電気のおはなし
1-8 遮断回路とは
地震や火災、風水害が発生した時や保守点検、工事安全確保が必要な場合や目的に達した時に電路と切り離し動作を行う回路に遮断回路があります。 また、普段は電源と負荷は接続されたままの状態にあり、日常頻繁に開閉(入り切り、ON、OFF等)動作をおこなう電気製品や電気設備で使われている開閉回路とがあります。
今回はこの電路や電源と負荷の間を切り離す役目を担っている遮断回路についてみていきましょう。
送電、変電、受電の切断回路
変電所において変圧器の受電側の一次側送電線と送電側の二次側送電線の送電路を保守点検や工事の時に切り離すのが遮断回路です。高電圧を空気中で遮断すると大きなアークが発生し、事故が発生する恐れがあります。
そこで高圧を遮断してもアークを発生させない機能を有する真空遮断器(VCB)や絶縁ガス容器(GCB)が遮断回路に使用されています。
また、落雷した時に落雷事故から変電所を守るために変圧器の一次側と二次側に避雷器が設置されています。
図1 変電所の遮断回路の構成例
図2 ガス遮断器(GCB)の例
地震災害や交通事故などで電線が垂れ下がったり、切断したことによる火災発生や感電事故の発生を防ぐためや電気工事で安全を確保する必要があるときに送電を遮断するために一定の配電区域ごとに交流負荷開閉器が設置されています。 交流負荷開閉器には手動式と遠隔操作できる自動式があります。手動式の交流負荷開閉器では側面にある開閉レバーに取り付けられているロープを使って下から手動で開閉できるようになっています。
図3 手動式交流負荷開閉器の例
変電系統間のエアセクション
電気鉄道では変電所と変電所の間に変電系統間の差を調整するために各系統の架線を平行に架線した、停車が禁止されているエアセクションと呼ばれる遮断回路が設けられています。 この区域に入った電車は停止しないで走行を続けることになっており、運転手には標識で注意を喚起しています。 これは送電系統の架線間に大きな電圧差があったり、パンタグラフと架線の接触に不具合があったりすると火花が飛び散ったり、アークが発生したりして架線事故が発生し、送電が停止し、電車が動けなくなってしまうことがあるからです。
図4 エアセクションの構成
図4 エアセクション停車禁止標識の例
バイメタルスイッチを使った電気ケトル
バイメタルスイッチは、熱膨張率の異なる金属を張り合わせたバイメタルが温度差で変形し、元にもどる力を使って接点を動かしています。
電気ケトルの取手や底部のケースにはばね作用をもつバイメタルスイッチが内蔵されています。ケトル水槽の水温はパイプを通してバイメタル部へみちびかれています。 スイッチボタンを押してON状態にしておいたバイメタルスイッチの接点は、沸騰すると元のOFFの状態に戻し電源を遮断する遮断回路を形成しています。
この仕組みは一部の過電流時に遮断するブレーカーでも使われています。
図5 バイメタルスイッチの動作例
図6 電気ケトルの例
『電気のおはなし』の目次
第1章 電気回路
-
1-1回路とは漢字が示す通り、回って戻って来る路が回路です。回路を循環しているものが電気なら電気回路、電子なら電子回路になります。
-
1-2回路の種類電気回路には大電流、大電力の発電系、送電系からの大工場、大型ショッピングモールなどの受電系、一般家庭の受電系、パソコン、スマホなどのプリント基板のパターンを流れる小電流回路、ICやLSI内部の微小電流まで扱う電流の大小により多くの種類があります。
-
1-3交流回路とは交流波形をした電圧や電流が電源から負荷に流れているのが交流回路です。
-
1-4直流回路とは直流電源を使用している回路や部品、機器、設備の内部には直流回路が形成されています。直流電源には直流発電機、電池、交流から直流に変換する電源アダプターなど多くの種類があります。
-
1-5並列回路とは工場の電動機や照明等の負荷への配線、オフィスの複写機、パソコン等の負荷への配線、住宅内のエアコン、家電品等の負荷への配線など電力会社から受電した電気を負荷へ供給している配線回路のほとんどが並列回路を形成しています。
-
1-6直列回路とはスマホ、ノートパソコンなどの携帯電子機器ケースの内部には充電できる二次電池のホルダーが収納されています。 中
-
1-7分岐回路とは退避線のある駅に各駅停車の電車が近づくと本線から分岐された線路を通って目的のプラットホームへと向かい停車します。
-
1-8遮断回路とは地震や火災、風水害が発生した時や保守点検、工事安全確保が必要な場合や目的に達した時に電路と切り離し動作を行う回路に遮断回路があります。
-
1-9プリント配線板とは電子回路や電気回路の配線の一部を印刷して展開した板をプリント配線板とよんでいます。
第2章 電気の測定
-
2-1電気回路測定の心得電気回路の測定に入る前に測定する周囲の電場環境や磁場環境など周囲環境が電気回路や電子回路にどのような影響を与えているのかを調べておきたいと思います。
-
2-2電圧の測定電圧の測定器はメーターの針で測定値を示す指針型のアナログ計器とLEDや液晶の表示器に測定値を数字で示すデジタル計器とにわけられます。
-
2-3電流の測定電圧の測定で紹介した回路計(マルチメータ)の電流測定機能と測定範囲は機種によって異なっています。
-
2-4抵抗の測定抵抗測定というと、Ωレンジへ切り替えて測定するテスタ、マルチメータをイメージしてしまいがちです。
第3章 回路計
-
3-1テスター(回路計)とはテスターは、機種により装備している機能が異なりますが電気回路、電子回路の電圧や電流、電子部品の抵抗、容量などが手軽に測定できる便利な測定器です。
-
3-2アナログテスターの使い方アナログテスターの電圧や電流の測定では測定部位にテストリードのテストピンをあてがいます。テストピンで取り出された電圧や電流は、切り替えつまみ
-
3-3デジタルテスターの使い方デジタルテスターでも電圧や電流の測定ではアナログテスターと同じく測定部位にテストリードのテストピンをあてがいます。テストピンで取り出された電圧や電流は、切り替えつまみで切り替えられたスイッチ回路を通してAD変換器を中心とするLSIと周辺回路へ送られます。
-
3-4自動車用テスターとスキャンツール現在の自動車は電気回路や電子回路やマイコン、センサーにより電子制御されています。今後、自動運転化が進むにつれてこの電子制御化傾向はさらに加速していくものと思われます。
第4章 電気用品
-
4-1電気回路と関係のある法律とマーク電気回路と関係がある国内と海外の安全に関する法律や安全マークに数回にわたって解説していきます。
-
4-2JIS日本工業規格とは今回は、電気回路に関係している電気設備、電気用品、電気部品、電気材料や機械部品などの標準化を定めている日本工業規格(JIS:Japan Industrial Standards)(以下JIS)について調べていきましょう。
-
4-3電波法と技適マークについて電波を公平かつ能率的な利用を確保することによって、公共の福祉を増進することを目的として定められたのが電波法です。多くの政令や省令に詳細が定められています。
-
4-4人工知能(AI)とは準備中
-
4-5CEマーク準備中
-
4-6ULマーク準備中
-
4-7CSAマーク準備中
-
4-8FCCマーク準備中
-
4-9VCCIマーク準備中
第5章 発電
-
5-1発電の種類準備中
-
5-2水力発電準備中
-
5-3風力発電準備中
-
5-4火力発電準備中
-
5-5地熱発電準備中
-
5-6バイオマス発電準備中
-
5-7原子力発電準備中
-
5-8内燃機関発電準備中