電気のおはなし
3-1 テスター(回路計)とは
テスターは、機種により装備している機能が異なりますが電気回路、電子回路の電圧や電流、電子部品の抵抗、容量などが手軽に測定できる便利な測定器です。 加えて導通の有無、電池の寿命、ダイオードの良否などのチェックやトランジスタの電流増幅率等の測定等ができるなどマルチな機能を備えた機種がふえています。このようなテスターはマルチメータともよばれています。
つぎにテスターの例として測定する作業現場の環境を測定して常時表示できるデジタルマルチメータと針の動きで回路や電子部品の動作を測定できるアナログ(指針式)テスターを紹介します。
測定現場環境を測定できるデジタルテスター
内蔵センサーで測定した気温と湿度をレンジ位置がOFF以外では常時表示します。また、レンジをdBに切り替えると音圧を、Luxに切り替えると照度を、ケースの上面に内蔵しているセンサーで測定して表示します。
レンジをTEMPに切り替えるとCOMとTEMPのジャック周囲が赤く光って差し込むジャックを指示します。付属のK型熱電対センサー部を測定対象にテープで貼り付け、プラグを指示されたジャックに差し込みます 茶碗底面の温度を測定している写真をしめします。熱電対センサーは、貼り付け具合により誤差が発生しますので注意が必要です。
使用したテスターは多くの機能があるため、測定電圧が直流か交流かなど切替レンジに表示されている複数のメニューからセレクトボタンを押して選んで測定モードを設定する必要があります。
図1 現場の環境測定表示例:湿度、温度と音圧
図2 音、照度、湿度
図3 切替レンジとジャック
図4 熱電対による茶碗底部の温度測定例
電気回路や半導体、センサーは、温度や湿度などの影響を受けますので測定した時には同時に測定現場の環境を記録しておくと役に立ちます。たとえば後になって測定値に問題が発生したとき特に温度条件などに左右されやすい半導体素子が使われているときに条件を同じにして再現測定することが重要です。
針の動きで回路動作の変化を測定できるアナログ(指針式)テスター
デジタルテスターではデジタル化処理に時間を要するためと数字を読みやすくするために表示の切り替えを2、3回/秒にしています。一方、アナログテスターではメーターが回路と直結しているので回路や素子の動作変化がメーターの針の動きに迅速に反映されます。
また、使用した写真のテスターではメーターの右上にある赤のLEDが抵抗値が小さいときに点灯して回路の導通を知らせるチェッカーとして使用できます。
つぎに示す3つの回路でテスターを値の読みやすい適切なレンジに切り替えて、Cdsセル(光導電素子)の上面で遮光板を動かしたり手をかざしたりして照度を変化させ、針の動きを観察してみましょう。
- 図5 回路A
明るさ(照度)をCds素子で抵抗値に変換した値を抵抗レンジ10kΩで観察
- 図6 回路B
明るさ(照度)をCds素子で電圧値に変換した値を直流電圧レンジ12Vで観察
- 図7 回路C
明るさ(照度)をCds素子で電流値に変換した値を直流電流レンジ30mAで観察
*CdSは、明所(照度100Lux)で数kΩ、暗所で数MΩの抵抗値に変化する素子です。
図8 回路B 直流電圧レンジ12Vで測定中
図9 メーター目盛とレンジ切換えスイッチ
注意:これらのテスターでは使用した後にレンジをOFF位置に切換えて電池消耗を防止しましょう。
『電気のおはなし』の目次
第1章 電気回路
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1-1回路とは漢字が示す通り、回って戻って来る路が回路です。回路を循環しているものが電気なら電気回路、電子なら電子回路になります。
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1-2回路の種類電気回路には大電流、大電力の発電系、送電系からの大工場、大型ショッピングモールなどの受電系、一般家庭の受電系、パソコン、スマホなどのプリント基板のパターンを流れる小電流回路、ICやLSI内部の微小電流まで扱う電流の大小により多くの種類があります。
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1-3交流回路とは交流波形をした電圧や電流が電源から負荷に流れているのが交流回路です。
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1-4直流回路とは直流電源を使用している回路や部品、機器、設備の内部には直流回路が形成されています。直流電源には直流発電機、電池、交流から直流に変換する電源アダプターなど多くの種類があります。
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1-5並列回路とは工場の電動機や照明等の負荷への配線、オフィスの複写機、パソコン等の負荷への配線、住宅内のエアコン、家電品等の負荷への配線など電力会社から受電した電気を負荷へ供給している配線回路のほとんどが並列回路を形成しています。
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1-6直列回路とはスマホ、ノートパソコンなどの携帯電子機器ケースの内部には充電できる二次電池のホルダーが収納されています。 中
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1-7分岐回路とは退避線のある駅に各駅停車の電車が近づくと本線から分岐された線路を通って目的のプラットホームへと向かい停車します。
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1-8遮断回路とは地震や火災、風水害が発生した時や保守点検、工事安全確保が必要な場合や目的に達した時に電路と切り離し動作を行う回路に遮断回路があります。
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1-9プリント配線板とは電子回路や電気回路の配線の一部を印刷して展開した板をプリント配線板とよんでいます。
第2章 電気の測定
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2-1電気回路測定の心得電気回路の測定に入る前に測定する周囲の電場環境や磁場環境など周囲環境が電気回路や電子回路にどのような影響を与えているのかを調べておきたいと思います。
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2-2電圧の測定電圧の測定器はメーターの針で測定値を示す指針型のアナログ計器とLEDや液晶の表示器に測定値を数字で示すデジタル計器とにわけられます。
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2-3電流の測定電圧の測定で紹介した回路計(マルチメータ)の電流測定機能と測定範囲は機種によって異なっています。
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2-4抵抗の測定抵抗測定というと、Ωレンジへ切り替えて測定するテスタ、マルチメータをイメージしてしまいがちです。
第3章 回路計
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3-1テスター(回路計)とはテスターは、機種により装備している機能が異なりますが電気回路、電子回路の電圧や電流、電子部品の抵抗、容量などが手軽に測定できる便利な測定器です。
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3-2アナログテスターの使い方アナログテスターの電圧や電流の測定では測定部位にテストリードのテストピンをあてがいます。テストピンで取り出された電圧や電流は、切り替えつまみ
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3-3デジタルテスターの使い方デジタルテスターでも電圧や電流の測定ではアナログテスターと同じく測定部位にテストリードのテストピンをあてがいます。テストピンで取り出された電圧や電流は、切り替えつまみで切り替えられたスイッチ回路を通してAD変換器を中心とするLSIと周辺回路へ送られます。
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3-4自動車用テスターとスキャンツール現在の自動車は電気回路や電子回路やマイコン、センサーにより電子制御されています。今後、自動運転化が進むにつれてこの電子制御化傾向はさらに加速していくものと思われます。
第4章 電気用品
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4-1電気回路と関係のある法律とマーク電気回路と関係がある国内と海外の安全に関する法律や安全マークに数回にわたって解説していきます。
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4-2JIS日本工業規格とは今回は、電気回路に関係している電気設備、電気用品、電気部品、電気材料や機械部品などの標準化を定めている日本工業規格(JIS:Japan Industrial Standards)(以下JIS)について調べていきましょう。
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4-3電波法と技適マークについて電波を公平かつ能率的な利用を確保することによって、公共の福祉を増進することを目的として定められたのが電波法です。多くの政令や省令に詳細が定められています。
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4-4人工知能(AI)とは準備中
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4-5CEマーク準備中
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4-6ULマーク準備中
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4-7CSAマーク準備中
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4-8FCCマーク準備中
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4-9VCCIマーク準備中
第5章 発電
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5-1発電の種類準備中
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5-2水力発電準備中
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5-3風力発電準備中
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5-4火力発電準備中
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5-5地熱発電準備中
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5-6バイオマス発電準備中
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5-7原子力発電準備中
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5-8内燃機関発電準備中