電気のおはなし

私たちの生活から切り離せない存在、「電気」。 電気が循環する回路の種類や、電気の測定、電気用品、発電、電源など、 電気にまつわるあらゆる基本的な事項をご紹介していきます。
第1章 電気回路

1-7 分岐回路とは

退避線のある駅に各駅停車の電車が近づくと本線から分岐された線路を通って目的のプラットホームへと向かい停車します。駅を出発した電車は分岐線路から本線へと合流していきます。

河川では山や池、湖などから流れ出た水が小川となり、合流を繰り返して川となり、川が合流を繰り返して大河となって海へと流れ込んでいきます。

電気配線では電源から流れ出た電流は、幹線を流れ、随所で支線へと分岐し、負荷へ流れ込む分岐回路を形成しています。各負荷を通った電流は、合流して電源へと戻っていきます。

これからこのような分岐回路の形成に使われている配線器具や配線材料の例をみていきましょう。

図1 分岐レールの例(線路)

図1 分岐レールの例(線路)

オーディオ信号の分配ではピンジャックコネクタが、BNCコネクタを使った映像信号等の分配にはBNC分配コネクタが、アンテナからの高周波信号の分配にはアンテナ分配コネクタが使われています。

LAN信号の分配にはスイッチングハブが、USB信号の分配にはUSBハブが使われており、多くの情報機器類と分岐回路を形成しています。

  • 図2 RCA2分配コネクタ
  • 図2 RCA2分配コネクタ
  • 図3 BNC分配コネクタ
  • 図3 BNC分配コネクタ

  • 図4 アンテナ分配器(F型コネクタ用)
  • 図4 アンテナ分配器(F型コネクタ用)
  • 図5 8口スイッチングハブ(LAN用HUB)
  • 図5 8口スイッチングハブ(LAN用HUB)

  • 図6 4口USBハブ
  • 図6 4口USBハブ

EPSとは

ビルのフロアの片隅に最上階から下の階まで貫通している配線や配管用の区域があります。この区域をEPSと呼んでいます。 Eはエレクトロ、Pはパイプかパワー、Sはスペースの頭文字で、電気パイプスペースともよばれています。

当初、EPSの用途は電気ケーブルの配線がメインでしたが現在では通信ケーブル、光ケーブルなどの配線が主役になっています。また、マンションでは水回りの配管や計器類も含めてEPSにまとめられています。

EPSは、フロアの片隅の壁の中に隠蔽されていることが多く、探しにくいのですが注意しているとEPSと名札の付いた扉をみかけることもあります。扉をあけると整然と多くのケーブルやパイプが施工されています。

図7 EPS内部の例

図7 EPS内部の例

分岐幹線ケーブル

住宅やビルの電気配線も引き込み線から各部屋、オフィスへの分岐回路のかたまりといってもよいでしょう。この電気配線の工期を短縮し、品質を向上させるために導入されているのが分岐幹線ケーブルです。

分岐幹線ケーブルの先端に吊上治具を取り付け、最上階の天井に設けた滑車でEPSを通して引き上げます。 その後、分岐幹線ケーブルは各階のケーブルラック等に固定します。 各フロアのオフィス配線では分岐線ケーブルから積算電力量計へ配線され、エアコンや照明器具などの電気機器やコンセントやスイッチのような配線器具へと配線されて分岐回路を形成します。

設計図に沿って工場で製造されて現場に搬入される分岐線ケーブルは、施工期間の短縮と同時に施工品質も向上に寄与しています。

  • 図8 吊上げられた分岐幹線ケーブル
  • 図8 吊上げられた分岐幹線ケーブル
  • 図9 分岐幹線ケーブルの形状と各部名称
  • 図9 分岐幹線ケーブルの形状と各部名称

  • 図10 吊上治具
  • 図10 吊上治具

分岐回路の動向

大手住宅メーカのプレハブ住宅でも分岐幹線ケーブルを使って電気配線をすることが増えてきています。 また、太陽光発電システムにおいては、多数の太陽電池モジュール間の接続とその直流配線に分岐ケーブルが使われています。 このように分岐回路用の配線器具や配線材料は、用途の多様化に対応し、進化を続けています。

図11 太陽光発電システムにおける分岐ケーブルの使用例

図11 太陽光発電システムにおける分岐ケーブルの使用例

執筆:常深 信彦

『電気のおはなし』の目次

第1章 電気回路

第2章 電気の測定

第3章 回路計

第4章 電気用品

第5章 発電

第6章 電源装置

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