
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5-6バイオマス発電準備中
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5-7原子力発電準備中
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5-8内燃機関発電準備中